月刊『自治総研』
2021年1月中央の動き
中央の動き |
◎気象災害・老朽化の対応へ5年間で15兆円 ― 政府 ◎新過疎法案の施策大綱を了承 ― 自民党 自民党の過疎対策特別委員会は12月11日、今年度で期限を迎える現行過疎法に代わる新法案の「施策大綱」を了承した。新法案名は「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法案」で、今通常国会に超党派で提案する。期間は現行法と同様10年間で、指定要件では人口減少率の起点を現行の1960年から75年に変更、過疎の指定単位も見直すが、激変緩和措置と経過措置も講じる。この結果、約40団体前後が対象から除外されるが、新規指定も同数程度と想定されている。 一方、内閣府は11月30日、小さな拠点形成の実態調査結果を発表した。2020年5月時点で、約20%に当たる351市町村で市町村版総合戦略に位置付ける小さな拠点が1,267か所あった。うち、対象とする集落生活圏の範囲は小学校区、旧小学校区がそれぞれ30%で、283か所(22%)は地域再生計画に位置付けている。また、都市部との公共交通は96%、周辺集落との公共交通は83%で形成されており、都市部との交通は民営バスが、周辺集落との公共交通は公営バスが多い。 ◎地方分権改革20年テーマに議論 ― 都市問題公開講座 第50回「都市問題」公開講座が12月12日、「分権から自治へ ― 地方分権改革から20年」をテーマに都内で開催された。基調講演で西尾勝東大名誉教授は、第1次分権改革が実現した背景に①地方分権推進の国会決議(1993年)と行政改革、政治改革などの時流に乗った②改革の焦点を「国の関与の廃止・縮小」とし、「さみだれ勧告」した ― ことを挙げた。その結果、機関委任事務制度の廃止を実現したが、税源移譲は「三位一体改革」で挫折。さらに、「行革の時流から市町村合併に触れざるを得なくなった」との背景を振り返った。また、神野直彦東大名誉教授は新藤義孝元総務相の「国民から地方分権を求める声がない」との指摘を受けて、住民主導の分権改革「提案募集方式」を始めた経緯を紹介。併せて、コロナ危機克服には国民の連帯が必要だと強調した。 パネル討論では、清原慶子前三鷹市長が分権改革の成果に「従うべき基準の参酌基準化」などを挙げる一方、「国と地方の協議の場」活性化の必要性を強調。また、山田啓二前全国知事会長は、人口減少、格差拡大で分権は転換を迎え、第32次地制調答申から「分権」の文字も消えたと指摘。コロナ禍で「解放型自治・共生型自治による新住民自治の時代」を迎えるとした。これを受けて、西尾氏が「今後も地方分権改革の成果を自治体の現場で活かすことが必要だ」と訴えた。 ◎コロナ対応へ法改正など要請 ― 地方六団体 国と地方の協議の場が12月14日、テレビ会議で開催された。冒頭、菅首相が「『活力ある地方を創る』は菅内閣の最重要施策だ」と述べ、事業規模73.6兆円の新たな経済対策の実施に全力を挙げると強調。これを受けて、地方六団体側は、新型コロナウイルス臨時交付金の増額・弾力運用を求めるとともに、事業者への協力要請の実効性担保のため営業停止処分や店名公表、罰則などの関係法改正を要請。このほか、①地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額の確保・充実②田園回帰、関係人口の拡大や高速道路等のミッシングリンク解消③自治体の意見を反映した自治体DX推進計画の策定 ― などを要請した。 一方、政府は12月8日、新型コロナ感染拡大に対する新たな総合経済対策を決定した。事業規模73.6兆円で、自治体への地方創生臨時交付金を1.5兆円拡充するほか、①医療機関向けの緊急包括支援交付金の増額②脱炭素化の研究開発支援に2兆円の基金創設③GoToトラベルの6月末への延長 ― などを盛り込んだ。 ◎ポストコロナへ食料安全保障を強化 ― 政府 政府は12月15日、「農林水産業・地域の活力創造プラン」改訂を決定した。2030年の輸出総額5兆円への輸出拡大と新たにポストコロナに向けた食料安全保障確立を打ち出した。具体的には、食料・農林水産業の生産性向上・持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料戦略システム」を今年5月にも策定する。また、政府は12月8日、TPP関連政策大綱も改訂した。一方、農水省は12月7日、就農のために必要な情報を一元的に閲覧できる就農情報ポータルサイトを開始。農山漁村地域づくりに取り組む市町村からの相談を受けるホットラインも開設した。 また、農水省は2021年度予算案を発表した。総額2兆3,050億円、前年度比0.3%減だが、2020年第3次補正予算案に1兆519億円を計上している。海外の販売力強化に30億円(3次補正37億円)、スマート農業総合推進事業に14億円(同62億円)、農業農村整備事業(公共)に3,333億円(同1,855億円)などを計上した。 ◎財源不足が10兆円に倍増 ― 2021年度の地財対策 総務省は12月21日、2021年度地方財政対策と同年度の総務省予算案を発表した。地方交付税(出口ベース)は前年度比5.1%増の17兆4,385億円を確保、一般財源総額(交付団体ベース)は同0.4%増の61兆9,932億円とした。地方財政計画の規模は同1.0%減の89兆8,400億円となる。一方、地方税が38兆802億円、同7.0%の大幅減で、財源不足は10兆1,222億円と前年度より倍増。地方交付税の臨時財政対策特例加算や臨時財政対策債の増発などで補てん。このため地方債依存度は12.5%(前年度10.2%)程度に上昇、21年度末の借入金残高は190兆円程度に膨らむ。このほか、①「地域デジタル社会推進費」2,000億円を創設②新型コロナ対応強化へ保健師を現行の1.5倍の約900人増員③自治体の経営・財務マネジメント事業創設 ― などを盛り込んだ。これを受けて地方六団体は同日、地方一般財源総額の確保や減収補てん債の対象税目追加などを評価する一方、財源不足は本来の地方交付税率の引上げで対処すべきだとのコメントを発表した。 21年度総務省予算案は総額16兆5,952億円(前年度比1.0%減)で、デジタル変革加速による「新たな日常」構築を前面に打ち出し、マイナンバーカードの普及・利活用促進1,055億円(前年度1,601億円)、サイバーセキュリティ総合知的・人材育成基盤構築7億円(新規)、災害現場での無線システム・公共安全LTE導入の検証18億円(新規)、自治体情報システムの標準化・共通化4.1億円(同4.2億円)、全国的なテレワーク推進2.7億円(同2.6億円)などを計上した。 ◎「適正化」で会計年度任用職員が大幅増 ― 総務省 総務省は12月21日、会計年度任用職員制度の調査結果を発表した。職員数(2020年4月)は62万2千人で4年前(一般職非常勤職員)に比べ45万5千人、2.7倍増えた。同制度発足に伴う「任用の適正化」で臨時的任用職員が26万人から6万8千人に、特別職非常勤職員は21万6千人から4千人に大幅減少した。なお、退職手当等を負担しないための「空白期間」設定は解消されたが、制度趣旨に沿わない報酬減額の団体もあった。同省は、自治体に①一律に応募要件の制限を設けない②再度任用時の勤務条件の明示③常勤職員の給料を基礎とする ― などを同日付けで通知した。 一方、超党派の議員立法「労働者協働組合法」が12月4日に成立した。組合員が出資し各意見を反映した組合事業を行うとともに、組合員自らが事業に従事する。また、届出だけで設立できるほか、①組合員の議決権・選挙権は出資口数でなく平等②組合は従事する組合員と労働契約を締結③営利を目的とした事業や労働者派遣事業は行えない ― としている。 ◎デジタル庁などデジタル改革基本方針を決定 ― 政府 政府は12月21日、デジタル・ガバメント閣僚会議を開き、デジタル改革の基本方針を決めた。9月に発足するデジタル庁は首相をトップに、国の情報システムの基本方針を策定、予算も一括計上する。また、自治体のデジタル基盤の標準化・共通化の企画・総合調整とマイナンバー制度全般の企画立案を担うほか、地方公共団体情報システム機構を地方と共同管理。さらに、サイバーセキュリティの専門チームも設置する。 一方、内閣府は12月18日、自治体の押印見直しマニュアルを公表した。政府は、国の行政手続約1万5,000件の99%で押印を廃止するが、地方にも法令等や条例・慣行で押印を求めている全手続の見直しを要請。マニュアルでは、押印見直しの判断基準に①押印を求める趣旨の合理性の有無②押印を求める趣旨の代替手段の有無 ― などを挙げ、「登記・登録印によらない押印は基本的に廃止」との方針を示すとともに、自治体での押印見直し手順などを示した。 ◎コロナ禍を地方移住の契機に ― 第2期総合戦略改訂 政府は12月21日、第2期まち・ひと・しごと総合戦略2020改訂を閣議決定した。東京一極集中の是正が進まない中、改訂版では新型コロナウイルス感染症を契機に高まった地方移住への関心を地方移転につなげる施策を盛り込んだ。具体的には、①地方創生テレワーク推進で地方分散型の地域社会を実現②地方国立大学の特例的な定員増と自治体・大学とのマッチング推進③企業版ふるさと納税活用で専門知識・ノウハウをもつ企業人材の自治体への派遣 ― などを進める。 一方、国交省は12月14日、企業等の東京一極集中懇談会の取りまとめを発表した。東京一極集中の要因に就学・就職、子どもの教育などを挙げるとともに、東京圏の高齢者増加でケアする若者世代をさらに東京圏に呼び寄せる可能性も危惧。東京一極集中是正のため、①東京圏大学の単位を地方でも取得できる制度②地方の賃金引上げなど地方で就学・就職できる環境整備③リモートで仕事を地方や東京郊外で行う取り組み推進 ― などを提案。併せて、東京に諸機能が集積するリスクの認識共有も求めた。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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