地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2022年2月中央の動き


中央の動き


◎地方議会のハラスメントで事例を紹介 ― 内閣府
 内閣府は1月13日、地方議会のハラスメント防止研究教材の作成検討会を発足させた。改正法で国・自治体にセクハラ等防止の研修実施が規定されたことを受けたもの。その一環として昨年秋に地方議員からハラスメント事例を収集、合計1,324件の事例が寄せられた。行為主体は有権者53%、議員46%で、議員が受けた事例ではパワハラ68%、セクハラ23%が多く、マタニティ・ハラスメントも18件あった。
 具体例では、男性議員が「女は顔がよければ当選できる」などを繰り返しあびせる、初当選議員に定例会等の案内を出さず議会活動に支障、控室で女性議員にお茶汲みをさせる、少子化対策議論の中で「議員を辞めて結婚する方が幸せだ」などのプレッシャー、酒席でチークダンスを強要 ― などの事例が寄せられた。一方、男女共同参画に向けた取組として「公式YouTube見てください、女性議員のリアル」(苫小牧市)、「女性議会」(南砺市、香川県まんのう町)、「ハラスメント相談窓口」(群馬県)、議会に「育児室」設置(八戸市)などの取組も紹介している。


◎コロナ下の自治制度など諮問 ― 第33次地制調発足
 政府は1月14日、第33次地方制度調査会を発足させた。会長に市川晃住友林業㈱会長、副会長に大山礼子駒澤大学教授を選出。岸田首相は、挨拶で「新型コロナ対応、デジタル化への対応は我が国の最重要課題だ」と述べ、DX進展とポストコロナの経済社会に対応する国・地方自治体・自治体相互間の関係の在り方について諮問した。また、専門小委員会(委員長:山本隆司東京大学教授)の設置も決めた。2月から同小委で具体的な審議事項を詰める。答申は2年後。
 総会では、参加委員から「コロナ対応では都道府県と市町村が連携する取組が必要。都市自治体間で感染状況の情報格差があり、改善要請の声が多い」(立谷全国市長会長)、「行政のデジタル化では共通基盤を国が責任を持って整備加速すべき。コロナやデジタル化で地域実情に応じた創意工夫が制度化で消えたり、現場自治体が人や財政面での負担を背負わされている」(荒木全国町村会長)、「議会の位置付・議員の職務等の地方自治法規定化へ早急審議を」(柴田全国都道府県議会議長会長)などの意見が出た。
◎「小さな拠点」で全国フォーラム開催 ― 内閣府
 内閣府は1月14日、2021年度「小さな拠点」づくり全国フォーラムを開催。基調講演と事例報告、パネルディスカッションが行われた。基調講演では、㈱イミカの原田博一氏が「共助のススメ」と題し講演。暮らしの困りごとを解決する4つの「助」に「自助」「互助」「共助」「公助」を挙げ、集落維持では「公助から共助へと移行しようとしている」などと解説した。事例報告では、「道の駅南信州とよおかマルシェ」の指定管理者・岡田敬氏が道の駅を核に農産物直売所、農産物加工施設、農家レストラン、スーパーなど「小さな拠点」としての取組を紹介。高知県中山間地域対策課の岡野太朗氏は、旧小学校や集会所を拠点に地域住民が生活・福祉・農業・防災などの活動を展開する「集落活動センター」施策の取組などを紹介した。
 一方、観光庁は12月28日、「第2のふるさとづくりプロジェクト」立上に向けた有識者会議の中間まとめを発表した。コロナ感染症でインバウンドの本格回復に時間がかかるため、①「何度も地域に通う旅、帰る旅」を新たなスタイルとして定着させる②地域が一体となって「稼げる」地域をつくる ― などを提言した。
◎地方のデータセンター拠点整備を ― 総務省・経産省
 総務省・経産省は1月17日、デジタルインフラ整備有識者会合の中間まとめを発表した。医療や教育、交通、農業など様々な分野でデータを活用した新ビジネスと社会問題の解決が期待されており、データセンターの国内設置は不可欠だと指摘。地方のデータセンター拠点整備の論点に①拠点の「核」となるデータセンターと電力・通信インフラの整備②データセンター整備には地域へのメリットなど街づくりへの配慮も必要③「途切れない」通信環境推進のため日本海など国内海底ケーブルの増設 ― などを挙げた。
 一方、総務省は12月28日、地域社会のデジタル化に取り組む自治体の参考事例を発表した。地域活性化や防災、福祉など都道府県・市町村の合計124事例を紹介した。具体的には、地域のデジタル化推進の地域おこし協力隊(福島県)、廃校小学校を活用した地域テレワーク拠点整備(京都市)、買物弱者支援のためドローン活用の物流システム構築(伊那市)、マイナンバーカードの健康ポータルで「電子お薬手帳」(南国市)、AI活用の養殖魚給餌自動化技術の開発(三重県)、住民が専用アプリで道路等の破損を自治体に連絡(練馬区)などの取組を紹介している。
◎コロナ感染で救急搬送困難事例が増加 ― 消防白書
 総務省消防庁は1月18日、2021年版消防白書を公表した。21年の大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症対策、消防防災分野のDX推進などを特集した。21年7月の熱海市土石流災害(死者・行方不明者27人)を踏まえ、今後、情報収集用ハイスペックドローンを活用するとした。また、コロナ対応では、救急活動での感染防止対策を周知・徹底。感染妊産婦の救急要請時には受入医療機関リストからの選定を要請した。なお、2020年の救急出動件数は約593万件と、12年ぶりに前年より減少したが、救急搬送困難事例が急増。コロナ前(2019年)と比べ、2020年4月は1.9倍、21年8月には3.7倍に増えた。なお、今年1月第3週の救急搬送困難事例も4,950件と過去最多を更新。うちコロナ疑いが約3割を占めた。
 一方、消防庁は1月17日、消防団の組織概要を発表した。消防団員数(21年4月1日現在)は80万4,877人で前年より1万3,601人(1.7%)減少した。入団者3万4,553人を退団者4万8,154人が上回ったためで、特に20代・30代の入団者数が減少した。なお、女性団員は2万7,317人で前年より117人(0.4%)増えたが、学生団員は5,287人で前年より17人(0.3%)減った。
◎産後ケアで都道府県の役割明確化など勧告 ― 総務省
 総務省は1月21日、子育て支援で厚労省に改善勧告した。産後うつ等の予防のため産婦健康診査事業で健診費用を助成(市町村実施率50%)しているが、産婦は地元病院に限らず健診を受けるため市町村は域外病院と個別に委託契約を締結など事務負担があるほか、広域連携に二の足を踏む都道府県もあった。このため、厚労省に対し都道府県の役割を示すなど市町村に対する支援を促すよう勧告。産後ケアでは、病院・助産所等の地域偏在で委託先確保が困難な事例があるほか、産婦が遠方に行く場合の移動費用が補助対象外となっていると指摘。現場が抱える課題を把握し対応策の選択肢を示すなど市町村事業を支援すべきだと勧告した。
 また、総務省は同日、認知症高齢者の地域支援で改善策を厚労省に勧告した。認知症の早期診断・早期対応に向け認知症初期集中支援チームが全市町村に配置されたが、同配置数・支援実績は市町村間でバラバラで約33倍の格差があったほか、支援が本来の「初期」ではなく対応困難事案が多いことも分かった。さらに、都道府県の医療センターでは事業評価を半数で実施していなかった。このため、厚労省に①支援チームの選択可能な支援スキームを市町村に提示②医療センターの医療提供の機能・体制を評価 ― するよう勧告した。
◎ワクチン接種前倒しの協力などを要請 ― 総務省
 総務省は1月24日、全国都道府県財政課長等会議を開き、2022年度予算編成上の留意事項等を説明した。新型コロナ対策では「高齢者らへの3回目接種の前倒へ市町村を支援しペースアップする」(前田自治財政局長)よう要請。また、看護・介護職員の収入3%引上げのほか、養護老人ホーム等の職員の処遇改善にも交付税措置するとした。このほか、地方公務員の定年引上に向け対象職員への情報提供・意思確認を今年度中に、条令改正案は今年6月議会の上程を要請した。
 また、総務省は1月28日、2022年度の地方財政計画を発表した。地方財政計画規模は90兆5,918億円(前年度比0.9%増)で、うち地方交付税総額は18兆538億円(同3.5%増)、地方税・地方譲与税は43兆8,283億円(同9.8%増)、臨時財政対策債は同3兆6,992億円(36.6%)減の1兆7,805億円に縮減、財源不足額も2兆5,559億円(74.7%減)に減少した。主な施策では、地域デジタル社会推進費を2,000億円計上、公共施設等適正管理推進事業費を同1,000億円増の5,800億円とし「脱炭素化事業」を追加、「長寿命化事業」の対象に空港施設・ダムを追加し事業期間を5年間延長、「公立病院経営強化プラン」策定要請などを示した。
◎地域公共交通の確保で様々な取組を紹介 ― 総務省
 総務省は1月25日、地域公共交通の確保に向けた取組状況をまとめた。人口減少や自家用自動車の普及で地域公共交通の確保・維持が困難となっている中、民間路線バスの経営を圧迫しないよう時間帯・利用者を限定してデマンドタクシーの対象区域拡大(山形県朝日町)、コミュニティバス導入後3年間の運行データを分析し運行日・運行ルートを再編(伊予市)、庁用自動車をコミュニティ自動車として地域に貸出(いちき串木野市)― などの取組を紹介した。
 一方、国交省は1月11日、鉄道駅のバリアフリー化状況(2020年度末)を発表した。駅の段差解消は95%、視覚障害者用誘導ブロックは97%、障害者対応型トイレは92%、案内設備は81%などだった。また、同省の駅無人化に伴う安全・円滑な駅利用の関係者意見交換会は1月12日、ガイドライン案を固めた。具体的には、都市型無人駅ではカメラ映像や音声音響装置の活用、ICTを活用した情報提供など、郊外・地方無人駅では乗務員による乗降介助のほか、構内踏切・スロープ活用、駅業務の自治体委託などを盛り込んだ。
◎住基人口移動で都区部が初の転出超過に ― 総務省
 総務省は1月28日、2021年の住民基本台帳人口移動を発表した。都道府県間移動者数は247万6,640人(前年比0.5%増)、市町村間移動者数は524万7,744人(同0.2%減)だった。うち、都道府県では10都府県が転入超過。神奈川3万1,844人、埼玉2万7,807人、千葉1万6,615人などで多いが、東京は5,433人と前年より2万5,692人減った。また、茨城、山梨、群馬の3県は前年の転出超過から転入超過に転じた。さらに、東京都特別区は2014年以降初めて転出超過(1万4,828人)に転じた。東京一極集中鈍化の背景にコロナ感染拡大とテレワーク普及があるとみられる。転出超過は、広島(7,159人)や福島、長崎など37道府県。
 市町村では、転入超過が529団体(31%)、転出超過が1,190団体(69%)で、転入超過はさいたま市(1万527人)や横浜市、札幌市などで多い。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)