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2008年8月のコラム

政府の仕事−「5つの安心プラン」−

 7月29日、政府の社会保障「5つの安心プラン」が公表された。5つのプランは以下の通り。

@ 高齢者が活力を持って、安心して暮らせる社会

A 健康に心配があれば、誰もが医療を受けられる社会

B 未来を担う「子どもたち」を守り育てる社会

C 派遣やパートなどで働く者が将来に希望を持てる社会

D 厚生労働行政に対する信頼の回復

 この5大項目に154の具体的な施策が貼り付けられている。たとえば「希望者全員65歳以上まで継続雇用する仕組みや柔軟な勤務時間の設定に係る支援」(@関連)、「夜間・休日の救急医療を担う医師の手当などへの財政的支援の創設」(A関連)などである。しかも、「緊急対策」と銘打っているだけあって、工程表でみるかぎり平成21年度以降にかかる施策はわずかに7項目で、あとはすべて本年末の概算要求に盛り込むか、あるいは今年度中に行うものばかりである。じつに88項目が概算要求(重点化枠)に盛り込まれる。

 ここ数日の報道は、「財源の当てはあるのか」、「“検討”はするけれど実現は難しいという官庁用語に終わるのではないか」、「迫りくる総選挙対策のPRにすぎない」、「内閣改造に弾みをつけたい福田首相の意図に、舛添厚労相が乗った」などまことに喧しいものがあるが、肝心のプランの内容について論じられたものは少ない。だが、「65歳以上の継続雇用」や「在職老齢年金」「最低保障年金」「子ども交付金」など、懸案になっていた事項が含まれており、検討状況をしっかり監視していくことが必要だ。

 たとえば「在職老齢年金」(年金受給者が働いて賃金を得ると、年金受給額がカットされる制度)の見直しは重要だが、現在2兆円といわれるカット分の穴埋めはどうするのか(ある試算によると保険料1%ほどの値上げが必要とのこと)など課題は多い。また、「最低保障年金」にしても現在の保険料方式で無年金者にも最低保障するには、それなりの財源も必要だし、また長年保険料を払い続けて受給している人とのバランスをどう説得するかなど難しい問題に直面するだろう。

 視線を換えて考えてみれば、これらのプランは取り立てて喧伝されるべきものでもなく、また、「緊急対策」として取り組まれるべきものでもない。これらはすべて本来的な「政府の仕事」にほかならない。中学生が使う「公民科」の教科書を開いてみると「政府の仕事と財政」というくだりにこうある。「わたしたちが安心して文化的な生活を送るためには、警察・消防・教育・科学振興・保健衛生などの公共的なサービスが必要です。さらにわたしたちは、生活に困っている人を手助けし、高齢者も安心してくらせる社会を実現したいと思っています。こうした施設やサービス・しくみの提供は、個人や企業の力だけでは実現できないため、政府の仕事となります」。

 この5つのプランに掲げられた項目を再確認しておこう。5番目の「厚労行政の信頼回復」はむしろ「年金問題」の挽回といったほうがよく、あとの4つは「高齢者対策」「医療体制の強化」「子育て支援」「労働のあり方」という、この国の現在と将来を左右する政策課題であり、それらは政府の存在理由ともいえる内容をもっている。だから「いまさら」といって、このプランを揶揄するわけにはいかない。これらが達成されていない現実がある以上、それを確実にそして速く実現できる政府を私たちは選ぶ必要がある。しかも、ひと言付け加えておくと、このプランの実現は中央政府の努力だけでは決して成就しない。わずか4カ所にしか自治体との関係に言及していないが、どの項目も、自治体行政抜きには実現しないことが一目瞭然である。したがって、この「5つの安心プラン」を確実に実現する政権を選択するとともに、それを可能にするには「地方分権」が必要だと認識できる政府をつくることが必要だ。

つじやま たかのぶ・(財)地方自治総合研究所所長)

 

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