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2005年12月のコラム

横浜市における入札改革-建設業協会の中間報告-

武藤 博己

 

 横浜市は、予定価格 2,500万円以上の工事を対象とした条件付一般競争入札の導入、予定価格・最低制限価格等の事前公表、低入札価格調査制度の適用範囲の拡大などの入札改革を2004年度から実施した。その結果、2004年度の横浜市財政局所管の競争入札全体(2,643件)の平均落札率は88.9%で、2003年の94.9%より6ポイント下回わり、また条件付一般競争入札では82.6%であった。

 条件付一般競争入札において低入札価格となったのが 228件あったが、横浜建設業協会は会員企業が受注し、2005年6月時点で完成している工事56件(46社)を調査対象としてアンケートを行ったという(『平成16年度の条件付一般競争入札における低入札工事実態調査中間報告書』2005年9月22日)。36件の回答があったが、そのおもな結果は次の通りである。

● 36件の工事の平均落札率は69.7%であった。

● 低価格で応札した理由としては、「職員・作業員に空きがあった」が 23件、「工事の実績として受注したかった」が18件、「売上げ及び完工高を確保するため」が17件であった。

● 応札前の採算性の検討については、「実行予算を組んで検討した」が 28件であったが、「採算性は度外視した」ものも3件あった。

● 工事の決算について、赤字となったのは 24件であり、黒字となったのはわずか2件であり、残りの10件はトントンであった。

● 赤字原因としては、「材料費、外注費が抑えられなかった」など見込み通りの施工ができなかったことや「工期の変更で工事費がかさんだ」など設計変更による原因があげられていた。

● 工事の受注について、「良かった」と思っているのが 10件、「悪かった」も同じく10件、「どちらとも言えない」が16件であった。すなわち、7割以上が受注したことを評価していないことになる。

● 入札・契約制度に対する要望については、「低入札価格調査制度の失格基準の引き上げ」が 16件、「調査基準価格の引き上げ」が15件であった。また、「予定価格の事前公表の廃止」「最低制限価格の引き上げ」の要望がともに14件あった。

 このような結果から、横浜市の入札改革は落札率からみると、成功しているようであるが、建設業者からみると、結果として赤字を強いられ、7割以上が受注して良かったとは思っていない。また、予定価格・最低制限価格が公表され、過当競争が強いられているので、事前公表の廃止が求められているのであろう。

 この結果で一番の問題と感じるのは、わずかではあるが赤字覚悟で引き受けた業者があったことに対して、また結果として赤字になるような契約に対して、低入札価格制度が機能していない点である。建設業法には、「注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない」(第 19条の3)と規定されており、「地位を不当に利用して」いるわけではないとしても、役所が赤字受注を促進するような結果になっていることは改善の必要があるのではないか。

 横浜市は日本最大の都市であり、入札件数も多く調達金額も大きい。業者にとっては、入札改革による直接的な影響が大きく、その動向には無関心ではいられない。日本経済新聞神奈川版には「横浜の印刷 90社、行政へ提案団体 ― 電子入札にらみ共同歩調」という記事が掲載された(2005/10/18)。「刷新YOKOHAMA」という団体を結成して、市に対して仕様書づくりや不当なダンピングを防ぐための最低制限価格制の提案などを行いたいとのことだ。他の分野でもこのような活動が広がるかもしれない。しばらくは日本最大の都市の入札改革を注目する必要がある。

 

(むとう ひろみ・法政大学教授 )


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