地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2022年1月中央の動き


中央の動き


◎1票の格差是正へ10増10減が必要 ― 2020年国勢調査
 総務省は11月30日、2020年国勢調査の確定値を発表した。人口は1億2,614万6千人で、前回(15年)より0.7%減少。都道府県別では、東京、沖縄、神奈川など8都県で増加、39道府県で減少した。市町村では83%にあたる1,419団体で減少した。これに基づく衆院小選挙区の1票の格差は最多の東京22区と最少の鳥取2区で2.09倍となったほか、23選挙区で2倍を超えた。このため「10増10減」が必要となる。増加は東京5人、神奈川2人、埼玉、千葉、愛知の3県で各1人増加。逆に、宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県で各1人減る。
 一方、厚労省は12月7日、2021年人口動態統計について、コロナ関連で数値が大きく変化したため年間推計を行わないと発表した。なお、2020年の確定数では、出生数は84万835人で前年より2万4,404人減少、1899年の同調査以来最少となった。死亡数は137万2,755人で前年より8,338人減少。この結果、自然増減数は53万1,920人の減で、14年連続の減となった。なお、婚姻件数は52万5,507組で前年より7万3,500組減少。離婚件数も19万3,253組で同1万5,243組減った。


◎SDGsで自治体は「エネルギー」に注力 ― 内閣府
 内閣府は12月3日、自治体のSDGsの取組動向(2021年秋調査)を発表した。SDGs17ゴールのうち取り組んだ課題では「持続可能な都市」(1,030団体)や「保健」「教育」が多く、今後新たに注力したい課題では「エネルギー」(293団体)や「気候変動」「ジェンダー」が多かった。また、SDGs推進の支障では「先行事例や成功事例がなくどう推進すればいいか分からない」(28%)、「自治体内部の理解、経験や専門性が不足」(39%)が多かった。このため、今後の支援では「先行事例や成功事例の取りまとめ」(29%)、「担当者向け研修・学習機会の提供」(26%)が多かった。なお、SDGs推進で得られた変化・効果では「事業者・民間団体との連携強化」が16%あったが、「分からない」が28%で最も多かった。
 一方、環境省はこのほど、2050年二酸化炭素排出実質ゼロを表明した自治体(2021年11月30日現在)が492団体、その人口は1億1,227万人に達したと発表した。表明団体は、東京都、京都市、横浜市など40都道府県、295市、14特別区、119町、24村。
◎2023年度までの医療再編統合方針を要請 ― 厚労省
 第7回地域医療確保に関する国と地方の協議の場が12月10日開催された。厚労省は再編統合の対象436医療機関のうち199医療機関(46%)が合意済みとなっているが、第8次医療計画(2024~29年度)策定に向け、「23年度までに民間医療機関も含めた各医療機関の対応方針の策定」を要請した。これに対し、全国知事会は民間医療機関も対象に含めたことを評価、策定期間も了承したが、全国市長会は「民間医療機関も統廃合の対象となるとハレーションが生じかねない」との懸念を示した。同問題は、厚労省が19年に再編統合の対象機関名を公表し地方側が猛反発。さらに、コロナ感染拡大で協議が進んでいなかった。
 一方、総務省は12月10日の公立病院経営強化検討会報告を受けて年度内にガイドラインを策定。各自治体に2023年度までの公立病院経営強化プランの策定を要請する。各公立病院が担う役割・機能を明確化し、不採算病院等への医師・看護師の派遣や感染拡大時に転用しやすい施設・設備の整備などを求める。
◎固定資産税で軽減措置継続 ― 2022年度税制改正大綱
 自民・公明両党は12月10日、2022年度税制改正大綱を決めた。コロナ関連の影響に対応するため企業の「賃上げ税制」拡充、固定資産税に新たな軽減措置、企業の地方移転に向けた地方拠点税制の2年間延長などを盛り込んだ。これを受けて総務省は同日、地方税制改正の概要をまとめた。固定資産税では土地の負担調整措置について激変緩和のため22年度に限り商業地の課税標準額の上昇幅を評価額の2.5%とする。また、法人税の賃上げ対応に合わせて継続雇用者の給与総額を3%以上増加させる法人について雇用者全体の給与総額の対前年度増加額を付加価値額から控除(2年間の時限措置)する。また、住宅ローン控除の個人住民税減収額は国費で補てんする。
 同大綱決定を受けて、全国知事会は地方拠点強化税制の延長・拡充など、全国市長会・全国町村会もゴルフ場利用税の現行制度堅持を評価した。一方、市長会・町村会は、固定資産税の税額据置措置は21年度限りの「臨時・異例」措置にもかかわらず、来年度も商業地の上昇幅を2.5%に抑制するのは「極めて遺憾」だと批判。同軽減措置は22年度限りとすべきだと訴えた。
◎子どもへの10万円給付は自治体判断で ― 政府
 政府は12月15日、18歳以下の子どもへの10万円給付について①先行分5万円の現金給付と追加分5万円相当のクーポン給付②先行・追加分とも現金給付③先行・追加分あわせ10万円の現金一括給付 ― のいずれも「自治体判断により可能」との方針を決め、各自治体に「令和3年度子育て世帯等臨時特別支援事業 ― 地方自治体及び地方議会向けQ&A」(暫定版)を通知した。政府は当初、先行分5万円の現金給付は児童手当の仕組みを活用して年内支給、追加分は22年春の卒業・入学・新学期に向けクーポンを基本に給付するとしたが、自治体側の反発を受けて方針を転換した。Q&Aは、このほか地方が追加5万円を現金給付した場合も政府が「条件を設け、審査を行ったり、可否を判断することはありません」と明記。支給要領発出前の給付にも事後に補助金を交付するとした。
 なお、全国知事会・同市長会・同町村会は11月30日に同臨時特別給付について緊急要望を政府に提出。自治体はワクチン追加接種や年度末の住民の転出・転入時期と重なるため、住民への早期給付に向け市町村が柔軟に対応できる仕組みとするなど事務負担の軽減や実施方法の早急な提示などを要請していた。
◎孤独・孤立対策で24時間相談支援体制を ― 内閣府
 政府の孤独・孤立対策連絡調整会議は12月17日、「孤独・孤立対策の重点計画」をまとめた。孤独・孤立は人生のあらゆる場面で誰にでも起こるもので社会全体で対応すべき問題だと指摘。対応策では、行政と民間が連携して取り組むことが必要不可欠だとし、①電話やSNS相談など24時間対応の相談支援体制②見守り・交流の場や居場所づくり③市町村は分野横断的な対応を可能とする部署の明確化 ― などを要請した。
 一方、内閣府は12月2日、自治体の男女共同参画の取組状況(2021年4月1日現在)を公表した。男女共同参画条例は都道府県・政令市では千葉県を除く全団体で、市町村も668団体(38%)で制定。また、役職に占める女性割合は、部局長・次長では都道府県7%、政令市11%で、京都府13%、札幌市17%で高い。課長は都道府県13%、政令市18%で、鳥取県23%、さいたま市29%で高い。市町村では部局長・次長は11%、課長は18%だった。なお、職員の通称・旧姓使用は、都道府県・政令市では、運用上認めている愛知県・北九州市を除く全団体で明記規定があるが、市町村では明記規定は750団体(43%)、運用上容認は287団体(17%)で、95団体(6%)は認めておらず、609団体(35%)は「使用した事例はない」と回答した。
◎こども家庭庁に勧告権もつ担当相配置 ― 政府
 政府は12月21日、「こども家庭庁」設置の基本方針を閣議決定した。関係法案を今通常国会に提出する。同庁は、首相直属の内閣府外局として設置、各省大臣への勧告権等をもつ担当相を置く。所管事務は、こども・子育て当事者の視点に立った政策立案・総合調整や妊娠・出産の支援、就学前のこどもの育ちの保障など成育部門、困難を抱えるこども・家庭への地域支援や児童虐待防止対策、いじめ防止などの支援部門。
 一方、デジタル田園都市国家構想担当大臣・地方創生担当大臣と地方六団体の意見交換会が12月8日、開催された。会合で若宮担当相は「地方からデジタル実装を進め地方と都市の差を縮めたい」、野田担当相は「男女問わず安心して子どもを産み育てられる環境づくりが重要だ」と指摘。これを受けて、地方側からは「地方創生臨時交付金を使いやすいものにしてほしい」(平井全国知事会長)、「東京一極集中是正のため基盤整備・デジタル人材の確保・育成を」(立谷全国市長会長)、「デジタル田園都市国家構想推進交付金は自由度が高く活用できるものに」(荒木全国町村会長)、「地方議会のデジタル化の支援を」(柴田全国都道府県議会議長会長)などの意見が出た。
◎国の計画策定要請を見直しへWG ― 地方分権会議
 政府は12月21日、2021年の地方分権に関する地方提案の対応方針を閣議決定した。地方からの提案160件のうち147件(92%)で対応。一括法案を通常国会に提出する。具体的には、住民基本台帳ネットワークシステムの利用可能事務を地籍調査・管理不全空家等に拡大するほか、下水道法の計画策定・変更手続の簡略化、国民健康保険等の一部負担金の軽減申請不要化、認可地縁団体の合併規定の見直しなどが盛り込まれた。
 一方、地方分権改革有識者会議は11月26日、計画策定等に関するワーキンググループを発足させた。国が自治体に求める計画策定が負担になっているが、同規定が10年間で約1.5倍に増加。このため、WGでは全国一律の策定が適当か、計画事項や策定手続を地方の自主性に委ねるなど一般通則ルールを明確化する。今年2月にも検討状況を有識者会議に報告する。なお、全国知事会など地方3団体は12月21日、計画策定の検討では「従うべき基準」の制度的見直しも求めた。
◎地方交付税は3.5%増を確保 ― 2022年度の地財対策
 総務省は12月24日、2022年度の地方財政対策と総務省予算案を発表した。地方交付税(出口ベース)は前年度比3.5%増の18兆538億円を確保、一般財源総額は交付団体ベースで前年度比0.0%増の62兆135億円を確保した。その上で、臨時財政対策債は前年度比3兆6,992億円減の1兆7,805億円に抑制した。なお、年度末残高は53兆円にのぼる。また、財源不足額は2兆5,559億円で折半対象財源不足は解消した。このほか、まち・ひと・しごと創生事業費を引き続き1兆円確保するとともに、地域デジタル社会推進費2,000億円、脱炭素事業を追加した公共施設等適正管理推進事業費5,800億円、地域社会再生事業費4,200億円などを計上した。また、保健師を2年間で900人増員する。
 一方、22年度の総務省予算案は前年度比1,328億円(0.4%)減の16兆4,624億円とした。マイナンバーカード申請促進・交付体制強化に1,065億円、高齢者デジタル活用支援21億円、ローカル脱炭素プロジェクト事業立ち上げ重点支援に5億円、地域資源を活かした地域の雇用創出5億円などを計上した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)