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2013年10月コラム

試される自治体間協議力

 第30次地方制度調査会の答申(6月25日)が出されてから少し日が経ったが、2000年の第1次分権改革以降の動きで気になることがある。第1次分権改革は機関委任事務制度廃止を決意し、国と自治体の関係をそれまでの「上下・主従の関係から新しい対等・協力の関係へ」(「中間報告」)と改める方針を立てた。いうまでもなく都道府県と市町村の関係も「対等・協力」関係に改められることになった。

 機関委任事務の処理をめぐる知事と市町村長の監督関係は廃止された。合わせて団体としての都道府県と市町村の関係にもメスが入れられ、都道府県の条例で市町村の行政事務について定めうること、および行政事務に関する市町村条例が都道府県条例に違反するときは市町村条例が無効とされる制度(都道府県統制条例)がともに削除されている。また、都道府県知事が市町村の職員に知事権限の一部を補助執行させる制度も削除された。

 これらの改革と並んで第1次分権改革の真髄の一つをなすある制度の創設を挙げなければならない。それは条例による事務処理特例の制度である(地方自治法第252条の17の2〜4)。すなわち都道府県知事の権限に属する事務であっても市町村との協議を経て条例で市町村に移譲することができるというものである。都道府県知事の権限に属する事務には、都道府県の自治事務だけでなく法定受託事務も含まれる。これによって国会の意思として都道府県に処理させることとした事務を、都道府県と市町村との協議によって市町村に移譲することができ、事務配分を「国の仕切り」に委ねる方式の分権化が行われたのである。この制度により都道府県と市町村が対等の関係で協議し、自主的に大都市に移譲されるもの、市町村全般に移譲されるもの、特定市町村(たとえば手を挙げたなど)に移譲されるものなどが都道府県ごとに多様に検討され実施に移されることが期待された。

 のちに設置された地方分権改革推進委員会「第1次勧告」(2008年5月)において、「(この制度により)移譲されている事務は相当数に及んでいる」、「(これは)想定している以上に、基礎自治体の事務処理能力が向上していることを示している」と思いっきり持ちあげた上で、「こうしたことから……改めて都道府県と市町村の事務分担について行政分野横断的な見直しを行う必要がある」として64法律356事項について都道府県事務の市町村への移譲を「国の仕切り」で行うことを勧告した。このうち47法律が民主党政権のもとで「地域主権改革第2次一括法」として立法化された。自主的な権限移譲として高く評価しながら、なぜ「国の仕切り」に戻すような勧告を行ったかについて同勧告は「(自主的な権限移譲の)実績を評価しこれを普遍化しようとしているもの」としているが、納得しがたい論理だ。すなわちこの方式だと協議が整わず移譲を受けていない市町村にも一律に事務処理が義務付けられることになり、事務処理特例制度の趣旨にも、また同時に検討されていた「義務付け・枠付けの見直し」の論理にも違背するからである。

 この過ちは今回の第30次地方制度調査会でも繰り返された。すなわち、都道府県から政令指定都市への権限移譲を35項目にわたって提言しているのである。これもまた例外なき移譲で、「国の仕切り」に基づくことを想定している。また都道府県と中核市・特例市の間では「一定の事務の移譲は法令で行うが、その他については条例による事務処理特例を活用することとすべき」とした。その上で、「移譲事務の内容については都道府県の意向が強く反映されているのではないか」との懸念を示し、協議のありかたについて付言している。現に六団体ヒアリングにあたって全国市長会の代表は「事務処理特例制度の活用が出ておりますが、これがもし使える制度であれば、使っております。これがなかなか使いにくい。なぜか。それは都道府県と市町村が実質的に対等でないからであります。対等でないところで相談を申し上げても、決定権が都道府県にある以上、市としてはお願いするだけでございます」と述べている(第25回専門小委員会議事録)。

 どんな場面であれ、自主的な協議で決めることができないならば、地方分権などしても詮無きことであろう。国の審議会の場で上のような実情を訴え、それならば「国の仕切り」で決着してやろうという勧告を引き出して、またぞろ法律による事務配分の世界に戻すつもりだろうか。事務処理特例を活かす趣旨で、2004年地方自治法改正により、市町村長から都道府県知事に対し事務の一部を当該市町村に移譲するよう要請することができるとし、要請があった場合には都道府県知事は速やかに協議をしなければならない旨の追加(第252条の17の2B・C)が行われたが、この制度活用実績はゼロだという(第33回専門小委員会配布資料2「条例による事務処理の特例について」)。

  この一連の経過から、自治体間の協議力が問われていることが明白である。「国の仕切り」から解放された「地方」に含まれる都道府県と市町村の間に、依然、言われるような「非対等」な関係が横たわっており、それが分権型システムの運用を妨げているとするなら、それを突き抜けていくのも自治体間協議力と考えるべきだろう。これが身につかないならまた「国の仕切り」の世界へ回帰するしかないのだろうし、すでにそちらへ動き出してもいる。

つじやま たかのぶ 公益財団法人地方自治総合研究所所長)

 

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