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2007年7月のコラム

ワーク・ライフ・バランスと地方自治

 いま「働き方」をめぐる議論が活発だ。育児や介護などの家庭生活と仕事を両立できる職場環境づくりに向けて「仕事と生活のバランス」を考えようというものだ。その背景にはさまざまな事情が横たわっている。非正規社員の増加に追い上げられるような正規社員の働き過ぎ問題、少子化現象への対策、企業力アップを企図した働き方の見直しによる社員の能力向上、などなど。

 そのような動きの一つとして経済財政諮問会議の「労働市場改革専門調査会」の第1次報告「働き方を変える、日本を変える ― <ワークライフバランス憲章>の策定 ― 」(2007年4月)がある。そこでは、働き方をめぐる環境変化を、(1)企業をめぐる変化と(2)働き手をめぐる変化に分けて整理している。すなわち企業をめぐる変化としては、@グローバル化に伴う国際競争圧力の高まり、AIT分野での技術革新の急速な進展、B成長減速下の不確実性を、働き手をめぐる変化としては、@生産年齢人口の減少、A労働力人口の高齢化、B女性就業の拡大、C外国人労働者の増加を掲げている。そうした上で、生涯を通じて多様な働き方が選択可能になることを達成するため「ワークライフバランス憲章」の策定を目指すとしている。

 このような「働き方の自由選択」制がときとして過重労働を強いることになる危険性は、ホワイトカラー・エグゼンプションの提案にも見て取ることができるが、「男性は会社に出稼ぎにゆき、女性は家庭で家事育児に専念するという典型的な男性稼ぎ手モデル」からの脱出口の一つを労働時間規制に設定することは可能であろう。その意味で、先述の第1次報告は、休日労働の許されない「絶対休日」の提案など「いくつもの評価すべき点を有している」(濱口桂一郎「労働時間短縮とワーク・ライフ・バランス」『ESP』2007.6)とされる。

 また、内閣府男女共同参画会議の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」の中間報告「『ワーク・ライフ・バランス』推進の基本的方向 ― 多様性を重視し仕事と生活が好環境を生む社会に向けて ― 」(2007年5月)が公表されている。ここではワーク・ライフ・バランスを「老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態」と定義して、仕事以外のさまざまな活動の例として以下のようなものを掲げている。

   ● 家事、子育て、介護、家族との団らん等の家庭生活

   ● PTA、町内会等の地域活動

   ● NPO、ボランティア活動等の社会貢献活動

   ● 自己啓発、生涯学習、趣味、友人・知人との交流

   ● 健康づくり、休養    等

 長らく地方自治を論ずる分野でも、朝働きに出たら深夜まで帰宅しない勤労者を「定時制市民」としてあて(・・)にせず、「全日制市民」による「自治」が主流を占めていたと思われる。いま、団塊世代が退職して「パートタイム市民」から「全日制市民」へと身の置き所を変え、地域での貢献が期待されるという議論も存在する。だが、やはり子育ての現役世代である勤労者市民が地域の政策決定や市民活動などに参加していける条件が必要だ。とりわけ通勤時間の長い都市部において、地方自治の舞台にその姿をみることのできなかった現役勤労者市民の登場は、新たな自治の世界の幕を開ける可能性をもっている。

 施行が近づいている国の裁判員制度や、住民台帳からサンプリングで選ばれた委員たちで熟議による合意形成を試みる自治体の動きは、ワーク・ライフ・バランス問題と確実につながっている。

つじやま たかのぶ・(財)地方自治総合研究所所長)

 

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