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2012年7月コラム

直接参政権の諸問題−原発都民投票条例否決に触発されて−

 市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」が大阪・東京で進めてきた住民投票条例制定運動が市・都議会での否決で終結した。この結果に、条例を請求した市民団体のメンバーは「はらわたが煮えくりかえる」「民主主義の発展の足を引っ張る都議には、いてほしくない」(6月19日毎日)など、失望と怒りをあからさまにした。大阪、約5万5千、東京では約32万人分の署名を添えての自治法上の直接請求であった。同法によれば、20日以内に長が議会を招集し、「長の意見をつけて」議会に付議しなければならないことになっている。橋下大阪市長は「本件条例案による市民投票については、その結果が関西電力株式会社を拘束するものではなく、また、関西電力株式会社が電力を供給する開西地域全体の住民の意思を反映しているとまでは言えない」など条例不要との意見をつけて付議、石原都知事は「原子力発電所の稼働の是非は、専門的な知見も十分に踏まえて、国が冷静に判断すべきものであり、本問題を都民投票に付するのは適切ではない」との意見をつけた。

 この一連の出来事を前に、いま私たちは、直接参政の意義と制度について課題を突きつけられていると思う。一つは、かくも簡単に葬り去れるような請求条件、すなわち有権者の50分の1(2%)という数字はどのように設定されたかである。直接請求の諸規定は、じつは地方自治法の制定時に創設されたものではなく、GHQと日本政府が新しい憲法のありかたをめぐって交渉していた1946年の東京都制、府県制、市制、町村制の改正条文として新設されたものである(なお、この新設はGHQの示唆によるのではなく、「私の発案で直接請求制度を導入」したと鈴木俊一『回想・地方自治五十年』にある)。その政府原案は次のようなものであった(市制を例に)。

 市制第八十七条ノ二 市会議員ノ選挙権ヲ有スル者ノ総数ノ五十分の一(其ノ数千ヲ超ユルトキハ千以下之ニ同ジ)以上ノ者ノ連署ヲ以テ其ノ代表者ヨリ市長ニ対シ市条例又ハ市会ノ議決ヲ経ベキ市規則ノ制定ノ請求アリタルトキハ市長ハ二十日以内ニ市会ヲ召集シ意見ヲ附シテ之ニ原案ヲ付議スベシ

 「選挙人の過半数が今回初めて参政権を付与せられる者であるから、国民一般がこの制度に習熟し、提案の内容を批判検討して適切な判断を下し得ると認められるまでは、一般の投票に帰するよりも常に重要事項の議決に当たっている議決機関の決定に付することが適当」「従って比較的自由に発案しうることにしておいても、適当に調整し得る」(想定問答)というのが立法者の意図であった。はるか66年前のことである。

 第2に、署名を集めて条例の制定を議会に請求するとき、執行機関の長たる知事・市町村長の「意見をつけて」と規定しているのはなぜだろう。しかも、法の解説書には「執行機関の立場からする賛否の意見であり」「必ず附けなければならない」としている(松本「逐条地方自治法」)。これは議会の審議に対する介入であり、議決の誘導にもなりかねないと考える。そもそも、この規定はどのような動機で入れられたものだろう。上の1946年改正の市制第87条の2の第2項には次の規定が置かれていた。

  2 前項ノ場合ニ於イテハ市長ハ原案ノ趣旨ニ反セズト認ムル範囲内ニ於イテ之ヲ修正シテ市会ニ付議スルコトヲ得

 この限りでは、請求された条例案に修正を加えたことにつき説明すべきとして意見を附けることを求めたと解釈することもできる。しかし、衆議院の審議中にGHQから「市長ノ修正権ハ不要ト考エル」との意見が突きつけられたため第2項を削除した。そして、第1項の「意見ヲ附シ」が単独で残った。修正権を議会に限るとした趣旨からも「意見ヲ附シ」という長の審議介入的な文言は削除されるべきであった。

 今回の運動の発案者である今井一氏は否決に対して「我々がサボって選挙権と被選挙権を行使しなかったからだ。(略)全ては主権者に関わっている」(6月22日都政新報)と、議会選挙への取り組みにも目を向けるとしている。ちなみに、自治基本条例を制定している自治体の中には、市民の一定割合(1/4・1/5・1/6など)の署名で直ちに住民投票という常設制度を置いているところがある。

つじやま たかのぶ 公益財団法人地方自治総合研究所)

 

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