地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年5月中央の動き


中央の動き


◎総括的な論点整理で六団体ヒアリング ― 地制調
 政府の第32次地方制度調査会専門小委員会は4月7日に「総括的な論点整理」を審議。4月23日には地方六団体から意見聴取(WEB会議)した。論点整理は、人口減少・高齢化が進む2040年頃に向けた「広域連携」「公共私の連携」「行政のデジタル化」「地方議会」の対応策を示した。各市町村に「地域の未来予測」の作成を要請した上で、広域連携について多様な手法から市町村が自ら選択することが前提とした上で、連携施策に周辺市町村の意向が反映されるよう計画段階から合意形成へ参画できる仕組と、都道府県の補完では市町村側が地方自治法の「連携協約」を要請できる仕組の創設を提案した。また、地域の多様な担い手と連携・協働するプラットフォーム構築と、地方公務員に地域活動への参画などを要請した。このほか、行政のデジタル化では基幹系情報システムの標準化、地方議会では議員の法的位置付・議員報酬のあり方・請負禁止の緩和など今後の検討の方向性を示した。
 同案に対し、全国知事会は広域連携の推進に向けた財政的・技術的支援や規制緩和を要請。全国市長会は「地方の人口流出に歯止めをかける」「東京への一極集中を是正」も明記すべきだと訴えた。一方、全国町村会は、連携施策への関係市町村の「参画担保の仕組」創設について、「連携で相手方市町村の参加担保は当然で、わざわざ法律で規定することはない」と指摘。現在の要綱による圏域ビジョン・連携計画策定の法制化に「断固反対する」とした。さらに「地域の未来予測」も、さらなる行財政改革・広域連携による効率化・集約化への道具に使われる懸念を示した。


◎感染症対応でテレワーク推進を要請 ― 総務省
 総務省は4月7日、各都道府県に「新型コロナウイルス対策等を踏まえた地方公共団体におけるテレワークの導入の推進」を通知した。同省は2016年度からテレワーク推進を要請しているが、緊急事態宣言の発令を受けて、改めて各自治体にテレワークの導入・活用で感染拡大の未然防止と行政機能の維持を要請。さらに、4月17日には自治体のテレワーク導入経費を特別交付税措置することを明らかにした。
 また、総務省は4月3日、学生等の学習に関する通信環境の確保を電気通信事業者関係4団体に要請した。感染症対応のため学生が自宅で遠隔授業による学習が必要となっているが、携帯電話の通信容量制限などにより学習できないことが想定されるため、各通信事業者に①携帯電話の通信容量制限に柔軟な措置を講じる②その旨を利用者に広く周知する ― よう要請した。併せて、同省は4月10日、インターネットのコンテンツ事業者・ネットワーク事業者と「インターネット流通効率化検討協議会」を設立した。今後もインターネットの回線利用量の増加が予想されるため、ネットの事業継続性や技術的な対応策などを検討する。
◎市町村の空家除去などの実態を発表 ― 国交省
 国交省は4月8日、管理不全の空家の除去等の実態調査結果を発表した。2019年10月1日現在、1,091市町村(63%)で空家法に基づく空家等対策計画を策定。また、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす特定空家に対する助言・指導が年々増加、制度創設後の4年半で助言・指導が1万7,026件、勧告が1,050件、命令が131件、さらに代執行が169件あった。ただ、調査時点で市町村が把握している特定空家は約1.6万物件ある。一方で、条例に基づく取組の結果、所有者による除去等が累計で約7.7万件にのぼることも分かった。なお、同省は4月1日、管理不全土地対策促進のため、空地の情報提供、利用管理の仕組構築を支援するため検討している自治体等の募集を始めた。
 また、国交省は4月24日、国土交通データプラットフォームを始動したと発表した。国・自治体が保有する橋梁やトンネル、ダム、水門などの点検結果約8万件、全国のボーリング結果など地盤データ約14万件を地図上に表示。同情報はプラットフォーム上で検索・閲覧が可能。今後、さらに他省庁や民間、自治体の保有データとの連携拡大に取り組むとしている。
◎自主防災組織の人材育成でカリキュラム ― 総務省
 総務省は4月10日、自主防災組織の活性化に向けた同組織のリーダー等に対するカリキュラム・教材を作成した。災害対策基本法に位置付けられた同組織だが、リーダーの担い手不足・参加者不足のため、市町村の担当者向けに「教育・訓練カリキュラム」をまとめたもので、半日程度の研修会を想定。具体的には、結成し始めた組織や長期間活動していない組織のリーダー育成のための「防災リーダーの役割」「災害から住民の命を守るには」「避難所の運営を円滑に進めるには」の3テーマについて解説している。
 また、総務省はこのほど、災害時の「住まい確保」に関する行政評価・監視の結果を発表した。半壊1千戸以上の被災地を調査した結果、避難所外の避難者把握が不十分で情報・物資提供ができなかったほか、支援制度の未利用者もいた。また、住宅の応急修理が1か月以内となっているが完了せずに混乱を招いた実態も分かった。このため、各自治体に①避難所外避難者のニーズ把握方策の検討②制度未利用者にはアウトリーチで早期段階の実施 ― を求めた。また、内閣府に発災から1か月以内の救助期間見直しを勧告した。
◎2019年の人口推計を発表 ― 総務省
 総務省は4月14日、人口推計を発表した。2019年10月1日現在の総人口は1億2,616万7千人で、前年比27万6千人(0.22%)減少した。うち、15歳未満は1,521万人で同20万4千人減少、その割合は12.1%と過去最低に。一方、65歳以上は3,588万5千人、同30万7千人の増加、割合は28.4%と過去最高。15~64歳は7,507万2千人、割合は59.5%と過去最低となった。都道府県別では、増加は東京(0.71%増)など7都県で、40道府県で減少。うち秋田(1.48%減)など9県では1%台の減少に。また、75歳以上の割合が15歳未満の割合を下回ったのは愛知、滋賀、沖縄の3県だけだった。
 一方、総務省の過疎問題懇談会は4月17日、現行過疎法の来年3月末の期限に向けた「新たな過疎対策」を提言した。新たな過疎対策の理念に「過疎地域の持続的な発展の実現」を掲げた上で、過疎対策の対象地域と要件について「市町村を単位とする」「人口要件・財政力要件を設ける」ことが適当だとした。また、新たな支援制度について①市町村計画の内容を充実・強化し実効性を向上させる②国庫補助では地域づくりの担い手育成、関係人口創出・拡大などを推進③過疎対策事業債は市町村計画の目標達成に資する、ソフト事業は中長期的な地域の資産・財産となり得る事業に充当する ― などを提言した。
◎定額給付金へ補正予算案の変更を閣議決定 ― 政府
 政府は4月20日、2020年度補正予算案の変更を閣議決定した。7日閣議決定の収入減世帯に30万円支給する「生活支援臨時給付金」を全国民に一律10万円支給する「特別定額給付金」に変更。補正予算総額は変更前より約8.9兆円増の25兆6,914億円となった。同給付金のほか、感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)1兆円を計上した。同交付金について、菅官房長官は20日の記者会見で「使途は基本的に自治体の判断だ」と述べ、各自治体が取り組み始めた飲食店等への休業要請に対する協力金活用などを容認した。このほか、幼稚園・小学校・介護施設等へのマスク配布792億円、医療機関等へのマスク等優先配布953億円なども計上。さらに、農林水産物・食品の輸出力・国内供給力の強化1,984億円、GIGAスクール構想の加速による学びの保障2,292億円などを計上した。
 また、総務省は同日、同省の補正予算案を発表した。総額は12兆9,137億円で、特別定額給付金(仮称)に12兆8,803億円を計上したほか、消防の救急活動用の車両・資機材整備に13億円、高齢者世帯に感染症情報を伝達するための防災行政無線の戸別受信機導入に8億円、在宅学習・在宅勤務・オンライン診療を後押しする情報通信ネットワーク整備に30億円、企業・自治体のテレワーク導入促進に4億円などを計上した。
◎特別定額給付金の早期交付を要請 ― 総務省
 総務省は4月20日、政府の2020年度補正予算案に全国民に一律10万円交付する特別定額給付金が盛り込まれたことを受けて各自治体に「特別定額給付金(仮称)事業の実施について」(大臣通知)を通知するとともに、21日には説明会(ネット・ライブ放映)を開催した。大臣通知では「全ての人々に可能な限り迅速かつ的確に給付金をお届け」できるよう、各市町村に住民基本台帳のシステム改修の事前準備・補正予算案の早期成立を要請。さらに、22日には「総務大臣メール」を各市町村長宛てに送信。国の補正予算成立にかかわらず各市町村の補正予算の早期編成・成立の努力を求めるとともに、事前準備として返信用封筒の印刷準備に着手するよう要請した。23日には、同給付金に乗じた詐欺への注意喚起を電気通信関連4団体に要請した。
 また、高市総務相は4月20日の記者会見で、給付金の事務で重要なことは①迅速に現金が行き渡る②手続きを非接触型で行う③市町村の事務負担を軽減 ― だと強調した上で、今後のスケジュール感について「国会で補正予算成立が第一。続いて各市町村が補正予算を組んで臨時議会で承認、やむを得ない場合は先決処分の段取りを踏む」と述べるとともに「補正予算成立前も準備は可能で、市町村への通知で今から準備するようお伝えしている」と改めて早期準備を求めた。
◎青少年のインターネット利用で調査 ― 内閣府
 内閣府は4月20日、青少年のインターネット利用環境実態調査結果を発表した。今年1~2月に10~17歳の青少年と保護者を対象に調査。その結果、青少年の93%がインターネットを利用しており、高校生はコミュニケーション(90%)や動画視聴、音楽視聴が多く、勉強は54%。中学生は動画視聴(84%)、ゲーム、コミュニケーションが多く、勉強は41%。小学生はゲーム(82%)、動画視聴が多く、勉強は31%だった。1日の平均利用時間は約182分で前年度より14分増えた。
 また、政府の規制改革推進会議は4月7日、新型コロナウイルス感染症拡大への非常時の対応として①オンライン・電話による診療・服薬指導②家庭での学習支援等による児童生徒等の教育機会確保 ― を提言した。うち、遠隔教育では授業内容に応じて「同時双方向」以外(教師がいない)のオンライン上の教育コンテンツを使った場合も正式な授業参加と認めるほか、遠隔授業の単位取得数も柔軟に対応すべきだとした。また、全国市長会は4月3日、GIGAスクール構想実現の提言を決め、文科省に要請した。全学年の児童生徒が端末を持ち活用する同構想推進のため、ネットワーク環境整備や端末整備のための財政措置充実とICT教育人材の小・中学校の配置充実などを求めた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)