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2015年7月コラム

公権力による人権侵害を許さないのが立憲主義のはずだが

岡部 謙治

 日本を無謀な戦争に駆り立て、国の内外の人命に多大な損害を与えた戦前の日本陸軍の体質を作家の半藤一利氏は著書「昭和史」でこう評している。根拠無き自己過信、驕慢な無知、底知れぬ無責任。
 衆議院の安全保障特別審議委員会で内閣法制局が「毒きのこなら一部を食べても当たるが、ふぐは肝を食べなければ当たらない……」と例え、限定的集団的自衛権は憲法上認められると答弁したのには唖然とした。戦争の引き金を引きかねない法律の審議を食道楽話しとして言ってのける不誠実さ、慎重審議を求める国会、世論に対して挑発的ですらある。
 今国会で審議されている「安保法案」の政府与党の姿勢を見ていると、何を言っても国民は最後は政府の言うことを聞くしかないのだと言わんばかりである。これは立憲主義の個人の尊厳の尊重を蔑ろにすることである。しかし国民の中には危機感の希薄がある。何故このような弛緩した状況が出現したのだろう。
 国民の責務と言う文言が入る法律がある。国の責務・地方公共団体の責務・事業主の責務に続き国民の責務が入る。国民は国・地方公共団体が実施する施策への協力、社会の実現に努めるとの構成が基本だ。廃棄物処理法、自殺対策基本法、高齢者虐待防止法、がん対策基本法、少子化社会対策基本法、放射性物質汚染対処特措法等がある。環境、自然災害、健康、人命、子育て等の分野で環境保全や人権を守るとして制定されている。
 少子化社会対策基本法に「少子化と言う社会の根幹を揺るがしかねない事態に……国民の意識や社会の対応は著しく遅れている」「父母その他の保護者が子育てについて第一義的に責任を有するとの認識のもとに……」とある。政府行政の運用次第で国家が国民に命令し政府行政の責任を回避することに使われることも考えられる。
 人権と人権がぶつかり合ったときに公共の福祉の観点から人権の一部が制約される。これ以外に人権の制約は許されない。
 国民は人権を確実なものにするために国家に権力の行使を委任しているが、国民が権力の監視を怠ればいつでも濫用を許してしまう。憲法12条が「この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」と定めているのは長い歳月をかけて獲得した基本的人権と権力分立の大切さを忘れてはいけないと言っているように思う。

 

(おかべ けんじ  公益財団法人地方自治総合研究所理事長)

 

 

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