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2009年11月のコラム

分権の手法を転換しよう

 新政権が発足して2ヶ月、この政権に対する期待と不安が高まっている。新聞、テレビ、雑誌、さらにはネット上でも連日の情報発信が行われており、関心も高まっている。今後の政権運営についてはまだ議論の途上のものも多い。そのような段階であれこれ言うことは差し控えるべきだとは思うのだが、決め方についての疑問があるので、この際、私見を述べることにする。

  行政刷新会議の陣容問題で一悶着があったが、その取り組む課題については徐々に固まりつつあるようだ。行政刷新会議は「全ての予算や制度の精査を行い、無駄や不正を排除する」ことを使命として設置された。また、「官・民、中央・地方の役割分担の見直し、整理を行う」としている(民主党マニフェスト)。そして10月6日、シンクタンク「構想日本」代表の加藤秀樹氏を事務局長に決定した。加藤氏は、国や自治体で「事業仕分け」を実践してきたことでも知られる。同会議は「1年間の調査で国の事業を(1)不要(2)民間が行うのが適当(3)地方自治体が実施可能(4)民間委託するのが適当(5)国が直接行うことが必要 ― に分類。その上で、刷新計画に沿って行政の無駄遣い根絶と地方分権を進める」(共同10.6)という。まさに「事業仕分け」だ。

  民主党は、小沢幹事長の年来の主張である「300市」一層制構想を当面棚上げしているが、一方で都道府県の行方にも明確な方針をもたず「道州制」導入へも理解を示すなど混乱の中にある。ただ基礎的自治体重視の点では一貫している。行政刷新会議が全ての事務事業を整理し、「基礎的自治体が対応可能な事務事業の権限と財源を大幅に地方に移譲する」(マニフェスト)と、国と基礎的自治体との間の事務の再配分を思い描いているのもそのためである。それはさておくことにしても、国と地方の事務分担議論をここで述べられているような方法で推進することは疑問である。

  たしかに、戦後改革時から一貫して地方分権の主要課題は「行政事務再配分」であった。1950年の「行政事務再配分に関する勧告」(神戸勧告)はあまりにも有名だが、そこでは、シャウプ三原則(@行政責任明確化の原則、A能率の原則、B市町村優先の原則)を一般指針として、事務配分の基準をつぎのように措定した。すなわち「その事務の性質上当然国の処理すべき、国の存立のために直接必要な事務を除き、地方公共団体の区域内の事務は、できる限り地方公共団体の事務とし、国は、地方公共団体においては有効に処理できない事務だけを行うこととすべきである」と。さらに、府県と市町村の間についても言及し、原則、市町村の事務とするが、@市町村の区域を越えて処理しなければならない事務、A市町村で処理することが著しく非能率又は著しく不適当である事務についてのみ府県の事務とするとしている。このような事務区分の基準を設定した上で各般の事務について検討を加え、配分案を勧告している。この手法は後の第9次地方制度調査会答申にも引き継がれ、地方分権の手法の中軸を占めるに至っている。これを要するに、中央で事務を切り分け、その処理責任主体の割り振りも中央で行う方式である。

  これに対して地方分権推進委員会は「事務権限の移譲」ではなく「関与の縮小・廃止」を基本戦略とした(西尾勝『地方分権改革の道筋 ― 自由度の拡大と所掌事務の拡大 ― 』公人の友社、2007年)。それはすでに多くの事務が地方公共団体において処理されている現実があり、改めて地方公共団体の所掌する事務を増やすことよりも、事務執行に地方の裁量が許されない「機関委任事務制度」の廃止によって「自由度の拡大」をこそ実現すべきとしたからであった。行政事務再配分に関しては都道府県と市町村の間に設けられた「事務処理特例制度」がその見識を示していた。すなわち、何を都道府県の事務として残し、何を市町村事務に移譲するかを全国一律に決定するのではなく、都道府県ごとに市町村と協議したうえで決めていくという方式である。

  地方分権改革がめざした「分権型社会」のイメージは「地域のことは地域で決める」という自己決定原則として語られる。私もこの言葉をかなり多用していた方に属する。だが、あるときふと疑問にぶつかった。「では、何が地域のことであるかを決めるのは誰か」ということであった。地域のこととして配分された事項について自己決定することを「地域のことは地域で決める」と言ってきたのではないか。「これは地域のことです」という決定を地域で行うこと、ここにこそ自己決定の世界があるのではないか。いま、行政刷新会議が行おうとしている「事業仕分け」で「地方自治体が実施可能」とされた事務は、都道府県あるいは市町村の事務として追加配分されるのだろうか。実施可能だが自己決定にはそぐわない事務(たとえば先の定額給付金支給事務、これから予定されている子ども手当支給事務など)もある。また、いまの自治体の状況(職員数・財政など)に照らして「とても引き受けられない」のに、国によって一方的に「実施可能」と判断される問題もある。この手法への疑問は、結局、下降型の事務処理体制を続けることになるということである。

  国が処理する理由のない事務はいったん市町村の事務として、都道府県との話し合いで都道府県と市町村の分担を決める(都道府県ごとに異なってよい)、都道府県の事務について国との間で話し合って分担を決める(国と地方の協議の場がふさわしい)。こうした「補完型」の組み立てこそが分権化の手法として求められているのではないか。

つじやま たかのぶ (財)地方自治総合研究所所長)

 

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