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2009年5月の自治動向


「ミニ統一選」の特徴と見所
堀内 匠

 

 「合併市長にノー、続々 ミニ統一地方選、現職17人落選 『声届かぬ』旧町村部反旗(4月28日・朝日)」、「『ミニ統一選』終了 現職市長の敗北相次ぐ 39市のうち17市で(4月27日・読売)」「選挙:4月のミニ統一選、現職市長の4割強が落選 合併効果に不満?(4月28日・毎日)」、4月の終わりに新聞各紙は「ミニ統一選」に関する記事を掲載した。麻生内閣の不人気や、リーマンショックによる世界恐慌、さらに小沢民主党代表秘書逮捕など国政の趨勢が耳目を集めるなかで、今年の地方選挙は毎度国政選挙の世論調査代わりに取り上げられることとなっている。しかし、地方選挙はそれぞれの地域の争点や地盤の違いによって、必ずしもその局地的勝敗が全国的な国政世論を示すことにならないことは自明であり、国政と地方政治との連続性を強調するときには相当程度の留保を必要とする。各紙の記事内容を見ても、国政と地方政治の情勢について混乱が見られる部分もある。そこで、本稿では「選挙イヤー」となっている2009年の地方選挙の特徴と見所について整理してみたい。

ミニ統一選の「統一」たる所以

 まず、「ミニ統一選」がなぜそう呼ばれるようになっているのか、確認しておこう。
 もともと「統一地方選挙」は地方自治法施行に合わせて1947年に新憲法施行を前に全国で一斉に地方自治体の首長、議員選挙が行われたことを契機として、4年に1度、オリンピックの前の年に行われている地方選挙の集中執行のことをいう。「ミニ統一選」というのは、この4年に1度の地方選挙ほどの規模ではないが、やはりまとまって地方選挙が執行されているためにそのように呼ばれ始めたようだ。
 選挙執行数は合併前最後の統一地方選挙である平成2003年が3,438件に対して「ミニ統一選」たる平成2009年は837件 (2009年に任期満了となる選挙数。首長・議会を含め)で、「ミニ統一選」は統一度がかなり低いとも感じられるが、2003年は合併のピーク前であって、直近の統一地方選挙が行われた2007年の選挙執行数は1,874件にまで減じており、かつてほどの大規模な集中は見られない。統一度(当該年内選挙執行数÷(当該年末時点の市町村都道府県数*2)の値)は2003年が52.96%に対して2007年が36.26%、2009年が22.87%である。

1. 長期戦であること

  その特徴の第一は、これまでの統一地方選挙と比較して長期戦であるという点である。普段の統一地方選挙の場合、臨時特例法が制定されるために3月から5月までの任期切れ選挙については4月の2週間でまとめて行われるが、「ミニ統一選」には臨時特例法が無いこともあり、時期の集中がゆるやかである。また、4月の他に10月、11月にもピークがある(下図参照、総務省発表の数値による)。

2つの統一における月別集中度の比較

2. 都議選が7月にあること

 特徴の第二番目としては、そのピークの狭間に東京都議会議員選挙が行われることが挙げられる。他の地方選挙と比較すると「首都」として特殊な位置を占めてきた都議会議員選挙は、「ミニ統一選」のピークの端境期である7月に執行される。都議選が特に注目される特殊性の一つは、統一地方選挙から日程的に離れていたことにあった。そのために各地方から動員をかけるような選挙戦術が可能だったし、他に国政評価のリトマス試験紙となるような選挙がなかったために注目されざるを得ない状態だった。これが「ミニ統一選」によって、その東京の特殊な地位たる理由の一つが失われることとなった。「ミニ統一選」に組み込まれる形になることで、東京都民は東京の興味において政治代表を選出する機会を取り戻すことになる。ミニ統一選が意図せずもたらした影響としては東京都民にとっては望ましいものであろう。
 ただし、次の事情から都議選の意味づけが変わるのは次回以降まで持ち越される。

3. 衆議院選が9月までに行われること

 1976年以来33年ぶりに任期満了による選挙になりそうな気配の衆議院議員総選挙だが、実際に任期満了であると9月に行われることになる。もとより衆議院の解散はほぼ首相が独断で行ってきたため、解散時期については不安定であり、常に注目が集まるものだが、今回は麻生内閣自体が選挙管理内閣として位置づけられながらも支持率や世界恐慌の影響を受けて解散がのびに伸ばされ、ついに任期切れ目前にまで至った。
 そのため、2009年は元々大都市をはじめとする枢要な自治体における選挙が行われるなど統一度が高く、しかも地方選挙に対する関心が高まっている中でもあり、常にマスコミの注目を受けることになった。先の特徴1に示したように、最盛期の4月以外にも大型の地方選挙が目白押しであって、一年を通じてマスコミに取り上げられることとなる。マスコミは地方選挙を国政選挙の世論調査として捉えるため、常に内閣支持率と一自治体の選挙結果とが見比べられることとなった。
 また、4月に執行件数のピーク、7月に都議選、9月に衆議院選、10月、11月に第2の執行件数ピークを迎える日程は、衆院選を挟んで地方選挙における影響を観察するのに適している。それぞれ衆院選前の解散時期読みの4月、総選挙の前哨戦としての都議選、新政権発足後の評価を巡る10月、11月として位置づけられるだろう。

4. 合併の評価をめぐる選挙となること

 最後に挙げる最大の特徴は、マスコミがどのように国政と結びつけて評価するかは別として、「ミニ統一選」の発端は、平成の大合併にあるという点である。平成の大合併がピークを迎えたのが2005年であって、そのために2009年が合併後はじめて行われた新自治体議会・首長選の改選年となった。これが地方選挙執行の集中を引き起こしたのである。そのため、国策として進められた市町村合併について、合併自治体の首長・議員は、主にそれを推し進めた側として有権者の審判を受けることになる。
 一方で、大きく取り上げられている千葉県知事選、名古屋市長選、そして東京都議会議員選挙等は大都市の選挙であって、争点が合併とは無関係な側面もある。これらたまたま時期が重なった、合併とは無関係な大都市地域の選挙と、合併自治体の評価を巡る問題とは慎重に切り分けて見る必要がある。

 以上の4点のような特徴を全て備えた地方選挙は2009年が最初で最後となるだろう。研究対象としては非常に興味深い素材である。この特徴を踏まえた分析を行う準備を整えていきたい。

文責 : 堀内 匠



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