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2013年5月コラム

政策会議の議論とそのゆくえ

 山積する政策課題に安倍政権はどのように対処しようとしているのか、その動向を正確につかんでおかなければならない。なにしろ課題が多すぎるのだ。経済財政諮問会議で老朽化するインフラ整備に民間の資金を取り込もうとの話が進んでいる。高速道路上の空中権を売却して金に換えるというわけだ。首都高銀座線などに蓋をしてその上を活用するなり、権利を建築物の容積率に換えて更に高層のビルを建てるなりすることで採算が合うということだそうだ。街なみが一変するにちがいない。

 待機児童問題も大きな社会的関心を呼んだ。母親たちの切なる願いと行動が重い腰を上げさせたということができる。そして打ち出されてきたのが、子ども子育て支援法である(2012年8月修正可決、2013年4月施行)。そこでは、「@社会福祉法人・学校法人以外の者に対しては、客観的な認可基準への適合に加えて、経済的基礎、社会的信望、社会福祉事業の知識経験に関する要件を満たすことを求める。Aその上で、欠格事由に該当する場合や供給過剰による需給調整が必要な場合を除き、認可するものとする」(「子ども・子育て支援関連3法について」2013年4月)という方針に基づき、株式会社等が運営する保育所を認可することを進めるという。今月1日の法施行にあたって、規制改革会議は「保育に関する規制改革会議の見解」をまとめ次のようにその実施を促している。「認可保育所を経営する法人の経営形態を、自治体の裁量によって制限することなく、社会福祉法人、株式会社、NPO法人がそれぞれ保育サービスの質を高め合い、どのような組織形態であれ良質な保育サービスが提供されるようにすべきである(下線筆者)」。この自治体の裁量で制限しないようにとの効果は何か。報道によるとそれは地方自治体に「要請」するということのようだ。「近く通知する」らしい(5月2日朝日夕刊)。

 政府に設置された様々な会議がいろいろなことを話し合い、その一部が報道され、決定はされていないが雰囲気ができあがる。そしてその線に沿って関係者に「要請」するというのが流行っている。企業に「給料をもっとあげてやってくれないか」と「要請」したり、日本経団連に「大卒者の就活開始時期をおくらせて」と「要請」したり、なにかと「要請」がはやっているようだが、これはどのような効果を持つ行為なのか。機関委任事務の時代のように「〜して」と書かれて、義務的に処置しなければならないわけではないだろう。“私の姿勢は示した”という一種の「スタンドプレー」ともとれるものである。

 「要請」された自治体はどのように対処することができるだろうか。一方に保護者たちの熱い視線があり、しかもただ認可保育所を増やせばいいというわけでもない。「会社が利益を出すために人件費を削り、保育士の待遇が悪くなれば、保育の質も下がる」(普光院亜紀「保育園を考える親の会」代表、2012年7月21日朝日)という声もある。「目をつぶって認可」などできるはずもない。

 これまで株式会社の保育園認可をしぶってきた自治体にも、保育園を認可すれば入所児童が増え、それに対する財政的支援の費用も増加が見込まれるという事情があるとみることができる。「要請」された自治体には重い課題が課せられるであろう。

 財政難に直面する介護保険制度についても見直し議論がかまびすしい。「要支援」と認定された軽度者向けのサービスを介護保険から切り離し、市町村事業としてケアする方向を検討するそうだ。社会保障制度改革国民会議の「議論の整理(医療・介護分野)案」(2013年4月)には、「軽度の高齢者は、見守り・配食等の生活支援が中心であり、要支援者の介護給付範囲を適正化すべき。具体的には、保険給付から地域包括ケア計画と一体となった事業に移行し、ボランティア、NPOなどを活用し柔軟・効率的に実施すべき」とある。後期高齢者医療制度についても、市町村の窮状を都道府県がカバーするどころか、市町村広域連合で担当させるなど、福祉・医療に関して高齢者はこの間「たらい回し」状態にある。

 そして、ここでも市町村に対する重い課題が突きつけられる。周知のように介護保険制度が発足してから13年目になる。この間、それまで行われていた様々な生活支援等の事業は介護保険制度に移行して市町村の手を離れている。これらサービスの供給体制を構築しなければならないことになる。

 様々に持たれている政策会議のいろいろな意見がどのように政府の政策になっていくのかを監視する、そこに主権者の立ち位置がある。

つじやま たかのぶ 公益財団法人地方自治総合研究所所長)

 

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