月刊『自治総研』
2021年4月中央の動き
中央の動き |
◎有機農業拡大など「みどりの食料戦略」― 農水省 ◎避難勧告と指示を一本化など基本法改正案 ― 政府 政府は3月5日、災害対策基本法改正案を閣議決定した。避難勧告時に避難せず被災する事例が多発しているため避難勧告と指示を一本化、従来の勧告段階から避難指示を行う。また、「避難行動要支援者名簿」は99%の市町村が作成済みだが、災害被害者になお高齢者が多いため、要支援者ごとに避難支援を行う者や避難先などを記載する「個別避難計画」の作成も市町村の努力義務とする。このほか、災害発生の恐れがある段階で国の災害対策本部設置など体制を強化する。 一方、国交省の水害・土砂災害の防災用語改善検討会は3月24日、報告書をまとめた。受け手が直感的に理解できるよう①平常時と緊急時での防災用語の工夫と防災情報の用語・解説ウェブサイトの開設②SNSなど新たなメディア特性を活かした防災情報の発信③避難行動に結びつく「強く警戒を呼びかける」ための記者会見の充実 ― などを示した。また、同省は3月18日、高齢者福祉施設の避難確保の報告書を発表した。2000年夏の球磨川氾濫での特別養護老人ホーム死亡事故を踏まえ、避難確保計画の充実と家族等への周知、地域と連携した避難支援員確保などを提言した。 ◎二地域居住促進へ全国協議会を設立 ― 国交省 国交省は3月9日、全国二地域居住等促進協議会を設立した。二地域居住の機運醸成に向け、関係自治体601団体と関係29団体が参加した。併せて開催した記念シンポジウムで谷口守筑波大学教授が講演。地方移住への関心が高まる中、二地域居住の意向を持つ人は約661万人にのぼると指摘。また、市町村消滅が危惧される中、北海道厚真町、島根県海士町、鹿児島県十島村での「人口予測のトラウマに打ち勝つ」取組を紹介。さらに、「予測の乖離の要因分析」を基に、地域起こし協力隊や移住施策、6次産業化などを試みた団体が「人口減少予測をあらがえた」と指摘した。 また、国交省は3月19日、「関係人口と連携・協働する地域づくり」を提言した。「関係人口」は約1,827万人と推計されるが、地域貢献型の関係人口をつくるには外部から人がきやすくなる状況をつくることが重要だと指摘。このため、①地域の人と関係人口を結びつける関係案内人・中間支援組織②地域の人と関係人口が出会う「関係案内所」③地域の人と関係人口の距離を縮めるイベント ― が必要だと強調した。 ◎「小さな拠点」づくりでフォーラム ― 内閣府 内閣府は3月10日、「小さな拠点」づくり全国フォーラムを開催した。小田切徳美明治大学教授が講演。中山間地域の過疎集落は20%が地域運営組織に包括されており「消滅の可能性は小さい」と指摘し、小さな拠点づくりのポイントに①攻めと守りを常にセットで考える②突飛な「切り札」はなく、従来の地域づくりと連続性をもつこと ― などを挙げた。その上で、公民館運動の再生や誇りの再生、「鏡効果」をもつ都市・農村交流の必要性を強調した。このほか、高知県梼原町、宮城県丸森町の筆甫地区、島根県海士町、㈱良品計画が各地域での取組み事例を紹介した。 一方、期限切れとなる現行過疎法に代わる新法が3月26日、成立した。目的を「自立促進」から「持続的発展」に変更、新型コロナウイルス感染症による人口密集リスク顕在化を踏まえ東京一極集中の是正と地方分散の加速も目指す。対象団体を現行より3団体増の820市町村とし、補助率嵩上げなどの措置を講じる。これを受けて、全国知事会・同市長会・同町村会はそれぞれ評価するコメントを発表。「新法を推進力に持続可能な地域づくりに取り組む」(町村会)とした。 ◎GIGAスクール端末の整備、43団体で遅れ ― 文科省 文科省は3月17日、2021年度からスタートするGIGAスクール構想に向けたICT環境整備状況をまとめた。1人1台の端末整備は3月末にほぼ全団体が整備を終えるが、43団体は4月以降となる。うち、盛岡市や宮崎市、福島県矢祭町など21団体は1学期中、名古屋市や足立区、沖縄県久米島町など22団体は2学期以降としている。背景に、入札不調、受給逼迫などもあるが、萩生田文科相は3月23日の記者会見で「計画を大幅に前倒ししたが、(4月スタートは)1年前から言ってきた。首長の能力が問われる」と述べた。また、3月12日付けで各自治体に「本格運用時チェックリスト」「児童生徒の目の健康の配慮事項」「保護者等と事前確認しておくべきポイント」を通知した。 また、デジタル教科書のあり方を検討していた同省の検討会議は3月17日、中間報告をまとめた。今後の社会ではICTの情報活用能力が必須になるとし、デジタル教科書のメリットに動画や音声等の併用などを挙げた上で、小学校教科書の改訂時期の2024年度をデジタル教科書本格導入の契機とすべきだと提言した。これを受けて、同省は普及と実証実験を進める。 ◎自治体の計画策定義務付け条項なお微増 ― 内閣府 内閣府は3月19日、自治体の計画等策定義務付けなどの法律条項の実態を発表した。2020年12月末現在、全体で505条項あり、うち「義務」が202条項、「努力」が87条項、「できる」が217条項だった。義務付け規程は、11年の第1次分権一括法の施行等で減少したが、その後の規定創設などで微増、「できる」規定は増加が続いている。また、法令・運用上で財政支援の要件としている計画策定規定も「できる」規定の4分の3を占めるなど増加傾向が続いている。分野別では、環境や農業、厚生関係で策定の義務付け規定が多い。このほか、計画の策定に当たって盛り込むべき事項など内容の義務付け規定が全体で1,735条項、計画等の手続きに関する規制も全体で1,809条項あった。 また、政府は3月5日、第11次地方分権一括法案を閣議決定した。地方からの提案募集方式に基づく提案を法制化したもので、義務付け・枠付けの見直しなど8事項(9法律)を改正する。具体的には、転出届・印鑑登録の廃止・申請事務を郵便局でも取り扱えるようにするほか、地縁団体について不動産等の保有の有無にかかわらず許可できるようにする。 ◎地域唯一の食品店事業の承継で実態調査 ― 総務省 総務省は3月19日、過疎地や団地等で事業承継している122事例の実態調査結果を発表した。地域で唯一のスーパー等の閉店が相次いでいるが、事業撤退後から事業開始までに41事例で1年以上の空白があったほか、事業承継後も52事例では収支が赤字など厳しい環境が続く。その一方で、様々な工夫で事業を承継している事例集もまとめた。具体的には、①地域住民の出資を募り自治会がスーパーを引き継ぐ②町で唯一のスーパー閉店を受けて、町が出資する第三セクターによるスーパーなどの複合施設を開店③介護サービス事業者がデイサービス施設とスーパーを併設④大手コンビニ会社と団地管理会社が連携して「団地特化型コンビニ」を開店 ― などの事例が紹介されている。 また、総務省は3月23日、2020年度の地域おこし協力隊の活動状況を発表した。隊員数は5,464人で前年度より115人増加したが、受入自治体は1,165団体で同6団体減った。20年3月末までに任期満了した隊員は累計6,525人で、うち51%が同一市町村内に、12%が近隣市町村に定住。同隊員のうち41%が就業、13%が就農・就林、また39%は起業していた。 ◎最低賃金を早期に1,000円目指す ― 菅首相 政府の経済財政諮問会議は3月22日、マクロ経済運営と活力ある地方の実現をテーマに審議。菅首相は「春闘のモメンタムを中小企業・地方に広げ、非正規労働者の処遇改善の構造的課題へ、最低賃金を早期に全国平均1,000円とすることを目指す」と表明。また、東京から地方への転出の動き加速のため、①大企業の人材を地方の中小企業に派遣するため金融機関・商社から1万人規模の人材をリストアップ②人材を自治体に派遣して地元の企業を支援する仕組みを始める ― との方針を示した。併せて、10兆円規模の大学ファンドの設計を具体化する方針も示した。諮問会議では、さらに具体策を詰め、夏の「骨太の方針」に盛り込む。 一方、文科省は3月19日、今年3月の大学・高校卒業予定者の就職内定率を発表した。大学生(2月1日現在)は89.5%で、前年同期に比べ2.8ポイント低下。同時期での前年同期を下回るのは2011年以来。新型コロナウイルス感染症による企業の採用抑制などの影響とみられる。高校生(1月末現在)は93.4%で、同1.4ポイント増加、過去最高となった。 ◎4月から県内限定のGoToトラベル開始 ― 観光庁 観光庁は3月26日、「地域観光事業支援」の実施を発表した。2回目の緊急事態宣言の全面解除を受け、感染状況ステージ2以下の都道府県が行う「県内」の割引旅行に対し1人1泊5,000円を補助。併せて、お土産店・飲食店支援にも2,000円補助する。GoToトラベル再開までの措置で、当面4月1日から5月末が対象。全国知事会は同日、観光など厳しい地域経済に対する一歩前進した支援策となると評価するコメントを発表した。また政府は3月16日、新型コロナの影響を受けた非正規雇用労働者への緊急対策を決めた。 一方、厚労省は3月25日、「テレワークの適切な導入・実施推進のためのガイドライン」を公表した。ポストコロナに対応した導入・定着に向け、テレワーク導入や労務管理上の留意点、セキュリティへの対応などを解説。なお、国交省が3月19日発表した雇用型就業者のテレワーク人口実態調査によると、実施率は昨年の緊急事態宣言中が20%と高く、以降16%台と続き、82%が今後も続けたいと回答。一方、課題では「勤務時間が厳しくなった」(47%)などの声があった。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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