地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年12月中央の動き


中央の動き


◎幼児から高校まで主権者教育の連携を ― 文科省
 文科省の主権者教育推進会議は11月2日、中間報告をまとめた。選挙権年齢と成年年齢の引下げを踏まえ、今後の主権者教育では幼児期から高校段階までの学習の円滑な接続が必要だとし、児童生徒向け副教材や教師用指導資料の開発などを提言。また、家庭・地域の主権者教育のため親子連れ投票の推進や親子参加型の行事実施などを提案。併せて、モデル校で当事者意識を持つための指導方法の開発も求めた。
 また、文科省は11月4日、学校給食費の公会計化の進捗状況を発表した。教員の業務負担軽減の一環として学校給食費の徴収・管理業務を学校(教員)でなく自治体が自らの業務として実施する公会計化を要請しているが、2019年12月1日現在、実施しているのは438団体(26%)で、準備・検討は524団体(31%)、724団体(43%)は「実施を予定していない」と回答した。実施団体は群馬県の76%をトップに、岩手、秋田、千葉、山梨、高知、沖縄の各県も50%台と高いが、富山、宮崎の両県はゼロだった。


◎温暖化対策推進法改正へ検討会発足 ― 環境省
 環境省は11月5日、地球温暖化対策推進の制度検討会を発足させた。菅首相の「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ」宣言を受けて、検討会では①地域の脱炭素化促進プロジェクトの合意形成推進など自治体実行計画制度の見直し②企業のグリーン投資普及のための算定報告公表制度の活用 ― などを検討。来年の通常国会に温暖化対策推進法改正案を提出する。また、同検討会に示された自治体の省エネ取組実態では「二酸化炭素排出実質ゼロ」宣言自治体が東京都、川崎市、取手市、北海道ニセコ町、熊本県西原村など11都道府県、93市区、43町、10村あり、横浜市では東北12市町村から再エネ電力購入などの取組もある。その一方で、再エネ事業者と周辺住民との間で景観悪化・騒音をめぐりトラブルが増え、再エネ設備の導入を条例で規制する自治体の急増も紹介している。
 一方、経済財政諮問会議は11月9日に「グリーン成長実現に向けたイノベーションと投資の創設」を検討。自民党税制調査会も21年度税制改正で脱炭素社会実現に向けた投資の税制優遇策などの検討に着手。また、衆議院は11月19日、「気候非常事態宣言」を決議した。
◎「年末年始の注意喚起」など決議 ― 全国知事会
 全国知事会は11月5日、ウェブ会議で全国知事会議を開き、新型コロナウイルス感染症に関する緊急提言や年末年始の感染症対策で注意喚起を求める「全国知事会からのメッセージ」などを採択した。コロナ対応では療養勧告や事業者の休業要請等で罰則規定など法的措置を要請。併せて、全都道府県で臨時交付金不足が合計6,134億円に拡大しているとし増額を求めるとともに、医療機関や福祉施設の経営安定化支援なども要請した。一方、災害時の死者・行方不明者の氏名公表では、従来の「全国統一の基準策定」要請を転換し、知事が判断できるガイドラインの策定を求めた。
 また、政府主催の全国知事会議が11月20日、首相官邸で開催された。菅首相は、挨拶で「(感染症拡大は)最大限警戒する状況にある」としGo Toイートでは原則4人以下で会食するなど「感染拡大を防ぐことを大前提に経済活動との両立を図る」との考えを改めて示した。これを受けて、飯泉全国知事会長は、感染者数拡大を受けて「地域を絞った強力かつ効果的な対策」を政府に要請。他の出席知事からは雇用調整助成金特例措置の継続などを要請する声が出た。
◎本社の移転予定企業の移転先は都内 ― 国交省
 国交省は11月12日、都内に本社を置く企業対象のアンケート結果をまとめ、企業の東京一極集中の要因分析を審議している有識者懇談会に報告した。東京に本社を置く要因では「企業・取引先等の集積」などの回答が多いが、企業の26%が一部移転等を検討していた。テレワーク利用度が高い企業ほど多く、移転先の条件では「オフィス面積の確保」「賃料の安さ」を挙げた。しかし、移転先はほとんどが東京23区で、その他も東京隣接県を挙げ、東京圏以外はほとんどなかった。
 一方、全国過疎地域自立促進連盟は11月20日、都内で第51回定期総会を開催、新たな過疎対策法制定に関する決議を採択した。決議では、①過疎地域の持続的発展を新たな理念として確立②指定要件・指定単位は過疎地域の特性を的確に反映③過疎対策事業債の対象事業拡大 ― などを求めた。また、全国知事会、全国市長会、全国町村会も今月、相次いで新過疎対策法で決議等を採択した。指定要件は地域状況を反映するとともに、除外地域への十分な経過措置などを求めている。現行過疎対策法は来年3月で期限を迎える。
◎東アジアなど15か国がRCEP協定を署名 ― 政府
 日本政府は11月15日、アセアン10か国と中国、韓国、豪州など15か国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)に署名した。世界の貿易総額・人口の約3割を占める新たな経済連携が発足する。工業製品では、全体で約92%の品目の関税を撤廃する。一方、農林水産品では重要5品(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)を関税削減・撤廃から除外した上で、中国にはパックご飯など、韓国には菓子・清酒などで関税を廃止する。これを受けて、政府は11月30日の関係閣僚会議で「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を決めた。牛肉、いちごなど27品目を輸出重点品目に選定、各品目ごとに輸出ターゲット国を決めるとともに、それに特化した産地育成を支援する。
 一方、農水省は11月18日、「みどりの食料システム戦略検討チーム」を発足させた。大規模災害や地球温暖化、生産者の減少など農林水産業をめぐる環境が深刻化する中、生産から消費のサプライチェーンの各段階でイノベーションを図り、食料の安定供給と地球環境の両立を図る。来年春に戦略をまとめる。
◎大学生の就職内定率が70%を割る ― 厚労省
 厚労省は11月17日、2020年度大学卒業予定者の就職内定率を発表した。10月1日現在の内定率は69.8%で前年同期に比べ7.0ポイント低下した。過去2番目の低さ。地域別では、関東地区74.4%、近畿地区71.5%、中部地区67.9%、九州地区64.4%、北海道・東北地区64.2%と続き、中国・四国地区は59.7%と6割を割った。前年同期比では北海道・東北地区、中国・四国地区でそれぞれ10ポイント台の低下となっている。このため、加藤官房長官は同日の記者会見で「第2の就職氷河期世代をつくらないよう政府一丸となって学生の雇用を守る」と述べた。
 一方、厚労省が11月10日公表した自殺者数(速報値)によると、今年10月の自殺者数は2,153人で、前年同期に比べ614人、39.9%も増加した。今年1月~6月までは前年同期比で減少が続いていたが、7月以降増加に転じた。10月の自殺者を都道府県別にみると、東京255人、埼玉151人、神奈川148人などで多く、前年同月比では富山(自殺者27人)で約3倍、福島(同37人)、鳥取(同10人)でも約1.5倍に増えた。
◎児童虐待が19万件で過去最多に ― 厚労省
 厚労省は11月18日、2019年度中の児童相談所での児童虐待対応件数をまとめた。総件数は19万3,780件で、前年度より21%増加、過去最多となった。虐待4累計では心理的虐待が10万9,118件で最も多く、情報経路では警察からの通告が9万6,473件。同通告は年々増加、全体の50%を占める。都道府県別では、前年度比で佐賀県が2倍、山形県は8割、岐阜県も6割それぞれ増えた。なお、厚労省では新型コロナ感染症による外出自粛で虐待リスクの増加を懸念しているが、今年の虐待件数の前年度同月比は3月18%増、4月7%増、5月2%減、6月10%増、7月6%減となっている。
 一方、厚労省の地域医療構想ワーキンググループは11月25日、今後の地域医療構想の「議論の整理」を審議した。11月20日の政府主催全国知事会議で、平井鳥取県知事が「地域医療構想は病院を減らしたり病院を統廃合する内容だ。今、病床を確保しないと新型コロナに打ち勝つこともできない。この議論は一旦停止すべきだ」と訴えたが、11月27日開催された経済財政諮問会議では、民間議員が「感染拡大時に十分受入できる体制を整備しつつ、病床機能の再編につながる新たな支援策を講じる」よう提案している。
◎アフターコロナで地方議会シンポ開催 ― 総務省
 総務省は11月20日、「地方議会活性化シンポジウム2020」をオンライン開催した。宍戸常寿東京大学教授が「Society5.0と地方議会の活性化」と題して基調講演。2040年頃を見据えた「地域の未来予測」の活用を地方議会にも求めるとともに、「議会の位置付け・議員の職務・身分」の検討では、複雑・多様化を調和させる「政治プロセス」の視点に立ち戻る必要性を強調。併せて、「地方議会のデジタル化」を提案した。次いで、「アフターコロナと地方議会・その運営のあり方と多様な人材の参画」をテーマに、只野雅人一橋大学教授と勢一智子西南学院大学教授、佐々木志津子見附市議会議長、中崎和久岩手県葛巻町議会議長、古川綾福島県磐梯町議会議員、吉田栄光福島県議会議員がパネル・ディスカッションを行った。
 一方、全国都道府県議会議長会など議会3団体は11月18日、「活気ある地方議会を目指す全国大会」を開催した。河村和徳東北大学准教授が「地方議会・議員のあり方」をテーマに講演。次いで、①議会の位置付け・権限・職務の法律上の明確化②厚生年金への地方議会議員の加入③立候補に伴う企業等の休暇の保障など立候補環境の法整備 ― などを求める決議を採択した。
◎バリアフリー法の新整備目標を発表 ― 国交省
 国交省は11月20日、今年度で期限を迎えるバリアフリー法に基づく整備目標に代わる新規目標を発表した。次期目標の期間は5年で、整備推進の視点に①施設等は地方部も含め推進②マスタープランによる面的まちづくりを推進 ― などを掲げた。その上で、鉄道駅等は利用者数1日3,000人以上は「原則、全てバリアフリー化」するほか、1日10万人以上利用駅では800ホームにホームドアを整備。乗合バスのノンステップ化は現行の70%を80%に、道路の重点整備地区内は原則全て音響機能付信号機とする。また、同省は11月6日、駅の無人化に伴う安全利用に向けた同省と障害当事者団体・鉄道事業者との第1回意見交換会を開催した。障害者団体からは「転落防止のホームドア整備」「利用が見込まれる時間帯に駅員配置」などの意見が出た。
 一方、文科省の学校施設のバリアフリー化推進会議は11月9日、「報告書取りまとめの考え方」を審議。バリアフリー法改正で公立小中学校の既存施設も努力義務化されるため、「学校施設バリアフリー化推進指針」「学校施設整備計画」を相互補完し、指針の適用範囲に既存施設の改修も追加するなどを盛り込んだ。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)