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2003年9月のコラム

知事が市町村住民投票を請求?
 自民党の「地方自治に関する検討プロジェクトチーム」が、合併特例法失効後の市町村合併の進め方に関して「都道府県知事が、県の合併構想に基づき、関係市町村に住民投票の実施を請求できる仕組みの検討を行う」としている(「官速」03.9.1)。この構想について考察する。
  【考察の前提と論点】プロジェクトチームの念頭にあるのは、いわゆる昭和の大合併に際して採用された新市町村建設促進法第28条(昭31年6月30日 法律第164号)の手続きであろう。まずその制度を要約すると以下のようなものである。
 都道府県知事が未合併町村について町村合併の必要を認めるときは、新市町村建設促進審議会の意見を聞き内閣総理大臣に協議して町村合併に関する計画を定め、これを関係市町村に勧告しなければならない。勧告後90日以内に当該市町村から勧告に基づく町村合併の申請がない場合、都道府県知事は新市町村建設促進審議会の意見を聞いて、当該市町村に係る町村合併について投票を行う区域を示して、住民投票を請求することができる。住民投票が実施されて、有効投票の過半数の賛成があった場合、当該市町村から合併の申請があったものと見なすことができる。
 論点1 都道府県知事が市町村の議会決定事項である市町村の合併について住民投票を請求し、その結果、賛成多数の場合には知事への合併申請とみなすということは、関係市町村議会の議決を頭越しして団体意思を決する効果をもつ。このようなことが、いかなる法理のもとに可能であろうか。
 論点2 さきに紹介した新市町村建設促進法の時代は、いわゆる機関委任事務制度の時代であり、市町村の廃置分合(自治法7条)処分について「(処分の)性格は、議論の存するところではあるが、国の行う処分であり、都道府県知事も国の機関として行うと解する」(長野士郎『逐条地方自治法』)とされてきた。つまり市町村合併に係る都道府県知事は「国の機関」という理論構成であった。国の機関としての処分の前提として市町村の決定にかように介入できるかどうかは、それ自体として疑問であるが、2000年分権改革によって機関委任事務制度が廃止されたいま、かつてと同様に考えることができるのであろうか。
 論点3 分権改革後の解釈は「法定受託事務」とされているが、解説にも見られるとおり「市町村の廃置分合又は境界変更は関係市町村の申請に基づいて都道府県が行う。なお、この都道府県知事の事務は『法定受託事務』(第1号法定受託事務)とされている(法320@)」(松本英昭『新版逐条地方自治法』)のであり、あくまでも申請に基づいて発生する事務なのである。この申請は市町村自治事務にほかならず、それを代行するには自治法245条の8所定の代執行等の手続きを踏まなければならないのではないか(それも議事機関である議会の権限を代行できるとは思えない)。
 論点4 仮に自治法規定の一般ルールの問題ではなく、合併特例法または類似の新法という特別法の問題だとしても以下のような問題がある。知事からの住民投票を請求する意図は、おそらく昭和の大合併のときには、住民が望んでいるのに議会が抵抗して合併協議が進まないので、住民の意思を摂取すべく知事がその手続きを発動させようとしたのであろう。だが、現在は住民の意思を反映させるべく住民発議制度が導入されている。すなわち、現行の市町村合併特例法は50分の1以上の署名をもって合併協議会の設置を請求することができることになっており、さらにその請求を議会が否決した場合には住民投票を請求する道も開かれている。もし、知事の勧告にも関わらず市町村がそれに応じないときは、住民が合併協議会設置の発議を行うことが予定されている。それがないということは住民が合併協議会の設置を望んでいないことを意味するのであり、知事の請求は住民意思を否定することになるのではないか。
 地方制度調査会にも影響を与える議論であろうから、慎重な審議を望みたいものである。
つじやま たかのぶ・地方自治総合研究所主任研究員・研究理事)

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