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NPO法改正 |
武藤 博己 |
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本年6月15日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」が成立し、6月22日に公布された。1998年の制定以来の抜本的な改正といわれている。阪神・淡路大震災を契機として制定されたNPO法が、東日本大震災を契機として大きく改正された。 改正の内容は、大きく分けると、(1)NPO法人の活動分野が追加されたこと、(2)認証制度の見直しとして所轄庁を変更したこと、(3)認定制度の見直しと仮認定制度が導入されたこと、である。 (1)活動分野について、これまでの17分野に3分野が追加された。これまでの分野は、@「保険、医療又は福祉」やA「社会教育」、B「まちづくり」等々であり、そしてPNPOの「連絡、助言又は援助」の活動であった。ここにC「観光の振興」、D「農山漁村又は中山間地域の振興」が挿入され、S「前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動」が追加された。一見充実したように見えるが、実は周辺部分の活動が排除される可能性がある。たとえば、観光が明記されたということは、観光ではない体験宿泊や森林浴のような活動は排除される可能性が出てくる。また、「農山漁村又は中山間地域」が明記されたことはそれ以外の地域は含まれないことになる。すなわち、細かく指定することはグレー部分を排除することになってしまうのである。そのように運用されるかどうかは今後の問題だが、もっと大括りでよいのではないだろうか。その意味では、都道府県・指定都市が条例で定める活動が加えられたことはグレー部分を含めうるという意味では望ましいが、逆に細分化して指定する方向に進むことは避けなければならない。 (2)所轄庁の変更は、所轄庁から内閣府が撤退し、都道府県と指定都市の自治事務となることを意味している。これまで内閣府が所轄していた2以上の都道府県に事務所を設置するNPO法人の認証事務は、主たる事務所の所在する都道府県が所轄することとなった。地域の実情に合わせた認証が行われることは、自治・分権の視点から望ましいといえよう。しかしながら、所轄庁間の運用に違いが大きくなりすぎると批判が出てくることになる。そのためには、自治体間で十分な調整が迅速に行える仕組みを作る必要がある。 (3)認定制度の見直しと仮認定制度の導入が今回の改正の目玉である。これまでの認定制度では、認証が42,741団体(本年5月31日現在)であるのに対し、認定はわずか0.52%の223団体(本年7月1日現在)にとどまっている。その理由として、認定のハードルが高すぎると考えられる。そこで、現行の国税庁による全国一律の認定制度を止め、都道府県・指定都市が地域の実情に応じて認定する制度に変更された。また、一定の認定要件を満たす団体はパブリック・サポート・テストが免除される仮認定を受けることができる制度が導入された。 認定されるためには、@経常収入のうちに寄附金等収入の占める割合が政令で定める5分の1以上であること、A政令で定める額(3,000円)以上の寄附を行った者の平均が政令で定める数(100人)以上であること、B所轄庁が条例により控除対象として個別に指定した法人であること、のいずれかの基準をクリアしていれば、認定される。AとBが新しく設けられた基準である。 問題の1つは、Bの条例で指定する点である。6月14日の参議院内閣委員会で、条例による個別指定は自治体にとって適当ではなく、条例に委ねるべきではないかという質問に対し、逢坂誠二大臣政務官は、「条例指定の重み、その及ぼす効果」、すなわち「条例で指定をすれば国税にまで影響が及ぶ」という効果があるため、「条例において法人の名称、所在地までを明記した議決というものをお願いしたい」と述べている。所在地が変わるごとに条例を改正しなければならないという時間と労力に、自治体は対応できるのだろうか? |
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(むとう ひろみ 法政大学大学院政策創造研究科教授) |
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