地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年2月中央の動き


中央の動き


◎都道府県・政令市の人事委員会の給与勧告出そろう
 47都道府県・20政令市の人事委員会の2020年度給与勧告が1月15日、出そろった。月給は、公民格差が小さいため全都道府県と18政令市が人事院と同様に据え置きを勧告。仙台市・名古屋市はそれぞれ0.12%、0.24%の引下げを求めた。ボーナスも人事院(0.05か月引下げ)と合わせ、41道府県と19政令市が0.05か月、東京都、奈良県、浜松市は0.10か月の引下げを求め、岩手、高知、宮崎、沖縄の4県は改定を見送った。
 一方、総務省は1月7日、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のための取組を各自治体に通知した。再度の緊急事態宣言を受けて、必要な行政機能維持を前提に在宅勤務(テレワーク)やローテーション勤務等で出勤者の削減などを要請。また、1月13日にはテレワーク等による出勤回避について「目標を設定し計画的に取り組む」よう要請。同実施状況を近く調査する。なお、同省のテレワーク取組状況調査によると、昨年10月時点では全都道府県と17政令市が導入しているが、市町村は342団体(20%)にとどまる。未導入の理由では「情報セキュリティ確保に不安」「導入コストがかかる」などが挙げられた。


◎企業の農地取得の全国展開を見送り ― 特区諮問会議
 政府の国家戦略特別区域諮問会議は1月15日、養父市で認めている民間企業による農地取得の特例措置の全国展開を見送り、改めて同特例措置を2年間延長する法案の提出を決めた。来年度から特例制度のニーズと問題点の調査を実施、その結果に基づき全国への適用拡大について調整するとした。また、農水省は1月22日、長期的な土地利用のあり方検討会と新しい農村政策のあり方検討会の合同会議を開催。多様な土地の利用と合意形成手法、規制緩和などを議論した。
 一方、内閣府は1月15日、食生活に関する世論調査を発表した。米の消費がコロナ感染症発生前と比べ「増加した」が18%で、「減少した」の4%を大きく上回った。理由では「家庭で炊飯などの機会が増えた」「おにぎりなど中食の回数が増えた」などが挙げられた。なお、米の購入で重視するのは「価格」64%、「産地」56%、「品種」53%の順だった。また、食品ロス削減の工夫では「食べ残しが出ないよう心がけ」63%、「買ってから日がたっても自分の判断で食べる」51%、「調理や献立を工夫」49%などが続く。
◎執行部の反問権を156市議会で行使 ― 全国市議長会
 全国市議会議長会は1月18日、2019年の市議会活動の実態調査結果を公表した。「通年会期」の採用は13市、28市は定例会を条例で「年1回」としていた。また、「一問一答方式」を678市(83%)が規定し、725市(89%)で実施。議員間の自由討議は、521市(64%)が規定し、321市(39%)で実施。執行部の反問権は321市(39%)が条例・規則で規定、156市(19%)で執行部が行使した。一方、政務活動費は716市(88%)で交付。議員1人当たり交付月額は、411市(58%)が1万~3万円未満、118市(17%)が3万~5万円未満だが、10万~20万円未満が47市(7%)、30万円以上も14市(2%)ある。なお、523市(83%)がホームページで収支報告書、176市(28%)で会計帳簿を公開している。
 このほか、議員提出による議案は条例案が710件、議決案が599件、意見書案が3,821件など合計7,299件。うち5,777件が可決、1,080件は否決された。具体的には議会基本条例、政治倫理条例などのほか、手話言語条例(高砂市など)、がん対策推進条例(松山市など)、ハラスメント根絶条例(川越市)、振り込め詐欺等被害防止条例(坂戸市)、おもてなし条例(八幡浜市)などが提案され、可決されている。
◎男性の育児休業取得促進策を提言 ― 厚労省審議会
 厚労省の労働政策審議会は1月18日、男性の育児休業取得促進策の建議をまとめた。昨年の「少子化社会対策大綱」を踏まえたもので、子どもが生まれてから8週間以内に4週間の休みを2回に分けて取得できるよう提言した。また、育児休業の申請期限を「1か月前」から「原則2週間前」に短縮。併せて、大企業には育児休業の取得率公表も義務付ける。同省は、今通常国会に関係法案を提出する。また、同審議会雇用保険部会は1月27日、男性の育児休業給付制度の報告をまとめた。新制度創設に対応して①子の出生後8週間以内に4週間までの休業に支給する新給付金を創設②同一の子に2回の育児休業まで支給する ― などとした。
 一方、総務省が昨年12月に公表した2019年度の地方公務員(男性)の育児休業取得率は前年より2.4ポイント上昇したが、8.0%にとどまる。内訳は、都道府県5.5%、政令市14.7%、市町村9.7%と格差が大きい。なお、国家公務員は前年度より6.4ポイント上昇の28.0%で過去最高となった。
◎財政試算でPBの黒字化は2029年度に ― 内閣府
 政府の経済財政諮問会議は1月21日、今年初の会合を開き、①今年前半の検討課題②中長期の経済財政試算 ― を議論。検討課題では、感染拡大防止を最優先し、テレワークや地方移住などコロナを契機に芽生えた動きを定着・拡大するため人材の再教育・円滑な労働移動と新たなセーフティネット整備を一体として進めるとした。また、中長期試算では、名目3%の「成長実現ケース」で基礎的財政収支(PB)の黒字化は2029年度とした。なお、3次にわたる補正予算編成を反映し、PB赤字が20年度は69兆4,000億円に拡大した。
 一方、1月18日に通常国会が開幕。所信表明と財政・経済各演説が行われた。菅首相は所信表明演説で、「感染症対策の決め手」となるワクチンの早期接種開始の方針を強調。併せて「暮らしと雇用を守る」と強調したが、「経済との両立」の言及は避けた。西村経済相はデジタル・グリーン・ヒューマンの「3つのニューディールが未来の扉を開く」と指摘。麻生財務相は、25年度のPB黒字化目標の達成に向け「引き続き、これまでの歳出改革の取組を継続し、経済再生と財政健全化の両立を図る」と従来の方針堅持を強調した。
◎地域のデジタル化の推進など要請 ― 総務省
 総務省は1月22日、全国都道府県財政課長・市町村担当課長会議を開き、「2021年度の地方財政の見通し・予算編成上の留意事項」(事務連絡)を示し、担当課長が説明した。20年度の地方税収が新型コロナウイルス関連で大幅減収となるため法改正で減収補てん債の対象税目を大幅に拡充するとし、各自治体に資金の円滑確保へ活用を要請。また、21年度の地方交付税総額を増額(前年度比、道府県分2.5%増、市町村分2.0%増)したとし、コロナ対策にもなる地域のデジタル化対応などへの積極的な取組を要請した。
 具体的には、①地域デジタル社会推進費を21・22年度に2,000億円計上、自治体の行政情報システムの標準化等を全額国費で補助する②GIGAスクール推進のための学校のインターネット整備の交付税措置を充実、新JIS規格への机整備も交付税措置する③緊急自然災害防止対策事業では流域治水対策などを対象事業に追加した上で事業期間を25年度まで継続④緊急防災減災事業では避難所の新型コロナウイルス感染症対策・3密対策経費を対象に追加⑤新型コロナ感染症対応へテレワークなど柔軟な勤務体制確保と防疫等作業手当の特例運用や今年1月の緊急事態宣言を踏まえた出勤回避等の取組 ― などを要請した。
◎避難行動要支援者の個別計画に地財措置 ― 総務省
 総務省は1月22日、避難行動要支援者の個別避難計画策定に地方財政措置することを明らかにした。災害対策基本法で市町村に避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられているが、個別計画の策定は「望ましい」とされ、その策定は12%(19年6月)にとどまる。しかし、最近の気象災害の激甚化で高齢者の被害が増加。内閣府作業部会が昨年12月に個別計画の策定を努力義務とする報告を提出。これを受けて小此木防災担当相は1月8日の記者会見で、「通常国会に災害対策基本法等を改正する準備を進め、今年の梅雨期からの運用開始を目指す」と述べた。地財措置では、「個別避難計画」(仮称)作成経費を地方交付税措置する。
 一方、国交省は1月18日、特定都市河川浸水被害対策法等改正案を今通常国会に提出すると発表した。都市部での洪水等の防災・減災対策推進のため、指定都市河川の指定対象を拡大し、①特定都市河川流域での一定の開発行為の規制②雨水貯留浸透施設の設置計画の認定制度 ― を導入・創設する。
◎情報システム標準化で法案概要を示す ― 総務省
 総務省は1月22日の全国都道府県財政課長等会議で、地方公共団体情報システムの標準化法案の概要を示した。今通常国会に提出する。政府が同標準化の基本方針を全国知事会等の意見を聴取した上で作成。対象は児童手当、住民基本台帳、個人住民税、就学、介護保険、児童扶養手当など17事務で、政令で規定する。併せて、政府がデータ連携やクラウド利用などの基準(省令)も策定。各自治体に期間(2025年度)内の移行を義務付ける。個別自治体の独自事務追加も可能とする。同法施行はデジタル庁発足と同じ9月1日。
 一方、武田総務相は1月19日の記者会見で、マイナンバーカードの交付枚数が「今年1月17日時点で人口の約25%と、さらなる申請促進強化の取組が必要」と述べ、補正予算を活用した臨時窓口設置など円滑な交付が行える体制整備を市町村に促していきたいと強調した。なお、第3次補正予算案では自治体情報システムの標準化・共通化環境整備に1,508億円、マイナンバーカード普及対応策強化に1,032億円などを計上。
◎令和の日本型学校教育で答申 ― 中央教育審議会
 文科省の中央教育審議会は1月26日、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」を答申した。「ICTはこれからの学校教育を支える基盤的なツール」と指摘し、GIGAスクール構想で配備される1人1台の端末の活用促進と、ICTの活用に向けた教師の資質・能力の向上の必要性を強調した。また、小学校高学年から「教科担任制」の導入も打ち出した。このほか、35人学級の実現に関連して、「児童生徒の減少による学校規模の小規模化を踏まえた学校運営」として、小中一貫教育の導入や学校施設の適正規模・適正配置の推進、他の公共施設との複合化・共用化など計画的・効率的な施設整備も提言した。
 一方、政府は来年度から35人学級実現に向けて義務標準法を改正するが、全国市長会・全国町村会は1月5日、「少人数教育の推進に関する意見」を公表した。小学校の学級35人への引下げを評価した上で、①義務標準法改正では経過期間など柔軟な学級編成が可能となるよう法令等で明記②少人数教育を可能とする教職員確保、教職員定数の拡充③教員の負担軽減のため特別支援教育支援員などの財政措置拡充 ― などを求めた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)