地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年3月中央の動き


中央の動き


◎少人数学級等で学校施設のあり方検討へ ― 文科省
 政府は2月2日、公立義務教育諸学校の学級編成・教職員定数の標準法改正案を閣議決定した。小学校の学級編成標準を現行の40人から35人に来年度から段階的に引き下げる。また、文科省は2月15日、新しい時代の学校施設検討部会を発足させた。少人数指導や1人1台端末と遠隔・オンライン教育などに適合した教室サイズ・教室用家具・設備、ポストコロナ時代の学校施設のあり方などを検討。併せて、人口減少下での他の公共施設との複合化・共用化も検討する。
 一方、文科省は2月4日に開催された国交省の国土審議会企画部会で「廃校活用の現状と可能性」を説明した。少子化のため毎年約470校が廃校となり、うち75%は社会体育・文化・福祉施設などに活用されているが、20%は放置されておりその維持管理費が自治体の負担となっているとの実態を報告。併せて、廃校活用で維持費減や地域活性化などのメリットを挙げ、自治体と廃校を「使いたい」企業等をマッチングする「みんなの廃校プロジェクト」の取組を紹介した。


◎デジタル庁などデジタル関連法案を閣議決定 ― 政府
 政府は2月9日、デジタル関連6法案を閣議決定した。「デジタル社会形成基本法案」は、「基本理念」に利用機会等の格差是正、個人・法人の権利利益の保護などを掲げた上で、国・自治体・事業者の責務を規定。さらに、施策策定の基本方針に多様なデータの標準化、国民による国・自治体情報の活用、個人情報の保護などを挙げた。「デジタル庁設置法案」では、同庁の分担管理事務などを規定。また、「デジタル社会形成関係法の整備法案」では個人情報保護関係3法の統合、自治体の個人情報保護制度の個人情報保護委員会への一元化、マイナンバー活用などを盛り込んだ。
 一方、政府のサイバーセキュリティ戦略本部は2月9日、2021年度の次期サイバーセキュリティ戦略の基本的考え方を決めた。現行戦略策定後に顕在化した新たなサイバーセキュリティ脅威や、①新型コロナウイルス感染症など経済社会の環境変化②クラウドサービスの利用拡大と5Gの利用開始③安全保障環境の変化 ― などに重点的に取組む。また総務省は2月15日、テレワーク導入拡大を受けて「テレワークセキュリティガイドライン」改訂(第5版)を発表した。
◎所有者不明土地対応へ移転登記を義務化 ― 法制審
 法務省の法制審議会は2月10日、所有者不明土地解消に向けた民法・不動産登記法改正要綱案を答申した。増加する所有者不明土地に対応するため、所有者が死亡した場合の所有者移転登記を義務化(3年以内)し、違反には10万円の過料も科す。また、相続人の申出のみで登記を認める「相続人申告登録」の創設や遺贈・法定相続分の登記手続、所在が分からない登記抹消手続の簡略化も盛り込んだ。併せて、相続土地の国有化を認めるほか、裁判所の管理命令で選任管理人が利用・処分できる制度も創設する。また、政府は2月24日、所有者不明土地等対策の最新の工程表を発表した。
 また、法制審の親子法制部会は2月9日、民法改正の中間試案をまとめた。離婚後300日以内に生まれた子は元夫の子と見なす「嫡出推定」を避けるため出生届を出さずに無戸籍者となる事例が少なくないため、出生時に母が再婚していれば再婚後の夫の子と見なす。法務省によると、無戸籍者(2020年9月)は1,211人で、うち母が離婚後300日以内に結婚し出生した子は289人だった。このほか、児童虐待で問題となった民法の親の「懲戒権」の見直しでは「規定削除」「体罰禁止を明文化」などの案を示した。
◎コロナワクチン接種で自治体向け説明会 ― 政府
 政府は2月12日、「まん延防止等対策措置」創設など新型インフルエンザ等対策特別措置法改正と政令の施行通知を各自治体に通知した。また、2月17日に第3回ワクチン接種体制確保に関する自治体向け説明会をWeb開催した。接種対象は「市町村区域内に居住する16歳以上の者」で、期間は2月17日から2022年2月28日とし、接種順位も示した。さらに、接種会場について地域実情に応じた対応を求めるとともに、複数市町村による接種も認めた。接種クーポン券の発送は高齢者が3月中旬以降、高齢者以外は5月以降としたが、「十分なワクチン供給量が見込めない」ためスケジュールが遅れる可能性も示した。また、厚労省は2月18日、ワクチン接種診療所の開設許可は事後でも認めるほか、地方自治法の「公の施設の設置・管理条例」も定める必要はないことを各自治体に通知した。
 一方、全国知事会など地方3団体は2月22日、ワクチン接種で緊急提言を発表した。経験したことのない「全国民対象のワクチン接種」には万全の準備が必要だとし、①高齢者の優先接種ではワクチン供給体制を踏まえ現実的に丁寧に進める②国は直ちに今後のスケジュール等の目安を示す ― よう求めた。
◎今後の主権者教育で最終報告案 ― 文科省
 文科省は2月19日、主権者教育推進会議に「今後の主権者教育のあり方」(最終報告案)を示した。選挙権年齢引下げ後に実施された3回の国政選挙では投票率が51%、48%、36%と低下。このため、主権者教育の必要性を改めて強調。政治的中立性を過度に意識せずに異なる意見を議論し合意形成する過程が重要だとし、①各学校段階でモデル校の実践研究②副教材や教師向け指導資料の作成、教師用の研修動画の配信③家庭での主権者教育の重要性の普及啓発④PTAや自治体、社会教育関係団体、企業、NPOなど多様主体による地域課題解決への取組機会の増大⑤主権者教育に向けたメディアリテラシー育成 ― などを提言した。
 また、文科省は2月15日、児童生徒の自殺予防調査研究協力者会議を発足させた。2020年に自殺した児童生徒は479人で、ここ3年の330人台に比べ1.5倍に増加。自殺の要因では「進路の悩み」「学業不振」「親子関係の不和」などが多い。このため、会議では①SOSの出し方など自殺予防教育のあり方②児童生徒が抱える悩みや困難の分析 ― などを検討する。
◎大学の入学時期柔軟化など報告 ― 全国知事会
 全国知事会は2月22日、これからの高等学校教育のあり方研究会報告書をまとめた。各高校が教育課程を柔軟に編成することで高校の魅力化・特色化を図るとともに、卒業時期・就業年限の柔軟化も提案。併せて、大学の入学時期と企業等の採用時期も柔軟化し、グローバル化に対応するため4月・秋季にも入学できることが望ましいとした。同時に企業・官公庁の通年採用も拡大すべきだとした。これを受けて、「これからの高等学校教育のあり方の提言」をまとめたが、大学の「秋季入学」は提言から外した。
 一方、文科省の中央教育審議会大学分科会は2月9日、「教育研究機能と高度化を支える教職員と組織マネジメント」をまとめた。目指すべき方向性に「大学内外の人的・物的リソースを様々に組み合わせ、教育・研究・社会貢献を実行する」を掲げ、①教育研究活動では学生を主役に教員間の連携、TA・RA制度活用を通じた活性化②教員のダイバーシティ、評価の実質化、高度専門職人材の重視③事務職員の役割明確化とマネジメント層への参画推進 ― などを提言した。
◎コロナ禍の支援策のPR方策など検討へ ― 厚労省
 厚労省は2月22日、厚労副大臣による「コロナ禍の雇用・女性支援プロジェクトチーム」(PT)を発足させた。コロナ禍で特に女性・非正規で雇用が悪化、女性自殺者も多いため、政府の支援策を周知する。「雇用・人材開発支援」をテーマに、支援制度の認知・利用プロセスの「気づき・知る・使う」をめぐり議論した。引き続き①生活支援・自殺防止②職場環境改善・子育て支援 ― について意見交換する。なお、経団連が1月29日発表した緊急事態宣言下のテレワーク実施状況では、9割の企業がテレワークを実施、11都府県で87万人の出勤を削減(削減率約65%)した。
 一方、政府は1月29日、国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進の取組指針(2021~25年度)を決めた。国家公務員の受験者数半減・若手職員退職の倍増などを「公務員のサステナビリティ危機」と捉え、①テレワーク推進のハード環境・実施環境の整備②業務廃止を含めた業務見直しを幹部・管理職の職務に明確化③勤務時間管理のシステム化 ― などを明記した。
◎高齢化で増加続く死亡数が11年ぶり減少 ― 厚労省
 厚労省は2月22日、2020年の人口動態統計速報を発表した。出生数は87万2,683人、前年比2万5,917人(2.9%)減で過去最低を更新。2年連続の90万人割れ。一方、高齢化で増加を続けていた死亡数は138万4,544人、前年比9,373人(0.7%)減と11年ぶりに減少した。また、婚姻件数は53万7,583組で前年より7万8,069組(12.7%)減少、1950年以来の減少率となった。いずれもコロナ感染の影響がうかがわれる。
 一方、総務省は1月29日、2020年の住民基本台帳の人口移動報告を発表した。都道府県間移動者は246万3,992人で前年より4.1%減少。転入超過は8都府県、39道府県が転出超過だった。また、東京圏は9万9,243人の転入超過だが、前年より4万9,540人縮小。うち東京都は5月に2013年以来初の転出超過となったが、以降も連続して転出超過が続いている。市区町村間移動者は525万5,721人で前年より2.7%縮小。うち453市町村(26%)で転入超過、1,266市町村(74%)が転出超過。転入超過数は大阪市1万6,802人をトップに、東京都特別区、横浜市、さいたま市、札幌市などで、町村では長野県軽井沢町、茨城県阿見町、熊本県菊陽町、神奈川県寒川町、愛知県東浦町などで多い。
◎グリーン・ニューディール具体化検討へ ― 諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は2月24日、①マクロ経済運営②グリーン・ニューディール ― を議論。席上、菅首相は、企業収益が前年を約2割上回ったとし、景気の好循環実現のため引き続き「賃上げの流れ継続」を要請した。併せて、年額90兆円・850万人の雇用創出効果が見込まれるグリーン社会実現に取組む必要性を強調した。これを受けて、民間議員が2050年温室ガス排出量ゼロに向けたグリーン・ニューディールの推進に関連して、経産省と環境省の「経済政策・環境政策の一体推進が不可欠だ」と指摘。その上で、①市場メカニズムを用いる経済的手法(カーボンプライシング)を成長戦略に資する形で活用②エネルギーの地産地消、脱炭素化等のインフラ整備、林業の成長産業化など地域活性化と一体となった推進 ― を提案した。
 なお、環境省は2月1日、中央環境審議会の「カーボンプライシング活用小委員会」を再開。経産省も2月17日に「カーボンニュートラル実現のための経済手法あり方研究会」を発足させた。菅首相の「カーボンニュートラル宣言」を受けたもので、カーボンプライシング導入の具体的な制度設計などを検討する。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)