地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年7月中央の動き


中央の動き


◎初のウェブ総会で決議など採択 ― 知事会・市長会
 全国知事会は6月4日、全国知事会議を初のウェブ会議で開催、45都道府県知事が参加した。会議ではコロナの感染予防と社会経済活動の両立を目指すとした「コロナを乗り越える日本再生宣言」を採択。また、「地方税財源の確保・充実」「大規模災害への対応力強化」などの提言を決めた。併せて、政府・与党内で浮上した秋季入学論を受けて「これからの高等学校教育のあり方研究会」などの設置も決めた。このほか、「大規模災害の対応力強化」の提言で、死者・行方不明者の氏名公表について法令で公表の根拠明確化と全国統一基準の作成を求めた。知事会の実態調査では、行方不明者の非公表は2県、死者の非公表は3県あり、公表メリットでは「迅速な救出救助」が大半だった。
 また、全国市長会も6月3日にウェブ会議で全国市長会議を開催。「新型コロナウイルス感染症対策」「東日本大震災からの復旧・復興及び福島第一原子力発電所事故への対応」「国土強靱化、防災・減災対策等の充実強化」「地方創生の推進・分権型社会の実現」「都市税財源の充実強化」「行政のデジタル化及び学校教育のICT化の推進」など7件の決議を決めた。


◎公立病院再編の先送を表明 ― 加藤厚労大臣
 加藤厚労大臣は6月5日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、公立・公的病院再編の検討の先送を記者会見で表明した。厚労省は、昨年秋に再編統合の対象424病院を実名で公表、地方側が猛反発したが、今年1月には各都道府県に再編統合に向けた具体的対応方針の策定を要請していた。一方、5月19日の「国と地方の協議の場」で、地方六団体は「感染症対策の実施で、地域住民の命を守る公的・公立医療機関が担う役割の重要性が再認識された」と指摘。国に対し再編統合を前提とせずに協議するよう要請していた。しかし、政府の全世代型社会保障検討会議が6月25日にまとめた第2次中間報告では、感染拡大防止に配慮した医療・介護・福祉サービスの提供を進めるが、「その際、地域医療構想調整会議の議論を活性化、医療機能の分化・連携を推進する」ことも盛り込んだ。
 なお、厚労省が5月29日に発表した調査では、2019年10月末の無医地区は601地区で前回調査(14年)より36地区減ったが、無医地区の人口は12万8,392人で、14年より4,270人増えた。都道府県別では、北海道76地区、広島県59地区、大分県39地区などで多い。
◎自治体の少子化対策、効果はほぼゼロ ― 内閣府
 内閣府は6月11日、自治体の少子化対策の取組状況を発表した。2019年度に都道府県は「情報発信」(98%)、「企業・団体と連携」(83%)、「結婚支援センター」(74%)など、市町村も「婚活イベント」(53%)、「情報発信」(28%)、「婚活セミナー」(23%)などを実施した。しかし、少子化対策の目的に掲げた「出生率の増加」「婚姻数の増加」の「効果」は、いずれもほぼゼロだった。
 一方、厚労省は6月5日、2019年の人口動態調査を発表した。出生数は91万8,400人で、前年より2万7,746人減少。合計特殊出生率も1.42で前年の1.43を下回った。なお、母の年齢別(5歳階級)の出生率は、39歳までは前年より低下したが、40~44歳、45~49歳は増加した。一方、死亡数は136万2,470人で、前年より2万1,903人増加。この結果、自然増減は44万4,070人の減で、減少数は前年より4万9,649人増えた。婚姻件数は58万6,481組で、前年より2万471組減った。
◎新型コロナの災害対応で「ポイント」公表 ― 内閣府
 内閣府は6月16日、「新型コロナウイルス感染症を踏まえた災害対応のポイント」を公表した。政府は、これまで「避難所における感染症への対応」「感染症に配慮した避難所開設・運営訓練ガイドライン」などを通知しているが、「ポイント」はこれらの通知・事務連絡の留意事項を「ホテル・旅館の活用」「自宅療養者等の避難の検討」「濃厚接触者の専用スペース確保」などに分けて解説した。また、内閣府は同日、各省庁の宿泊施設など約930施設、民間のホテル・旅館など約1,200施設が避難所として利用可能と発表した。
 一方、政府の規制改革推進会議は6月22日、感染症対応を踏まえた書面規制・押印・対面規制の見直しの意見をまとめた。テレワーク・オンライン利用の円滑化のため書面の様式簡素化・添付書類の削減、押印の廃止、オンライン対面などを求めた。また、内閣府が6月21日公表した感染症影響下の生活意識・行動の変化調査では、「地方移住の関心が高くなった」の回答が全体は15%だが、うち20歳代では22%、さらに「東京23区在住」では35%と高いことが分かった。
◎農業白書で女性農業者の役割など特集 ― 農水省
 農水省は6月16日、2019年度の食料・農業・農村白書を公表した。今年3月に策定した新たな食料・農業・農村基本計画を踏まえ改めて「産業政策」と「地域政策」を両輪で進めるとともに、「半農半x」など新たなライフスタイルや小規模でも安定経営で地域活性化に寄与する取組の必要性を強調した。また、「輝きを増す女性農業者」をテーマに特集。女性農業者は農業で重要な役割を果たす一方、農作業・家事・育児の負担が大きいと指摘。女性が働き・暮らしやすい農業・農村の環境整備の必要性を強調した。
 なお、政府が6月26日に開催した農林水産業・地域の活力創造本部では、新型コロナウイルス感染拡大で国際的な食料供給リスクが高まるとし、感染関連の需要急減で生産を中止すると将来の食料供給に支障が出るとして「農林水産業の生産を止めないことが重要」との方針が示された。また、新たな輸出目標に「2025年2兆円」「2030年5兆円」が示された。
◎広域連携の法制化は両論併記に ― 第32次地制調答申
 第32次地方制度調査会は6月17日、2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応する地方行政体制のあり方に関する答申を決めた。人口減少など変化・リスクへの対応に向け「地域の未来予測」の整備とともに、①情報システムの標準化など地方行政のデジタル化②公共私の連携と自治体の広域連携③請負禁止の明確化など地方議会への多様な住民参画 ― を提言した。うち、公共私の連携では市町村に連携・共同のプラットフォーム構築と地縁法人制度の再構築を提言。一方、市町村の広域連携では、事務処理の計画段階での連携など市町村間で合意形成が困難な課題への対応が必要だとしたが、その仕組では①他の市町村の参画を担保する仕組を法制化②法制化は、特定の広域連携に誘導し市町村の自主性を損なう懸念がある ― との両論を併記し「その是非を含めて、関係者と十分な意見調整を図りつつ検討される必要がある」と結論を先送りした。総会では、これまで同制度化に慎重論を展開していた全国市長会は「(答申案は)本会の意見が反映された」と評価。全国町村会も「私どもの意見が届いていると思う」と了解したが、「法律による制度化には断固反対である」と改めて念押しした。
 なお、総務省は6月23日、今年度の新たな広域連携促進事業の委託団体に次の6団体を選定した。札幌市(7市4町村)、八戸市(7町村)、魚津市(1市2町)、奈良県広陵町(3市3町)、埼玉県(51市町)、長野県(全77市町村)。
◎改正公職選挙法など55法律が成立 ― 通常国会
 第201通常国会が6月17日閉幕、政府提出59法案のうち55本が成立した。新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言を可能とする改正特別措置法や2次にわたる補正予算が成立したほか、自治関係では期限を10年延長する改正市町村合併特例法が成立。改正公職選挙法も成立した。町村の選挙について①自動車使用・ビラ作成・ポスター作成を選挙公営の対象とする②町村議員選挙に供託金制度を導入 ― が柱。権限移譲など10本の関連法案を改正する第10次地方分権一括法も成立。地方議員が立候補する際の宣誓書に「住所要件」の追加が盛り込まれた。一方、国家公務員の定年を65歳まで段階的に引き上げる国家公務員法改正案は検察庁法改正案とともに廃案となったが、国と合わせ定年延長する地方公務員法改正案は継続審議となった。
 このほか、スーパーシティ構想など改正国家戦略特区法、ため池決壊防止の改正特別措置法、福祉関連で「断らない相談」窓口を市町村に設置する地域共生社会関連法、所有者不明土地問題への対応を強化する改正土地基本法、復興庁の設置期限を10年延長する改正復興庁設置法などが成立した。
◎2019年度地方教育費が2年ぶり減少 ― 文科省
 文科省は6月18日、2019年度の地方教育費調査を発表した。同年度に支出された地方教育費総額は15兆9,716億円(前年度比0.8%減)で、2年ぶりの減少。うち、学校教育費は13兆4,415億円(同0.9%減)、社会教育費は1兆5,254億円(同3.4%減)だった。また、同年5月1日現在の女性教育委員の割合は都道府県が43.2%、市町村が40.7%で、前年に比べそれぞれ0.5ポイント、0.9ポイント上昇。女性教育長は都道府県が8.5%、市町村が5.0%で同2.0ポイント、5.0ポイント上昇。いずれも過去最高となった。
 また、文科省は6月24日、学校での携帯電話に関する有識者会議の報告を発表した。同省は、これまで小・中学校では持ち込み原則禁止としていたが、その後の普及や緊急時の連絡手段の観点から、小学校は引き続き原則禁止とするが、中学校は一定の条件のもと持ち込みを認めることが妥当だとした。なお、小学校でも保護者に持ち込み許可申請などを経て持ち込みを例外的に認めることも考えられるとした。
◎国交白書で防災・地域交通の課題を展望 ― 国交省
 国交省は6月26日、2020年版の国土交通白書を公表した。同省発足20年を振り返り、今後の課題等を展望した。土砂災害の発生回数が前半10年間に比べ後半は1.5倍に、1日降水量200㎜以上の年間日数は2倍に増えた。また、地方圏では約9割のバス事業者が赤字など地方公共交通の衰退が懸念されるとした。このため、今後、災害対策では平時・非常時・復興時まで行政・企業・住民が連携して対応する「防災・減災が主流となる社会」の実現を目指すとした。地域の移動手段確保では、上下分離方式や他の事業者との合併・共同経営、自家用有償旅客運送への転換などで持続可能な交通サービスを確保する必要性を強調した。
 また、同省は6月16日、2020年版の土地白書を公表した。管理不全土地の実態調査では、回答市町村の61%が3年間で住民から苦情があったと回答。「雑草・樹木の繁茂、落ち葉等の散乱、草木の越境」の苦情が多かった。管理不全の理由では「遠方居住」(44%)、「所有者の意識希薄」(33%)を挙げた。一方、所有者アンケートでは、50%が「売却意向あり」とし、管理委託も「費用が安ければ」が35%あった。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)