地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年8月中央の動き


中央の動き


◎ふるさと納税に泉佐野市等の復帰を決定 ― 総務省
 総務省は7月3日、ふるさと納税制度から除外していた泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町を、また7月17日には静岡県小山町を対象団体に指定した。除外を不服として提訴した泉佐野市の訴えが6月30日の最高裁判決で認められたことを受けた。
 2008年度に創設された同制度は、その後の返礼品競争の過熱で総務省は是正を繰り返し通知。さらに、19年6月から返礼品は寄付額の3割・地元産品などの条件に沿った団体のみを認める指定制度に変更し、泉佐野市など4市町を除外した。これに対し、泉佐野市が提訴。大阪高裁は「不適切な方法で多額の寄付金を集めた」として市敗訴としたが、最高裁は6月30日に市側の訴えを認める逆転判決を言い渡した。なお、最高裁判決でも、市の返礼品について「社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむをえない」と指摘した。泉佐野市は、ギフト券を返礼品に加え18年度は全国の寄付総額の1割に当たる約500億円も集めた。


◎新設のコロナ対策分科会が審議を開始 ― 政府
 政府は7月6日、新型コロナウイルス感染症対策分科会の初会合を開催。医療供給体制はひっ迫しておらず緊急事態宣言を発した4月とは異なるとの認識の下、イベント開催制限の緩和を了承した。また、政府は「Go Toトラベル」キャンペーンを東京発着を除いて7月22日から前倒し実施した。
 そんな中、「新型コロナウイルス感染症に関する全国知事会と国との意見交換会」が相次いで開催された。7月10日は、「『夜の街』の感染対策に係る国・東京都と新宿区・豊島区の連携」を議論。東京都が感染発生店舗の利用者への情報提供や従業員への検査受診の勧奨などを繁華街を持つ区に要請、国は他の自治体に横展開を図ることで一致。7月27日は、国側が「今後実施すべき対応策」として特措法に基づく「ガイドラインを遵守しない店舗に対して休業要請を求める」意向を示した。また、全国知事会は7月10日、「Go Toトラベル事業の緊急提言」を発表した。「観光関連産業が苦境にある」として期待を表明する一方、「感染症拡大要因となることは避けねばならない」とし、全国一律でなく近隣地域の誘客から段階的に範囲を広げるなど地域実情に応じて実施すべきだとした。


◎水災害対策で「流域治水」への転換を提言 ― 国交省
 国交省は7月9日、気候変動を踏まえた水災害対策のあり方を発表した。近年の水災害の甚大化を踏まえ、施設能力を超える洪水発生を前提に河川の流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で対応する「流域治水」への転換を打ち出した。具体的には、①田んぼも雨水貯留機能に利用し氾濫を防ぐ②リスクの低いエリアへの誘導・移転促進③二線堤の整備など氾濫範囲を減らす ― などの対策に取り組む。このため、同省は全国の一級河川でこれらの施策を具体化する「流域治水プロジェクト」を年内にも策定する。
 また、同省の検討会は7月16日、水災害対策とまちづくりの連携のあり方で提言をまとめた。近年の災害を踏まえ、水災害リスクの低減に配慮した居住・都市機能の立地誘導が必要だと強調。このため、水災害ハザード情報を基に地域のリスクを評価するとともに、①水災害リスクのあるエリアでは時間軸も意識してハード・ソフト対策について優先順位をつけて取り組む②行政機関とともに地域住民・民間事業者との合意形成が必要③各市町村単独でなく広域視点からの検討・調整も必要 ― などを指摘した。


◎ライフスタイル多様化と関係人口で懇談会 ― 国交省
 国交省は7月10日、ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会を発足させた。人口減少下でも社会・経済の活力を維持するため関係人口を巻き込んだ地域づくりのあり方を検討する。このため、全国規模の関係人口の実態調査を実施するほか、関係人口と連携・協働する地域づくりのあり方などを審議。今年度内に報告をまとめる。
 また、同省の人口減少下の下水道経営のあり方検討会はこのほど、報告書をまとめた。下水道事業は今後、施設・設備の老朽化で維持管理・更新費が増大し、4分の3の事業で汚水処理原価が使用料単価を上回る「原価割れ」となっているほか、人口減少でサービス維持が困難となるおそれがあると指摘。このため、経営状況を「見える化」し住民理解を促すとともに、新技術・広域化・共同化等による費用低減、さらに消化ガス発電による電力・炭化燃料の販売など下水道施設・未利用資源の有効活用による社会貢献と収支改善への取組を提案。このほか、中長期的な視点から経営戦略の策定など経営健全化サイクルの構築、基本使用料と従量使用料の二部使用料制の原則化などを提案した。


◎システム統合などIT総合戦略を改定 ― 政府
 政府のIT総合戦略本部は7月15日、デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の改定を決めた。会議で、安倍首相は「今回のコロナ対策で行政のデジタル化が進んでいない実態を痛感。最大の原因は国や地方の情報システムがバラバラなためだ」と述べた。その上で、自治体のシステム基盤の統合を進め、共通サービスが提供できる仕組みを今後5年間で実現するとし、IT基本法の抜本改正案を次期通常国会に提出するよう指示した。また、7月17日に閣議決定したIT新戦略では「デジタル強靱化」による社会変革を掲げ、マイナンバーカードの活用や、小中学校の1人1台の端末配備の加速などを盛り込んだ。
 一方、総務省は7月6日、テレワーク・サポートネットワーク事業を開始した。新型コロナウイルス感染症への対応に向け、全国各地の中小企業や自治体のテレワークの早期導入を支援する。同省は、これまでもテレワークマネージャーの派遣などで支援してきたが、今回、テレワーク導入に向けた相談会・セミナーの開催、ICT環境やセキュリティなどの相談・問い合わせに対応する。さらに、7月14日からセキュリティの専門家による相談に無料対応する窓口も開設した。


◎「骨太の方針2020」を閣議決定 ― 政府
 政府は7月17日、経済財政運営と改革の基本方針2020を閣議決定した。新型コロナウイルス感染で行政のデジタル化の遅れ、都市過密・一極集中のリスク、非正規雇用者や小規模事業者の苦境などの課題が浮き彫りになったと指摘。このため、「新たな日常」構築の原動力となるデジタル化へ集中投資・実装を進めるとともに、書面・押印・対面主義など制度・慣行を見直す。また、東京一極集中から「多角連携型の国づくり」を進めるため、「スーパーシティ構想」の早期実現、2地域居住や兼業・副業、地方大学活性化による地方への新たな人の流れ創出、2040年を視野に入れた自治体間の多様な広域連携を推進するとした。
 一方、財務省は7月21日、2021年度予算概算要求の方針を決めた。要求期限を9月30日に延期し、要求額は対前年度同額とするが、感染症対応は別途要求できるとした。これを受けて、総務省は同日、各府省に概算要求に際しての留意事項を申し入れた。地方創生交付金制度の改善や教職員定数の増加抑制、地域医療提供体制の確保、外国人材の受入環境整備、所有者不明土地対策の推進など合計31件を要請した。


◎地方創生の基本方針2020を閣議決定 ― 政府
 政府は7月17日、まち・ひと・しごと創生基本方針2020を閣議決定した。新型コロナウイルス感染で地域の経済・生活に影響が生じているため、感染症克服と経済活性化の両立の視点を取り入れてデジタル・トランスフォーメーションの推進と東京圏への一極集中の課題への取組強化を打ち出した。このため、①コロナに強い社会環境整備②新たな暮らしのスタイル確立③新たな付加価値を生み出す消費・投資の促進 ― を展開し「新しい生活様式」と強靱かつ自律的な地域経済を構築する。また、魅力的な地方大学の実現と地域の雇用創出・拡大で若者の地方への定着を推進するとした。
 一方、内閣府は7月10日、地方創生担当大臣と地方6団体の意見交換会を開催した。その中で、6団体側は①新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の自由な執行と増額②新型コロナによる医療機関の経営への対応③新しい時代の学びの環境整備に向けICT教育の補助教員の拡大④少子化対策と過疎対策の一体化⑤国土強靱化の推進 ― などを求めた。


◎兼業・副業のルール化など成長戦略を決定 ― 政府
 政府は7月17日、新しい働き方の定着などを求めた成長戦略実行計画を閣議決定した。人生100年時代、ポスト・コロナ時代は兼業・副業・フリーランスなど多様な働き方の期待が高まっていると指摘。このため、兼業先での労働時間を自己申告制とすることで本業の企業側に超過勤務の責任を問わないなど兼業・副業を認めやすいルールを整備する。併せて、①事業者から不利益な扱いを受けないよう契約書面を交わす②実質的に事業者の指揮命令で働いている場合は労働関係法令が適用される ― ことも盛り込んだ。なお、6月の第32次地方制度調査会答申でも、「連携・協働のプラットフォーム構築」の一環として、多様な任用形態・兼業許可の活用など民間人材と地方公務員の交流環境の整備を答申。総務省は、その制度化を進める。
 一方、厚労省は7月1日、2019年度の労働紛争解決制度の施行状況を公表した。総合労働相談件数は118万8,340件で、12年連続して100万件を超えた。このほか、民事上の労働紛争の相談件数、助言・指導、斡旋の申請件数の全てで「いじめ・嫌がらせ」が引き続きトップとなっている。


◎自治税務局長に稲岡氏など幹部人事発令 ― 総務省
 総務省は7月20日付で幹部人事を発令した。地方自治関係では、復興庁統括官に出向した開出英之自治税務局長の後任に稲岡伸哉税務担当審議官が、同後任には川窪俊広地方税共同機構副理事長が就任。また、財政制度・財務担当審議官に馬場竹次郎地方公務員共済組合連合会理事、地方行政・個人番号制度・地方公務員制度・選挙担当審議官に阿部知明行政課長、地域力創造審議官に大村慎一公務員部長がそれぞれ就任。また、内閣官房審議官に出向した林﨑理消防庁長官の後任に横田真二大臣官房長が就任した。
 このほか、公務員部長に山越伸子公営企業課長、行政課長に小川康則公務員課長、同後任に植村哲大臣官房参事官がそれぞれ就任。また、内閣審議官に出向した大沢博財政課長の後任に出口和宏交付税課長、同後任に黒野嘉之自治体国際協会ロンドン事務所長が就任した。また、神戸市副市長から復帰した寺﨑秀俊氏が企画課長に就任、神戸市副市長に転身した恩田馨市町村税課長の後任に門前浩司大臣官房参事官、また固定資産税課長に山口最丈全国市町村職員共済組合連合会事務局長がそれぞれ就任した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)