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2010年1月のコラム

日本初の公契約条例

 千葉県野田市議会は2009年9月29日、日本で初めての「公契約条例」を全会一致で可決した。公契約条例とは、自治体が財・サービスを購入する際に締結する契約に関して、自治体自らに対して規制する条例であると同時に、契約の相手方に対する規制でもある。

 野田市は千葉県の北西部に位置し、醤油生産で知られている人口16万人弱の中規模都市である。なぜ野田市は全国初という栄誉を勝ち取ることができたのであろうか。これまでの経緯を見る限りでは、市長のリーダーシップが大きいように感じる。根本崇市長は建設省の出身だが、市長になって5期17年目であり、議会との関係や契約担当部局に対する指導など、豊富な経験を有する市長である。2009年11月24日の地方自治総合研究所等主催のシンポジウムでも、市長は「グレーゾーンならば、やってしまった方が勝ち」と述べられたが、この意味は、グレーゾーンであれば、新たな法規範をつくってしまうのがよいということであり、豊富な政治・行政経験をもつからこそできた政治判断である。

 今回の野田市の公契約条例では、契約の相手方に対する規制として、「受注者は、法令等を遵守することはもとより、公契約を受注した責任を自覚し、公契約に係る業務に従事する者が誇りを持って良質な業務を実施することができるよう、労働者の更なる福祉の向上に努めなければならない」(3条)とされ、具体的には、「市長が別に定める賃金……の最低額以上の賃金を支払わなければならない」(6条)としている。その他、適用労働者への周知義務(第7条)であるとか、最低額以上の賃金が支払われなかった場合の受注者等(受注者、下請負者、派遣業者)の連帯責任(8条)などが規定されている。

 こうしてみると、受注者に対する規制が目立つが、野田市に対する規制として、そもそもこの条例を実施するという義務が負わされたことになる。日本初の条例であることから、難しい点がいくつもある。その1つが、最低賃金を具体的にいくらにするのか、という問題である。地域別最低賃金よりは高くするとしても、地域にとって望ましい最低賃金はいくらなのか。この答えとして、11月17日に規則を制定して、公共工事賃金の場合は、二省単価(農林水産省と国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価)の千葉県設定単価の8割相当額とされ、業務委託賃金の場合は、市職員の用務員の初任給(18歳)の相当額(135,100円)をベースにして計算することとされた。後者の場合、時給829円となり、千葉県の最低賃金よりも101円高い。民主党のマニフェストでは、「全ての労働者に適用される『全国最低賃金』を設定(800円を想定)する」、「最低賃金の全国平均1,000円を目指す」としていることから考えると低いように感じるが、現在の制度よりも高い。だが、現実に公共工事で支払われる賃金と比べてどうか。そのためには、地域の賃金水準を調査しなければならない。公契約条例のモデルであるILO94号条約は、地域の賃金水準を引き下げないという考え方であるため、そうした調査が不可欠となる。

 また、上に述べた契約の相手方への義務づけは、野田市にとっては履行させる義務づけとなる。そのため、受注者等に対して必要な報告を求め、立入検査し、関係者に質問する(9条)ことが必要であり、違反が確認されれば、是正措置を講ずることを命じ(10条)、命令に従わない場合等には契約を解除し(11条)、それを公表し(12条)、市に損害が生じた場合には賠償を請求しなければならない(13条)。

  このようにみてくると、市の責任がこれまでの入札事務と比較して数段と重くなっていることがわかる。公契約のすべてではないとして、「予定価格が1億円以上の工事又は製造の請負の契約」(4条1号)と「予定価格が1,000万円以上の工事又は製造以外の請負の契約のうち、市長が別に定めるもの」(同2号)に対して適用しなければならず、職員1名を増員するという。事前の調査や立入検査等からみて、しばらくは実施のための重要な作業が続く。野田市に続く自治体が出現し、こうした作業の試行錯誤の中で協力できる状況になることが望ましい。



むとう ひろみ  法政大学政策創造研究科教授)

 

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