月刊『自治総研』
2020年11月中央の動き
中央の動き |
◎担い手全てが「スマート農業」活用へ ― 農水省 ◎新内閣の重点課題など審議 ― 経済財政諮問会議 菅内閣発足後初の経済財政諮問会議が10月6日開催され「新内閣の重点課題」を審議した。席上、菅首相は①メリハリの効いた感染症対策の実施②行政の縦割り・既得権益、悪しき前例主義の打破③都会から地方への人の流れ創出と産業競争力の強化 ― に取り組むよう要請。これを受けて、民間議員が「新内閣の重点課題」に①都市人材が地域でも活躍できる2地域居住の推進や住宅支援②大企業から中堅・中小企業、ベンチャー企業への人材移動③自治体のシステム統一・標準化や広域連携の推進 ― などを挙げた。また、10月23日開催した経済財政諮問会議では「地方への人の流れ」「デジタル化の加速」を審議した。 一方、財務省の財政制度等審議会は10月1日、財政制度分科会を開催、年末の来年度予算案の建議に向けた審議に着手した。同概算要求総額はコロナ対応などで約105兆円と過去最高。麻生財務相は「施策見直しを徹底し重点化する」と述べたが、今年度予算は巨額の1次・2次補正で予算規模が160.3兆円(公債金90.2兆円)と異例の規模に膨れ上がっている。 ◎「押印の原則廃止」へ具体策検討 ― 規制改革会議 政府の規制改革推進会議は10月7日、今後の審議事項に①書面規制、押印、対面規制の見直し②規制全般のデジタルトランスフォーメーション③地方経済活性化への規制改革 ― を決めた。会議で、菅首相は「押印は原則廃止の方針を前提に近日中に全省庁で全ての行政手続の見直し方針をまとめたい。加えて規制がデジタル化を阻むことがないよう抜本的見直しも進めてほしい」「行政の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打ち破るため各省庁が自ら規制改革が必要だ」と述べた。また、「雇用・人づくり」「医療・介護」など6つのワーキンググループがそれぞれ初会合を開いた。 一方、河野行政改革担当相は10月13日の記者会見で、自治体の押印廃止とキャッシュレス化を進めるためのマニュアルを作成し、「行政サービスの便利さを後押ししたい」と述べた。なお、自民党の「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(はんこ議連)」は10月8日、印章は本人確認等で依然有効な手段であり「拙速で行き過ぎた脱はんこ」に反対する方針を決め、山梨県の長崎知事とともに加藤官房長官に申し入れた。 ◎コロナ・デジタル化で議論 ― 国と地方の協議の場 「国と地方の協議の場」が10月13日開催され、①地方創生・地方分権改革②新型コロナウイルス感染症対策 ― をめぐり意見交換した。冒頭、菅首相が「『活力ある地方を創造』は菅内閣の最重要政策で、全力で連携して支援する」などと述べた。これを受けて、全国知事会の飯泉会長が地方六団体を代表して「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の増額、5Gサービスの早期開始などを要請。このほか、六団体側から「防災・減災、国土強靱化の緊急対策の5年延長」(全国市長会長)、「オンライン診療の恒久化」(全国町村会長)などの意見が出た。 また、同日、地方六団体と武田総務相との意見交換会が開催された。総務相が「政府を挙げてデジタル化を進めているが自治体の協力が大事だ」と強調した上で、マイナンバーカードを2022年度末にほぼ全国民に行き渡ることを目指すほか、①国と民間の個人情報保護法制の一元化に合わせて自治体も法律による共通ルールを設定する②自治体の情報システム標準化は25年度末に移行を目指す ― との方針を示した。六団体側はローカル5Gなど基盤整備への支援などを要請した。 ◎出生届出とコロナ感染症の関連で調査― 厚労省 厚労省は10月21日、2020年度の妊娠届出数の調査結果を発表した。新型コロナウイルス感染症の影響を調べるため前年同期と比較した結果、今年4月の届出数は7万5,807件で前年同月に比べ0.4%減だが、5月は6万7,919件で同17.1%減少。6月も同5.4%減、7月は同10.9%減となった。都道府県別(5月)では、山口29.7%減、青森23.7%減、石川22.5%減などで減少率が高い。また、同省は10月23日、2020年版厚生労働白書を公表した。高齢化がピークを迎える2040年頃の医療福祉分野の就業者数は1,070万人、全就業者の5人に1人に増えるとし、担い手不足の懸念を示した。 一方、総務省は9月29日、今年4~7月に選挙が実施された39都道府県・232市町村での新型コロナ対応をまとめた。期日前投票所を27団体が増設、開票事務も13団体が従来より広い会場で実施したほか、約6割の団体で開票事務従事者を削減した。また、約3割の団体が「投票所の混雑状況の周知」を実施していた。このほか、約5割の団体が保険福祉部局と、約6割の団体が危機管理部局と連携していた。これを受けて、総務省は同日、各自治体宛て通知で①期日前投票所の増設や開設期間・時間の延長②「投票所の混雑状況」の積極的な情報提供 ― などを要請した。 ◎不登校の児童・生徒数が過去最多を更新 ― 文科省 文科省は10月22日、2019年度の児童生徒のいじめ・不登校の調査結果を発表した。いじめ認知件数は小学校48万4,545件(前年度42万5,844件)、中学校10万6,524件(同9万7,704件)で、認知した学校(高校を含む)は全体の83%を占める。また、不登校は小学校9万3,058人(同8万4,033人)、中学校16万2,736人(同15万6,006人)。うち90日以上欠席が全体で10万857人(同9万5,635人)で、いずれも前年を上回った。不登校の要因では「無気力・不安」40%、「いじめを除く友人関係の問題」15%など。相談・指導は同児童生徒のうち47%が学校施設・機関等で受けた。 一方、政府の全世代型社会保障検討会議は10月15日、「少子化対策」について審議した。菅首相は「出産を希望する世帯を広く支援するため不妊治療への保険適用を本年末に工程を明らかにする」と述べるとともに、①待機児童問題に終止符を打つべく本年末に新たな計画を定める②出産直後に男性が育児休業を取得しやすくする制度を導入する ― との方針を示した。 ◎自治体誘致のサテライトオフィス調査 ― 総務省 総務省は10月23日、自治体誘致のサテライトオフィス開設状況を発表した。2019年度に全国では822カ所開設されたが、168カ所減少して年度末には654カ所となった。都道府県別では北海道74カ所をトップに徳島67カ所、沖縄52カ所、宮城50カ所などで多い。また、市町村別では、札幌市48カ所、名護市47カ所、仙台市39カ所、松江市32カ所などで多く、徳島県美波町20カ所、北海道更別村・和歌山県白浜町各10カ所など町村でも多い。また、同省が同日発表した19年度の移住相談窓口での相談件数は約31万5,700件で前年度より約1万7,700件増加した。長野県1万7,094件をトップに北海道、福島、新潟、富山、石川、静岡、兵庫の各道県でも1万件を超えている。 一方、全国知事会など地方六団体は10月19日、新たな時代に対応した地方創生実現に関する提言を政府に提出した。ソサエティ5.0実現の全国展開や「関係人口」の創出・拡大、政府機関・企業等の地方移転の促進のほか、地方創生や新型コロナウイルス対策で安定的な一般財源総額の確保・充実などを要請した。 ◎2050年を展望した国土の課題で中間報告 ― 国交省 国交省の国土の長期展望専門委員会は10月23日、中間取りまとめを発表した。現行計画のその後の変化に①頻発化する大規模災害②新型コロナ感染症拡大③デジタル革命 ― などを挙げ、今後は「充実した働き方・暮らし方」など「多様な価値観」が求められると指摘。このため「防災・減災の主流化」「感染症リスクへの対応」「過度な東京一極集中の是正」など我が国が直面するリスク・課題に対応した「国土形成」が必要だとし、①スマートシティなどソサエティ5.0の実現②テレワークや兼業・副業などの働き方③2地域居住や関係人口の拡大④多様な人が活躍・交流できる社会 ― など地域の核への集約を図りながら地域内・地域外をネットワークでつなぐ「多角連携型の国土づくり」を提唱した。来年夏に最終報告をまとめる。 また、国交省は10月6日、「デジタル化の急速な進展やニューノーマルに対応した都市政策のあり方検討会」を発足させた。デジタル化による市民のQOL(生活の質)向上に向け今後目指すべきまちづくりの方向性などを検討する。また、同省の国土審議会企画部会は10月22日、改正土地基本法に基づく具体的な制度見直しづくりの検討を開始した。 ◎ボーナスのみ0.05月分引下げを勧告 ― 人事院 人事院は10月28日、2020年度の国家公務員の給与を改定せず据え置くよう国会・内閣に勧告した。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で民間調査が遅れ、ボーナスは10月7日に0.05%引下げを勧告している。この結果、勧告後の平均給与(行政職俸給票1)は月額の変化はないが、年間給与が約2万1,000円下がる。併せて、「公務員人事管理の報告」では①仕事と家庭の両立支援②非常勤職員の適切な処遇確保 ― などとともに、改めて定年を段階的に65歳まで引き上げる措置を早期に実施するよう要請した。 一方、厚労省は10月20日、就職氷河期世代活躍支援のための都道府県プラットフォームが19日に全都道府県で設置されたと発表した。行政・経済団体・業界団体などが一体となって企業説明会、積極採用・正社員化などを支援する。また、同省は10月23日、今後の若年者雇用研究会の報告書を発表した。AI等の技術革新などから事務職・単純作業人材の過剰化、日本型雇用管理の変容など若年雇用の環境変化の可能性を指摘。このため、コロナ禍による新たな就職氷河期世代を生み出さない若年者雇用の安定化支援などを提言した。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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