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2013年3月コラム

国家公務員制度における制度と実態の乖離

 日本の国家公務員制度は、制度と実態の乖離が大きいとしばしば指摘されている。制度と実態の乖離という意味では、他の分野でも様々な乖離が指摘できよう。逆にいえば、どのような分野の制度であろうと、制度の理念・規定と実態との乖離は存在するといえなくもない。

 日本国憲法13条は「個人として尊重される」としているが、民法や戸籍制度ではまだ「家」が尊重されている。その民法や戸籍制度でも、制度と社会の実態とは乖離した状態がしばしば生じている。また、憲法の14条には、「法の下に平等」とされているが、高裁も認める「一票の格差」が存在する。さらに、憲法41条には、「国会は、国権の最高機関」と明記されているが、実態もそうであると考える国民はいないし、憲法学も「政治的美称説」が通説である。会計法では、公契約は一般競争入札が原則であると規定されているものの、多くは随意契約や指名競争入札である。3割自治という言葉は最近では使われなくなったが、地方分権や地域主権に替わったものの、依然として自治の幅は狭い。地方自治の本旨に沿ったはずの制度だが、義務付け・枠付けの再検討が行われている。外国人研修・技能実習制度は、技能習得が目的とされているが、その実態は労働力不足解消のための外国人労働力の利用であり、研修生に対しても労働法令による保護を認める判例がでた。

 公務員制度の世界での理念と実態の乖離を示せば、職階制については、まったく導入されずにおわった。昇任についても能力の実証が必要であるが、法に規定のないキャリア制の下で特権的な昇任が行われ、法の理念である能力の実証という成績主義による昇任とはかけ離れた実態にあった。

 公務員制度におけるこのような乖離は日本だけではなく、東アジアの韓国・モンゴル・中国でも同様である。『東アジアの公務員制度』(法政大学出版局、2013年3月刊行予定)において、そのことが確認できる。韓国の場合は、成績主義の理念の下で情実人事が行われていた。モンゴルの場合には、成績主義の理念の下で政党による政治任用が上級職のみならず下級職に対しても行われた。中国の場合は、一党支配体制であることから政党による人事にどのように成績主義の理念を組み込むかが困難な課題であった。また、「国家公務員暫行条例」の時代には条例にない政策(退役軍人の公務員採用など)が実施された。

 こうした公務員制度の世界での乖離は、一般論として受け入れるべきなのであろうか。この点を考える際に考慮すべきことは、行政としてのコントロールがどの程度及んでいるかという統制の範囲と程度である。民法や商法の世界では国民の意識や社会的文化の反映という側面があり、行政のコントロールが及ぶ範囲は限られている。しかしながら、公務員制度では行政のコントロール下にあるといえる。それにもかかわらず大きな乖離があるということは、行政内部に反対・抵抗があることを意味しているのではないか。職階制が導入できなかった大きな理由として、キャリア制との矛盾があり、キャリア制の継続を求める旧勢力からの反対・抵抗があったからこそ、職階制は実現されなかった。このように考えると、日本の場合には、公務員制度法の規定と実態の乖離の程度は、社会的文化の反映というよりは、行政内部における反対・抵抗の強さの程度を反映しているのであろう。韓国・モンゴル・中国の場合は、公務員制度の乖離を強めている要因として、政治の側(支配政党)の抵抗に求められるといえる。日本の場合にも、政治の側に官僚の政治力が入り込んでいるので、政治と一体となった抵抗と考えられる。この場合はさらに強力な反対・抵抗となる。ここに改革が進まない大きな要因があると感じている。

むとう ひろみ 法政大学公共政策研究科教授)

 

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