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2010年6月コラム

運転免許証の更新

 事業仕分け第2弾後半戦では公益法人が対象とされた。その1つとして、財団法人全日本交通安全協会が取り上げられた。この団体は、警察庁の所管であり、理事長・常務理事らの常勤役員はすべて警察庁OBであり、どこからみても天下り法人である。協会の事業は交通安全の推進を中心としたことがらであり、交通事故の多かった日本社会にとって重要な仕事であるといえる。だが、こうした大義の影に大きな無駄が隠されていた。とはいえ、それが政府系公益法人の通常の姿なのかもしれない。

 事業仕分けで問題とされた点は、運転免許証の更新時に義務づけられている講習の資料作成であり、協会がほぼ独占する事業である。すなわち、講習時に配布されるテキスト2冊を作成している。配布されると書いたが、実は講習料に含まれているので、購入を強いられると言った方が正しい。納入される冊数は、約1,400万部だそうで、「ベストセラー」と仕分け人から皮肉られた。平成20年版『運転免許統計』によれば、免許証保有者は2008年現在で8千万人強であり、そのうち2008年度に更新講習を受けたのは、5年ごとの更新となる優良運転者が680万人、3年ごとの更新となる一般運転者・違反運転者・初回更新者を合わせた合計1,530万人が受講した。

 協会の事業収入は約37億円で、そのうち「講習用教本」の収入が約32億円である。協会の収入額が39.7億円であり、その8割を占めていることから、協会にとってきわめて重要な収入源である。

 そもそも更新の際に更新者はいくら負担するのであろうか。まず更新手数料2,100円が必要であり、ICカード化された場合には450円が上乗せされる。しかしながら、IC化はどのように活用されているのであろうか。利用価値のないIC化に負担を強いられているといえる。講習料は、30分間の講習となる優良運転者が700円であり、更新時の負担は合計2,800円となる。一般運転者は1時間の講習で手数料が1,050円、合計では3,150円となり、違反運転者・初回更新者は2時間の講習で合計が3,800円となる。高齢者は3時間の高齢者講習が義務づけられるため、合計で7,900円となる。ちなみに、仕分け人によると、優良運転者講習料700円の内訳は、人件費が300円、資料費は315円とのことである。

 更新費用からみると、教本代金315円などはその一部に過ぎないことがわかる。1,500万人の国民が3年あるいは5年ごとに免許の更新のために、2,800円から7,900円の税外負担を強いられ、しかも貴重な時間を半日も費やし、さらに交通費を使って免許証の更新を行っているのである。更新の際に徴収される金額だけを計算しても、500億円にのぼる。まさに免許更新ビジネスである。

 では、免許の更新は意味があるのであろうか。事業仕分けが行われた5月20日朝のテレビ番組で、更新の意義について疑問が呈されていた。その後27日に警察庁からこの番組に対する反論が公表された。それによると、更新の意義・理由とは、(1)視力等の身体的能力の低下を定期的にチェックすること、(2)交通法令等の最新情報を提供すること、(3)写真の更新により本人確認を容易にすること、(4)交通事故抑止効果があること、と説明している。(4)については、@更新前2年間の事故数より更新後2年間の事故数が5.8%減少していること(平成11年の調査)と、A更新時講習受講後1年目の事故件数を100.0とした場合、2年目は99.2、3年目101.8、4年目104.6と減少している(平成12年調査)という。

 (1)〜(3)については、更新という方法によらなければ達成できないことではない。(4)については、全体の事故が減少している最近の傾向からいえば、更新によって事故が減っていると説明する@は強引であり、またAもほとんど誤差としかいいようがない。

  免許の更新は本当に必要なのであろうか。イギリスの運転免許証は、20年前に取得したものであるが、70歳の誕生日の前日まで有効である。すなわち、70歳まで更新がないのである。

むとう ひろみ 法政大学大学院政策創造研究科教授)

 

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