地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年9月中央の動き


中央の動き


◎住民基本台帳人口が12年連続の減少 ― 総務省
 総務省は8月4日、住民基本台帳人口(2021年1月1日現在)を発表した。日本人住民は1億2,384万2,701人(前年比0.34%減)で、12年連続の減少。都道府県別では、人口増加は東京(3万9,493人増)や神奈川、沖縄、千葉、埼玉の5都県で、北海道(3万5,428人減)など42道府県で減少した。また、市区部人口は1億1,333万771人(同0.28%減)、町村部人口は1,051万1,930人(同1.06%減)で、662市区(81%)、836町村(90%)で人口が減少した。なお、市区・町村で人口増加が最も多いのは大阪市1万1,277人増、熊本県菊陽町556人増、増加率は流山市2.41%増、鹿児島県三島村4.96%増。逆に、人口減少は京都市5,846人減、北海道八雲町617人減で最も多く、減少率は夕張市4.34%減、熊本県球磨村6.06%減だった。
 一方、厚労省はこのほど2020年簡易生命表を発表した。男の平均寿命は81.6年、女は87.7年で、前年よりそれぞれ0.2年、0.3年伸び、いずれも最高を更新した。また、同省が8月27日発表した妊娠届出数によると、今年1~4月の累計届出数は30万4,425件で、前年同期の30万8,178件に比べ1.2%減少した。


◎情報システム業務継続計画、市町村は4割 ― 総務省
 総務省は8月6日、2020年度の地方自治情報管理概要を発表した。行政手続のオンライン化計画は38都道府県(81%)、474市町村(28%)で策定、統合型GISは26都道府県(55%)、1,060市町村(61%)で導入。業務システムの共同化では公共事業の電子入札が22都道府県(47%)、590市町村(34%)で最も多い。情報セキュリティ対策では「入退室管理」「委託事業者への防止対策契約の義務化」はほぼ全団体で実施、情報システムの業務継続計画は46都道府県(98%)、759市町村(44%)で策定していた。
 また、同省はこのほど、青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備の新たな課題・対策を発表した。契約時にフィルタリング設定が行われなかった場合の保護者による事後設定促進の取組強化のほか、①継続的利用促進の鍵となるユーザビリティ改善に向けた関係事業者の連携②低年齢層の保護者へのアプローチ強化 ― などを提言した。
◎月給据え置き・ボーナスは0.15カ月減 ― 人事院勧告
 人事院は8月10日、今年度の月例給は改定せず、ボーナスを0.15カ月引き下げるよう国会と内閣に勧告した。年間給与は平均6万2,000円減となる。民間給与比較の結果、国家公務員が給与は19円、ボーナスは0.13カ月上回っていた。このため、月例給は改定せず、ボーナス(期末手当)を0.15カ月引き下げ4.30カ月とするよう勧告した。このほか、妊娠・出産・育児と仕事両立のため育児休業の取得回数制限(原則1回)を緩和する育児休業法改正の意見を申し出たほか、①常勤職員・非常勤職員ともに不妊治療のための休暇(有給・原則年5回)の新設②非常勤職員の配偶者出産休暇・育児参加休暇(有給)の新設 ― も要請。さらに、長時間労働の是正やテレワーク等の対応も求めた。
 一方、厚労省は8月13日、全都道府県の地域別最低賃金を発表した。全国加重平均は前年度比28円増の930円(前年度902円)で、引上げ額は過去最高。国の目安28円を青森、秋田、山形、鳥取、島根、佐賀、大分の7県が上回った。最高は東京1,041円、最低は高知、沖縄の各820円で、両者の比率は78.8%だった。
◎盛土災害防止で関係府省連絡会議を発足 ― 政府
 政府は8月10日、盛土災害防止のための関係府省連絡会議を発足させた。熱海市の土石流災害を踏まえ、土砂災害警戒区域上流域の盛土や大規模盛土造成地の現状を総点検した上で、土地利用規制など制度的な対策を検討する。また、国交省の洪水・土砂災害の予報の在り方検討会は8月24日、報告書をまとめた。住民の避難のための予報の高度化と単一の発信元からの提供(シングルボイス)を提言した。
 一方、政府の流域治水推進関係省庁実務者会議は7月30日、流域治水推進行動計画を決めた。気候変動を踏まえ①治水計画や設計基準の見直し②流域全体を俯瞰した総合的・多層的な対策③事前防災対策の加速④防災・減災社会への仕組づくり ― を掲げ、今後5年の目標に河川整備計画を20水系・海岸保全基本計画を39都道府県で見直すほか、2級河川でもダムの事前放流、国有地を活用した貯留施設整備を50カ所、「田んぼダム」に取り組む水田面積を3倍以上、雨水貯留浸透施設の設置900市町村、防災指針の作成600市町村、1日先の雨量予測危険度分布の提供などを盛り込んだ。
◎感染症で地域一斉の学校休業は避けよ ― 文科省
 文科省は8月20日、小中学校等の新学期開始に向けた新型コロナウイルス感染症対策で各都道府県に「地域一斉の臨時休業は避けるべきだ」と通知。8月27日には感染が確認された場合の対応ガイドラインとICT活用の学習指導も通知した。一方、全国知事会・同市長会・同町村会は8月6日、菅首相が打ち出した入院対象を重症者等に限定する方針に対し、「一律に中等症患者を在宅療養とせず、現場に幅広い裁量を付与する」よう政府に申し入れた。
 一方、厚労省は7月30日、2021年版厚生労働白書を公表した。「新型コロナウイルス感染症と社会保障」と題して課題を分析。「女性」「宿泊・飲食業」「生活関連サービス・娯楽業」で雇用者数が減少したほか、自粛生活で高齢者の交流機会減少や認知機能が低下、自殺者や家庭内DVも増加した。さらに、医療・福祉現場では受診率低下や介護サービスの利用低下が進む中、病床占有率上昇で様々な病床確保策に追われた実態を紹介。その上で、感染拡大で顕在化した課題を踏まえ、①多様な働き方を支える②性差のない社会づくり③孤独・孤立を防ぐ④社会保障でのデジタル化⑤危機に強い医療・福祉現場 ― の必要性を訴えた。
◎障害児の移行調整で新たな枠組を提案 ― 厚労省
 厚労省は8月12日、障害児の新たな移行調整の枠組に関する報告書をまとめた。障害児入所施設の児童は18歳以上になると障害者施設に移行するが、実態は調整が進まず多くが障害児入所施設に留まっている。このため、都道府県が管内全体の移行調整の責任主体として市町村や児童相談所など関係者との「協議の場」で連携し移行を図るとともに、移行が難しいケースも相互の協力で移行調整を進めるとした。さらに、障害児入所者に対し15歳頃から移行・定着を一貫して支援できる仕組みの創設も求めた。
 また、厚労省は8月27日、保育所等の待機児童数を発表した。今年4月1日現在の待機児童数は5,634人で前年より6,805人減った。待機児童がいる市町村も312団体で前年より88団体減った。政府の「子育て安心プラン」を受けて、保育所等利用定員は302万人、前年より5万人増加したほか、利用児童も274万人で同5千人増えた。一方、同省が8月27日の全国児童福祉主管課長等会議で全国の児童相談所が対応した20年度の児童虐待件数を示した。虐待件数は20万5,029件で、前年度比5.8%増と過去最多を更新した。
◎大規模な地熱発電許可へガイドライン改訂 ― 環境省
 環境省は8月20日、温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)改訂案をまとめ、意見募集を開始した。菅首相の「2050年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現」宣言を受けて、同省は今年4月の地熱開発加速プランで、60超の地熱発電施設数を30年までに全国で倍増する方針を示した。今回の改訂では、地域共生型の地熱利活用推進のため大規模な地熱開発の地熱資源管理と掘削許可の考え方を整理した。また、政府は8月13日、風力発電所の規模要件を緩和する環境影響評価法施行令を改正した。
 一方、同省は8月2日、「湯治」効果の調査結果を発表した。同省は2017年策定の「新・湯治推進プラン」で「温泉地域の活性化」に向け、新たに「新・湯治」活動の全国展開、インバウンド対策の推進などを打ち出し、その関連で「湯治」効果3年調査を実施。その結果、「温泉滞在後、心身に良い変化が得られた」「並行したゴルフや登山、周辺観光や食べ歩きなどでより良い心身の変化に関連」「日帰りなどでも心身への良い影響があった」などが分かった。同省は、同結果を基にさらなる「新・湯治」の全国普及を図る。
◎地方交付税は0.4%増の17.5兆円 ― 総務省概算要求
 総務省は8月31日、2022年度の予算概算要求を発表した。要求総額は、前年度比1,115億円(0.7%)減の16兆4,837億円、うち地方交付税(交付ベース)は前年度比0.4%増の17兆5,008億円を計上。併せて、来年度も4.5兆円の財源不足が生じるため交付税率引上げも事項要求した。このほか、マイナンバーカード普及・利活用の促進に1,230億円(前年度1,055億円)、地域おこし協力隊の強化等に6.5億円(同3.5億円)、感染拡大による在宅避難に向けケーブルテレビの光化22億円(同11億円)を計上。このほか、感染症を踏まえた国と地方の連携推進・新たな役割分担に1億円(同0.6億円)も計上した。骨太の方針2021では同テーマを地方制度調査会で検討するよう提言している。
 一方、地方六団体は8月25日、自民党総務部会に来年度予算案に向けた要望を提出した。感染症対策で単独実施する大規模PCR検査を国が財政支援するほか、感染症対応地方創生臨時交付金の必要額確保と弾力的運用・手続簡素化などを要請。また、①自治体DX推進に向けた財政支援②盛土の総点検早期完了と再発防止策の早期取組③公立小中学校施設の新増築・老朽化対策の対象拡大・補助率引上げ ― などを求めた。
◎2022年度予算の地方財政規模は90.1兆円 ― 総務省
 総務省は8月31日、2022年度地方財政収支の仮試算を発表した。同年度概算要求を踏まえた地方財政の骨格を示したもの。感染症対応や活力ある地域社会実現に向け地方財政規模は前年度比0.6%増の90.1兆円とした。また、給与関係費は同0.8%減の20兆円、一般行政経費は社会保障関係費増などで同1.3%増の41.4兆円、投資的経費は前年度同額の11.9兆円とした。歳入では、地方税等を同6.4%増の42.4兆円、地方交付税は同0.4%増の17.5兆円、国庫支出金は同1.6%増の15.0兆円、地方債は同19.6%減の9兆円、うち臨時財政対策債は同40.2%減の3.3兆円とした。
 一方、総務省は8月3日、2021年度普通交付税大綱を閣議報告した。総額は前年度比5.1%増の16兆3,921億円で、うち道府県分は8兆9,276億円(前年度比5.1%増)、市町村分は7兆4,645億円(同5.2%増)。算定では「地域デジタル社会推進費」を創設、感染症対応で保健師等の人員強化の経費を算定した。また、不交付団体は東京都と53市町村で、前年の75市町村から減少。川崎市や小金井市、豊橋市、岡崎市、宮城県女川町など24団体が不交付から交付団体に移った。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)