地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年10月中央の動き


中央の動き


◎水災害対策とまちづくりの連携で提言 ― 国交省
 国交省は8月31日、「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」(提言)を発表した。近年の水災害の甚大化・リスク増大を踏まえ、降雨規模や施設整備に応じたハザード情報を早期に作成・公表するとともに、人口や都市機能など地域ごとに多面的にリスクを評価。その上で、一定程度の水災害リスクを受け止めてまちづくりに反映すべきだとした。さらに、①地域のリスク低減に限界がある場合は、さらなる治水対策を検討②同対策を実施してもリスクが残る地域は移転を検討③市町村を超えた流域・広域の観点から水災害対策を検討 ― などを提言した。
 また、会計検査院は9月4日、災害拠点病院23施設が保有する自家発電機を検査した。その結果、8病院で自家発電機や無停電電源装置が地下などに設置されていたため、ハザードマップに応じた浸水対策を講じるよう要請した。一方、全国知事会など地方3団体は9月9日、今年度で期限を迎える「防災・減災・国土強靱化のための3か年緊急対策」について事業を拡充し5年間、延長・拡充するとともに、同関連予算・財源は別枠で必要額を確保するよう政府等に要請した。


◎コロナの防疫作業手当を466団体で創設 ― 総務省
 総務省は9月1日、新型コロナウイルス感染症の防疫等作業手当の運用状況を発表した。国の防疫等作業手当の特例を受けて、同省も各自治体に同手当創設などの対応を要請。7月7日現在、合計466団体が同特例を創設していた。内訳は都道府県44、政令市19、中核市41、その他市町村270、一部事務組合78。うち393団体は全職種・全職員を対象にし、作業場所は病院348団体、患者収容宿泊施設238団体など。なお、検討中463団体、「創設予定なし」は2,345団体あった。
 一方、全国市民オンブズマン連絡会議は9月20日、新型コロナへの自治体の議会の対応などを発表した。都道府県・政令市・中核市の各議会のうち7道府県が期日を短縮、8都府県では質問時間・質問者・議員出席を制限。政令市も千葉など9市が期日、札幌など10政令市、下関など19中核市等が質問時間・質問者を制限。さらに川越市は本会議も開催しなかった。このほか、福島など4府県では傍聴を認めず、鹿児島など16道県では傍聴人数を制限していた。
◎大学秋入学など高等教育の在り方で研究会 ― 知事会
 全国知事会は9月2日、これからの高等学校教育のあり方研究会の第1回会合を開催した。コロナ関連の学校臨時休業への対応で「秋入学」論が浮上したことを受けて設置したもの。会合では、臨時休業による教育への影響調査で示された①詰め込みによる質の低下②ICT環境による格差③部活動等の自主活動の制約 ― なども踏まえ、「大学の秋入学等を視野に入れた高等学校教育のあり方」をさらに詰めることにした。
 また、全国知事会の地方分権改革推進研究会はこのほど、論点整理をまとめた。地方分権改革では、なお「従うべき基準」や、通知・財政的インセンティブによる国の誘導が増加していると指摘。このため、「従うべき基準」の「参酌基準」化など自治立法権の拡充・強化、計画策定等を地方に委ねるなど国の政策策定プロセスへの地方の参画などを要請した。同研究会では近く報告をまとめる。このほか、全国知事会は9月14日、先進政策バンクの2020年度優秀政策に「バス中心から新たな地域交通体系構築」(鳥取県)、「働く世代からのフレイル予防」(大阪府)、「災害薬事コーディネータ配置」(福岡県)など34件を決めた。
◎魅力ある地方大学実現へ検討会議発足 ― 内閣府
 内閣府は9月2日、地方創生に資する魅力ある地方大学実現に向けた検討会議を発足させた。東京圏への転入超過の大半が10代~20代を占めているため、政府は地方大学・産業創生法の制定(2018年)を受けて①地域の大学振興・若者雇用創出交付金制度(キラリと光る地方大学づくり)②東京都内の大学等の学生収容定員抑制 ― などを進めているが、さらに「地域ならでは」の人材を育成・定着させ地域経済を支える基盤となる地方大学のあるべき姿を探る。年内にも報告をまとめ地方創生の総合戦略改定に反映させる。
 また、総務省は9月11日、産学官連携による地域活性化の実態調査結果を発表した。「チョウザメ養殖」(美瑛振興公社、北海道大学、北海道美深町)、「三浦真珠プロジェクト」(京急油壷マリンパーク、東京大学、神奈川県・三浦市)、「汚水処理技術」(オーヤパイル㈱、和歌山県工業技術センター、和歌山県)、「希少糖」(松谷化学工業㈱、香川大学、香川県)など全国33の先進事例を紹介し、産学官連携に取り組むための知識・視点などを整理している。
◎保育所等の待機児童数が過去最少に ― 厚労省
 厚労省は9月4日、保育所等の待機児童数を発表した。2020年4月1日現在、待機児童数は1万2,439人で前年より4,333人減少、過去最少となった。年齢別では、0歳児1,227人、1~2歳児9,603人、3歳以上児1,609人。待機児童がいる市町村は400団体(前年442団体)で、うち待機児童50人未満が325団体(同349団体)、同50~100人未満が53団体(同53団体)で、100人超は22団体と前年の40団体から半減した。また、前年に比べ船橋市で待機児童が100人以上増加した一方、世田谷区(470人減)、神戸市(165人減)、藤沢市(144人減)など6市区で100人以上減少した。
 また、厚労省は同日、19年度の乳幼児等の医療費援助の実態を発表した。都道府県では通院・入院ともに全団体が実施。うち通院では25団体が就学前を対象としているが、3団体は18歳年度末まで対象としている。また18団体は所得制限なしだった。市区町村では通院・入院ともに1,741団体が実施。うち通院では923団体が15歳年度末、659団体では18歳年度末まで対象としている。また、1,492団体が所得制限なしだった。
◎菅内閣が発足、総務相に武田良太氏が就任
 菅義偉内閣が9月16日発足した。同日閣議決定した「基本方針」では、安倍政権の継承と目指す社会像に「自助・共助・公助、そして絆」を掲げた上で、①新型コロナウイルスの爆発的感染を絶対防ぐ②感染症でダメージを受けた観光・飲食業等を支援③活力ある地方を創る④不妊治療の保険適用など少子化に対処 ― などを掲げた。一方、全国知事会など地方3団体は新内閣発足を受けてそれぞれ会長コメントを発表。「感染症対策の強化と地方経済の支援」「地方創生の推進」「防災・減災対策の推進」などを要請した。
 また、総務相に就任した武田良太氏(衆院福岡第11区、当選6回、52歳)は9月17日の就任記者会見で「行政の効率化を進める上でもデジタルを捉えていくことが重要。地域に役立つ郵便事業を目指す」などと述べた。また、9月18日、総務副大臣に熊田裕通氏(衆院、地方自治担当)、新谷正義氏(同、情報通信・行政管理担当)、政務官に宮路拓馬氏(同、地方自治担当)、古川康氏(同、情報通信担当)、谷川とむ氏(同、行政管理担当)がそれぞれ就任した。なお、宮路氏は総務省出身。
◎高齢者人口が過去最多を更新 ― 総務省
 総務省は9月20日、「我が国の高齢者」(2020年9月15日現在)を発表した。総人口が前年比29万人減少する中、高齢者人口は3,617万人と前年より30万人増加、過去最多となった。割合も28.7%と前年より0.3ポイント上昇し過去最高を更新した。年齢別では、団塊世代を含む70歳以上が2,791万人で前年より78万人増えた。また、就業者も16年連続して増え892万人と過去最多となった。就業率は65~69歳が48.4%、70歳以上も17.2%だった。うち男性が34.1%、女性が17.8%。産業別にみると、「卸売業・小売業」が126万人、「農業・林業」が108万人、「サービス業」が103万人などだが、うち「農業・林業」では52.6%と過半数が高齢就業者だった。また、雇用者が56.9%、雇用形態では77.3%が非正規の職員・従業員だった。
 一方、厚労省は20年9月15日現在の百歳以上高齢者を発表した。総数は8万450人で、前年より9,175人増加した。うち、女性が7万975人で全体の88%を占める。百歳高齢者は1981年に千人、98年に1万人、12年に5万人を超えるなど年々増加している。
◎自治体の業務システムを統一・標準化 ― 政府
 政府は9月23日、デジタル改革関係閣僚会議を開き、今後の取組事項に①マイナンバーカードの普及②テレワーク・学校・医療などのオンライン化③府省・地域の情報システムの標準化・共通化 ― を決めた。会議で、菅首相は「デジタル庁の設置は待ったなし」とし、年末に基本方針を定め来年の通常国会に関連法案を提出するよう指示した。また、9月25日の国・地方のデジタル基盤抜本改善WGで、菅首相は自治体業務システムの統一・標準化を2025年度末を目指し作業を加速するよう指示。これを受けて、総務省は自治体業務システムの統一・標準化の法制化方針を示した。国が標準化の基準を告示、自治体に移行期間内の適合を義務付け、25年度までに移行を目指すなどとしている。
 一方、武田総務相は9月25日の記者会見で、「自治体のデジタル化へ『自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画』を年内に策定」する方針を示した。同計画には、①行政手続のオンライン化②システム標準化・クラウド化③AI、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)の活用 ― などを中心に自治体が取り組むべき施策を示すとした。
◎2021年度予算の概算要求を発表 ― 総務省
 総務省は9月30日、2021年度予算概算要求を発表した。一般財源総額の前年度同額確保を基本に前年度比0.3%増の16兆8,263億円を要求。うち、地方交付税は同2.4%減の16兆1,933億円を計上。併せて、財源不足が10.2兆円にのぼる見込みのため交付税率引上げも事項要求した。また、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を38.8億円(前年度7.1億円)に増額。自治体情報システム標準化4.1億円、セキュリティ32.1億円などを計上。マイナンバーカードの普及・利用促進も1,408億円計上した。併せて、新たな過疎対策を前年度倍増の11.6億円要求した。また、21年度地方財政収支の仮試算も公表した。地方財政規模は前年度とほぼ同額の90.8兆円としたが、コロナ関係で地方税等が39.9兆円(同8.3%減)に減少。このため、地方債を同3.7%増の12.9兆円に増額、臨時財政対策債は前年度倍増の6.8兆円とした。
 一方、地方六団体は9月25日、自民党総務部会に21年度予算等で要望した。新型コロナウイルス感染症対策地方創生臨時交付金はすでに全都道府県で活用見込額が上回っているとして増額を要請。同包括支援交付金も増額するとともに医療機関や介護・福祉サービス事業所の経営支援も対象とするよう要請した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)