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2005年9月のコラム

墓地問題のいま

 総選挙に関する報道・記事のなかに、朝日新聞と東大蒲島研究室との共同研究の分析があった(朝日・8 .31)。各党立候補者に対するアンケートをもとに、@日本型システム(終身雇用・公共事業による雇用確保・景気対策のための財政出動)の維持 ― 改革、A安全保障対策(防衛力強化・日米安保体制の強化・武力攻撃事態への先制攻撃・集団的自衛権)への積極 ― 穏健の軸で、各政党の位置を明らかにするというものである。この解説記事の中で蒲島氏は、経済成長の果実を、地方など経済発展から取り残される社会集団に分配することで、戦後の発展と平等を達成したとし、いま、「それは二つの意味で難しくなっている」としている。ひとつは、経済発展が停滞して果実を地方に配分できなくなったことだという。もうひとつは「都市と地方の連帯が薄れたこと」だと指摘する。かつて、都市には農村出身者が多く、盆正月には大挙して里帰りし、お墓参りもしたものだ。私もそのようにして、この30年間を過ごしてきた。だが、子どもたちは首都圏生まれで記憶の中にしか田舎の風景はない。母が亡くなれば私の里帰りも途絶えるだろう。

2000年6月の総選挙が「1区現象」といわれたことは記憶に新しい。県都である各県第1区で自民党が大敗を喫した現象のことである。都市部の果実(税)を地方へ分配し続けることへの批判が背景にあると分析された。おもえば、近年の地方交付税交付金の大幅削減に、国民的批判の大合唱が起きなかったことも根はひとつかもしれない。

 今年の夏もふる里の墓に参る機会があった。いわば家族の行事のようなものである。小高い丘に作られた墓地(いわゆる「村墓地」というか共有地)に、区画ともいえない状態で墓が建てられているのだが、年々この墓が荒れていくことに気づいた。参る人がいない墓が増えているのだという。蒲島氏の指摘する都市との連帯の薄れがこのような形で顕れている。

 おもえばこの問題は、かつて私も参加した千葉県地方自治研究センターの共同研究「自治体における墓地問題と墓地行政」( 1988年)で、おぼろげながら気づいていたことだった。研究の主目的は、首都圏の慢性的な墓地不足に行政がどのように対処しているのか、先の見通しはどうかということであった。千葉市における公営墓地の利用者分析を行った際、墓地利用者の40.3%が「改葬」すなわち、いずれかの地に埋葬してあったものが祭祀主の移動により市営墓地に移されてきたものであることがわかった。そして、これからの課題として多様な方法で対処することを提言した。もっとも当時考えられていた多様さは共同埋葬、散骨、永代管理の見直し、壁型墓地、霊堂やマンション型墓地、公園化くらいであった。いまは、散骨だけとっても陸地・舟から海・空から海・宇宙葬など多様である。樹木葬(埋葬した場所に樹木を植える)やインターネット葬(インターネット上に墓を構築してネットで墓参したりする)なども登場している。

 しかし、首都圏では依然として墓地不足が続いており、今後ますます深刻化することが確実視されている。たとえば都営霊園の 2003年度公募状況をみると、8カ所の霊園で募集数463区画に対し、応募者は1万132人、平均倍率21.8であった。これには、芝生墓地も含まれており、一般の埋蔵墓地のみでみると最大倍率61.6というところもあった。毎年8万人が死亡する情勢に、行政はどのような対策を講じたらよいか、ほとんど「暗中無策」といった状態が続いている。個々人により墓に対する考え方の違いはあろうが、「安心」、「終の棲家」をキーワードに地域づくりを進める自治体にとっても、無関心ではいられない問題であるはずだ。

つじやま たかのぶ・地方自治総合研究所主任研究員・研究理事 )


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