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2006年11月のコラム

なぜいま二度目の分権改革か

辻山 幸宣

 

 10月27日、政府は地方分権改革推進法(案)を国会に提出した。内容は約10年前の地方分権推進法とほぼ同じで、地方分権改革推進委員会を設置し、3年間の審議を経て政府が地方分権改革推進計画を作成し閣議決定することとしている。委員会は「優れた識見を有する」7名の委員で構成され、内閣府に置かれる。

 ところで、この時期になぜ二度目の分権改革を行うというのだろうか。先の第一次分権改革が実施に移されてからわずか6年余、しかも、自治体は合併のただ中にあって、都道府県も市町村も腰を落ち着けた分権型社会の創造への取り組みもままならない状況にある。いってみればこの5年間、自治体はどこも分権どころではなかったのである。だから、先の分権改革で不十分だったのはどの点で、未着手の分野は何かなどの検討は少しも進んでいない。改革を必要とする材料もないのに、審議のための委員会だけをつくるというのだろうか。第2期の地方分権改革が必要だと声を上げてきた二つの意見書、「新地方分権構想検討委員会中間報告」(地方六団体)および「地方分権21世紀ビジョン懇談会報告書」(総務大臣の諮問機関)から、いまなぜ地方分権改革なのかを読み取ってみよう。

 まず地方六団体の検討委員会だが、冒頭に「『未完の改革』をもう一度動かすために」と述べている。ようするに先の分権改革では「権限と財源を頑なに守ろうとする中央省庁の壁」の前に、「地方の自由度は高まらなかった」という。初めて設置された「『国と地方の協議の場』も、十分に機能したとはいえない」。そして、最も深刻なことは、「地方側が努力をしたにもかかわらず、この改革が多くの人々の圧倒的な共感を呼んで進められたとは言い切れない」ことだという。官僚の壁や、協議の場の未熟さが分権型システムへの転換を阻んでいるとの認識は的はずれではないだろう。だとするならば、その壁を突破していく戦略が示されなければなるまい。さらに、国民の圧倒的な共感を得られなかったのはなぜかを考えてみる必要があるだろう。自治体はどれほど分権に取り組んできたといえるだろうか。何度も言うように、市町村合併、集中改革プラン策定、指定管理者制度への切換、不誠実な市場が生んだ事件への対処、頻発する災害への対応に追われ、分権型システムへの試みどころではなかったのである。しかも、自治体をこのような状況に追いやっているのは、分権の精神に反する国からの指示(奨励)であるといってよい。

 つぎに、21世紀ビジョン懇の報告書を見てみよう。冒頭に「問題意識 ― なぜいま分権か」が置かれている。だが、驚くなかれ、先の分権改革にはひと言も触れられてはいない。「我が国に求められていることは、経済社会システムの各分野において持続可能性を確保するための改革を断行し、人口減少下にあっても質の高い生活を実現すること、そして諸外国に優れた解決モデルを提示することである」とし、それには「『分権改革』によって解決を図ることが、これからの日本の重要な柱となろう」と述べているのみである。あたかも先の分権改革はなかったような書きぶりである。

 なぜいま、二度目の分権改革が必要なのか。この答えは先の分権改革で成し得たことと成し得なかったことを詳細に検証することからしか見つからないのだと思う。

(つじやま たかのぶ・地方自治総合研究所所長 )


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