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2004年3月のコラム

合併協議と広域行政機構

辻山 幸宣

 市町村合併が進むなか、広域行政機構はどのような対応を迫られているのだろうか。 1995年の市町村合併特例法からこんにちまで、合併・編入によって新たな区域で誕生したのは36市7町であり、これにともなって減少したのは97市町村である。これにより2004年3月1日現在、市町村数は3,135(688市、1,907町、540村)となった。ところで、市町村合併特例法が施行された1995年当時、全国に一部事務組合など広域行政機構はどれくらい存在していたであろうか。そしてそれがこの合併の進行のなかでどのように変化したであろうか。まず、その概況だけを見ておこう。自治省(当時)が2年に1度おこなってきた「地方公共団体の事務の共同処理の状況調」によると、1996年7月1日現在の一部事務組合数は2,818件であった。前年に制度化された広域連合は、この時点では大分県大野広域連合1つであった。これを直近の2002年7月1日現在で見てみよう。まず、一部事務組合は2,544件と274組合減少している。もっともこの時点までに広域連合が79件に達しており、一部事務組合の減少が合併によるものかどうかは詳細に分析しなければわからない。「状況調」の分析では、「前回調査時点(2000年:筆者)以降の一部事務組合の解散には、市町村合併にともなうものが10件あった」という。そして「今後、市町村合併の進展に伴い一部事務組合や広域連合の解散又は再編が行われる事例が増えていくものと思われる」と予測している。

 だが、と思う。自治省(現総務省)は、広域行政と市町村合併との関係をどう見ていたのか。広域連合を普及することに積極的でなかったのはなぜか。このことに、明確な答えを示さないまま 1999年通達に至っている。広域連合が議論された第129回国会(1994年)での政府委員の答弁では「市町村が合併を選択した場合には円滑にこれが進むように進めていきたい」(『改正地方制度資料第23部』64頁)と、市町村合併と広域連合の問題はパラレルに捉えられていた。たしかに広域連合が市町村合併を抑止する、あるいは市町村合併に代替するという言説には根拠がないかもしれない。しかし、現実に、たとえば長野県ではそうした論理で全県に広域連合を設置したのである(広域連合ヒアリング)。

 自治省の広域行政制度についての考え方やその変遷については後日を期することにして、ここでは市町村合併と広域行政機構の関係にどのような問題があるかを素描しておこう。3月1日に新市に移行した8市の合併協定書を見ると、一部事務組合等の扱いについては三つのタイプがある。ひとつは、一部事務組合の構成団体がそのまま合併市になったケース。この場合には、合併の日の前日に組合を解散して新市に引き継ぐ措置をとればよい。これに該当するのは、佐渡市に引き継がれた佐渡広域市町村圏事務組合、下呂市に引き継がれた益田広域連合のほか、壱岐市・対馬市のように一島合併の場合にはほとんどがこのタイプである。第2のタイプは、複数の事務組合等を解散して新市で引き継ぐものである。このタイプには、事務組合に加わっていなかった市町への引き継ぎという場合もある。たとえば、佐渡の消防は南佐渡消防事務組合・佐渡消防事務組合および両津市・相川町の消防本部でカバーされてきた。合併により二つの事務組合を解散し、二つの消防本部とともに佐渡市に引き継がれたケースがある。

 だが、これらはおおむね円満に移行したケースといえよう。問題は、事務組合等から一部の自治体が脱退する場合である。この例には事欠かないが、全県的な公務災害補償組合や退職手当組合などとは異なり、地域的な広域行政機構からの脱退・再加入は、分担金の問題など多くの深刻な課題を抱えている。とりわけ、事務組合等の構成団体の大半が合併によって脱退し、1自治体として再加入することになると、分担金の均等割部分が他の構成団体に大きくのしかかってくることになる。そればかりではない、群馬県富士見村のように、自立の道を事務組合問題で制約されるという不幸な事態も起きている。富士見村は、前橋広域市町村合併協議会から離脱したために消防を単独で実施せざるをえなくなり、前橋市との合併協議を再度申し入れることになったのである。このような事例は、これからも多発することが予測される。では、こうした事態に対して広域行政機構のサイドから経営上の意見を述べるなどの機会はあるのだろうか。市町村合併が言葉どおりに「市町村の協議」によって進められるとしても、その組み合わせ等により大きく影響をうける広域行政機構、とりわけ自立的な運営が強調された広域連合との調整が不可欠なのではないかと思う。さらにいうならば、市町村が自立の道を選択するに当たって、事務組合との関係維持のための何らかの措置を講じなければ、上で見てきたような事情が合併やむなしとさせる本末転倒が起きる可能性があるのである。

(つじやま たかのぶ・地方自治総合研究所主任研究員・研究理事)


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