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2010年4月コラム

自治事務とは何か

 「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(案)」(地域主権改革推進一括法)が3月29日に参議院に提出された。「国と地方の協議の場に関する法律案」、「地方自治法の一部を改正する法律案」とともに3月5日に閣議決定されながら、3法案とも同日までどの院にも提出されずにいたものである。「地域主権の1丁目1番地」と銘打った割に、3週間以上も閣内を彷徨していたのはなぜか。

 地域主権改革推進一括法は、地域主権戦略会議を新たに設置する内閣法改正と、いわゆる「義務付け・枠付けの見直し」を行う各個別法の改正で構成されている。後者は自治体で処理する事務についての法令等による義務付け・枠付けを見直して、条例に委ねたり、枠付け等を削除するなどの内容である。これに対しては、見直し事項が一部にとどまっているなどの不満はあるものの、自治体の自由度を高める方策としての方向性は評価する意見が表明されている(2009.3.5地方六団体)。だが、これら見直し対象となっている事務は「自治事務」であることには余り注意が払われていないような気がする。

 地方分権改革推進委員会の作業により、自治事務に対して法令等で処理を義務付けたり、基準が設けられている条項は10,057にのぼることが明らかになった。逆に問いたい。そのような国の規律関与が含まれていない自治事務はいったい何件あるのかと。そもそも、自治事務にそのような国による義務付け・枠付けがなされて良かったのだろうか。そもそも、あの地方分権改革で生まれた「自治事務」「法定受託事務」の区分は何のためであったのだろうか。そして、「自治事務」とはどのような事務として定義されたのであったか。

 地方自治法の規定を見てみよう。自治体の事務に一般について第2条2項を確認。

 「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する」。これには、法定受託事務と自治事務が含まれるのは周知の通り。そこで、自治事務を定義した同条第8項を見る。「この法律において『自治事務』とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう」。法定受託事務については次項に「国が本来果たすべき」とか「国においてその適正な処理を確保する必要がある」などの長い定義が載っている。問題はこれで「自治事務」とは何かを理解できるだろうかということだ。

 かつて地方分権一括法が審議された参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会の公聴会に公述人として出席した私は、同法案の審議で論点はそろそろ出終わった観があると述べた上で、「決定的な観点が抜けている」と指摘した。それはつぎのような内容であった。「ついに推進委員会は自治事務とはどういう性質の事務であるかということを定義しなかったんです。法定受託事務以外のものはすべて自治事務と、こういうふうに定義してしまいました。これは積極的な意味はあるんです。自治事務の範囲を広く推定できる、(中略)そういう意味はあるんですが、実は自治事務と法定受託事務の違いというものがきっちりと定義されていないという問題なんです」。「自治事務とはまさに地域の責任と地域決定によって実施していく、こういう性格づけをして、それが制度全体を貫く原理にならなければいけない。したがって、自治事務に対して国の関与というものはそもそもあり得ないのだという原則を貫くべきなのであります」(1999.7.5)。

 そこで、地方自治法の解説書を開いてみよう。私の意見の前段に関して、松本英昭『逐条地方自治法』では「『自治事務』について、より積極的な定義を置くべきであるという議論も散見されるところであるが、控除的な定義以外の定義を用いることとした場合には、むしろ当該定義に当てはまらないものは『自治事務』でないということになり、『自治事務』の範囲を限定的にしてしまうこととなる」と述べ、後段の論点については、「『自治事務』という用語のゆえに、地方公共団体が全く自由に執行できる事務であるとか、国のいささかの関与も許されるべきでないというような議論が行われることがある。しかしながら、『自治事務』は、様々な性格を有する事務の総称であり、地方公共団体にどのような裁量があるのかとか、国がどのような関与を行うことができるのかということについては、本法の第1条の2、本条第11項から13項などの規定、更には、関与の基本原則(法245の3参照)を踏まえて定立される法律やこれに基づく政令の規定するところによって定まるのである」と述べている(5訂版40頁)。

  私たちはいま、「自治事務」に対する国の規律関与の濃淡を、まさに国の態度に委ねている。一方、地方の側に目を転じると、そこにも問題はある。かつて公害問題に直面した自治体が、法令基準等を独自の視線で見直し、地域に即した規制を行ったことがあった。その意味でいま、10,000以上にのぼる自治事務への国の規律関与と向き合って地域的に変更を加えて、国の不興をかったという事例に出会っていないこともまた問題なのである。これら国の義務付け・枠付けは住民生活や地域での事業活動など、あるいは環境保全の観点から桎梏になってはいなかったというのであろうか。「自治事務」とは何かについて、再検証する時かもしれない。

つじやま たかのぶ  公益財団法人地方自治総合研究所所長)

 

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