地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年12月中央の動き


中央の動き


◎平成の大合併で検証シンポジウム ― 日弁連
 日本弁護士連合会は11月6日に開催されたシンポジウム「平成の大合併を検証し地方自治のあり方を考える」で、「合併・非合併町村の人口動態等の分析」を発表した。小規模町村を対象に合併しなかった町村と合併した旧町村の47件について10年間の人口動態、財政状況などを比較した。その結果、合併しなかった町村は47件のうち43件で人口減少率が合併旧町村より低く、高齢化進捗率でも41件で低かった。実質収支比率も合併しなかった町村は41件で上昇していた。日弁連は、非合併町村では役場機能が残り、公務員数の減少も多くなかったことが背景にあると分析した。
 第32次地方制度調査会は10月に市町村合併特例法の延長を答申したが、その審議の中で総務省は、市町村合併の効果に①専門職配置など組織・機構の充実②住民サービスの充実③行財政の効率化 ― などを挙げたが、地方六団体委員からは平成の大合併の再検証を求める意見が多く出ていた。地制調は来年夏の最終答申に向けて新たな広域連携のあり方などの審議に入ったが、全国町村会は11月27日の大会で「新たな圏域行政の法制度化に断固反対」の特別決議を採択した。


◎台風等の被災者・生業再建で対策パッケージ ― 政府
 政府は11月7日、台風第15号など一連の豪雨・暴風の被災者の生活と生業の再建に向けた対策パッケージを決めた。生活再建では、廃棄物・土砂の撤去支援や住宅応急修理の支援対象拡大、被災者向け特別金融支援などを行う。生業再建では、中小・小規模事業者へのグループ補助金(定額補助)や農林漁業者への支援、観光需要喚起に向けた対策などを実施。併せて、河川・道路の復旧・2次被害防止、災害復旧事業の迅速化などを進める。財源は、2019年度予算の予備費から1,300億円を充てる。なお、総務省は同予備費使用に伴う各事業の地方負担に100%の地方債発行を認める。また、高市総務相は11月19日付で、全自治体に被災地への人的支援を要請する大臣書簡を送付した。
 一方、総務省は11月13日、避難行動要支援者名簿の作成状況を発表した。今年6月1日現在、前年より33団体増えほぼ全市町村が名簿を作成。自ら掲載を希望した者も67%、自治体等が認めた者を42%の市町村が掲載していた。平常時の名簿の提供先は民生委員92%、消防本部等79%、社会福祉協議会71%などだった。
◎政府主催の全国知事会議を開催 ― 政府
 政府は11月11日、政府主催の全国知事会議を開催した。安倍首相は、冒頭、一連の台風被害に対する対策パッケージの第一弾として1,300億円の使用を決定したほか、補正予算を編成し「国土強靱化をさらにパワーアップする」と表明。飯泉全国知事会長は、防災・減災・国土強靱化3か年緊急対策の延長を要請した。意見交換では、知事会側から公立病院再編で不満が出たが、安倍首相は「各地域の実情を踏まえた丁寧な議論を進める」との考えを示した。さらに、知事側の参院選合区の解消要請に関連して「知事会でも憲法改正を議論していることに敬意を表したい」と述べた。
 一方、地方六団体は11月7日、自民党の予算・税制等政策懇談会に出席、2020年度予算・税制改正と地方創生・地方分権改革などを要請した。来年度予算では地方一般財源総額と地方交付税総額の確保を求めるとともに、税制改正では法人事業税の収入金額課税制度とゴルフ場利用税の堅持を要請。併せて、大規模災害等からの復旧・復興と「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」「緊急防災・減災事業」等の継続も要請した。
◎地方議会活性化シンポジウムを開催 ― 総務省
 総務省は11月12日、地方議会活性化シンポジウムを開催した。河村和徳東北大学准教授が「地方議員のなり手不足と地方議会改革」と題して基調講演。議員数を減らせば立候補しづらくなり、報酬を下げれば仕事ができる人は議員にならないなどのジレンマを指摘した上で、議員構成の多様化と「見える化」が信頼醸成の一丁目一番地だと指摘。議会のネット公開や土日議会の開催、行政のチェック機能強化へ「アマ」から「セミプロ」化の必要性を強調した。パネル討論では、市民フリースピーチ制度の導入(犬山市)、女性の産休(岩手県議会、群馬県榛東村議会)、大学との連携(大津市議会)などを巡り意見交換が行われた。また、総務省は11月15日、第3回地方議会・議員のあり方研究会を開き、全国都道府県議会議長会が先決処分・予算修正・契約締結などで議会の自律権強化を求めた。
 一方、全国都道府県議会議長会など議会3団体は10月14日、厚生年金への地方議員の加入を求める全国大会を開催。議員のなり手不足が深刻化する中、地方議員の厚生年金加入で民間サラリーマンも議員に転身できるとし、早期法改正を求める大会決議を採択した。
◎地方創生担当相と六団体の意見交換会開催 ― 内閣府
 まち・ひと・しごと創生担当相と地方六団体の意見交換会が11月18日開催された。北村担当相が「これまでの地方創生の気運を来年度の第2期につないでいくことが大事だ」とし、第2期総合戦略では民間人材の地域展開、関係人口の創出拡大、企業版ふるさと納税の活用促進を進めるなどと述べた。六団体側は、地方創生推進交付金、まち・ひと・しごと創生事業費の総額の長期・安定的な確保を求めた。また、総務省は11月15日、関係人口創出・拡大フォーラムを都内で開催した。ジャーナリストの田中輝美氏が「地域づくりの担い手を増やすヒント」と題して基調講演。取組事例では、関係人口とつくるJR三江線跡地の活用モデル模索(島根県邑南町)、踊る阿呆と見る阿呆で「徳島ファン」を増やす(徳島県)などが紹介された。
 一方、地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業推進法が11月27日、成立した。人口急減が深刻化している地域に都道府県知事が認定する事業共同組合を設立、組合に登録した若者を同地域内の農林漁業等へ派遣する。国・自治体は財政面で支援する。過疎地域の振興対策と最近の都会のふるさと回帰の動きのマッチングを狙ったもの。
◎土地基本法見直しで骨子案など審議 ― 国交省
 国交省は11月18日、国土審議会部会に土地基本法見直しに向けた中間とりまとめ骨子を示した。現行の土地利用計画に新たに「管理」計画策定を追加するほか、「土地利用の規制」では利用・管理の誘導、所有者不明土地の発生抑制・解消、土地の放棄の抑制なども盛り込むとした。なお、同省調査によると、土地所有者の約4割が利活用しない理由に「何に活用していいか分からない」とし、約半数が今後も「所有する」と回答した。一方、法務省の法制審議会の部会が11月19日、中間試案たたき台に「土地所有権の放棄」を盛り込んだ。これに対し、全国知事会は放棄が土地所有者のモラルハザードを招かない要件の設定、さらに放棄後の土地管理は国が実施すべきだと申し入れた。
 一方、総務省の地方財政審議会が11月19日まとめた2020年度地方税制改正に関する意見で、所有者不明土地対応を提言した。所有者不明土地が固定資産税課税の支障となっているとし、所有者の申告など情報把握の手段充実のほか、戸籍不備などで所有者が1人も分からない場合は「利用者」を「所有者」と見なして課税するなどの措置を提言した。
◎医療機関の統廃合等で世論調査発表 ― 内閣府
 内閣府は11月22日、医療のかかり方等の世論調査を発表した。「24時間診療が行えるよう医療機関を統廃合」することについて賛成が69%で、反対28%を大きく上回った。反対理由では「医療機関への所要時間が長くなる」「医療機関が選択しにくくなる」が多かった。また、医師の長時間労働改善に取り組む主体では「行政」「医療機関」は各11%で、「全体で取り組むべき」が71%と多かった。医療機関の統廃合では厚労省の対象公立病院名の公表に自治体側が猛反発し、現在「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」で調整を進めている。また、知事会等は来年9月の再編決定の期限延長を厚労省に要請した。
 一方、国交省は11月18日、市町村のバリアフリーマップ作成の調査結果をまとめた。同マップは68%が作成しておらず、うち45%は「作成方法が分からない」と回答した。作成されたマップの約6割は2013年以前で、うち3割が地域住民や障害者からの要請で作成。また、マップは7割以上が施設情報だけで、移動経路情報まで提供するのは3割にとどまった。国交省は来年春にも同マップ作成マニュアルを作成する。
◎自治体の事務コスト縮減などを提言 ― 財務省
 財務省の財政制度等審議会は11月25日、来年度予算編成に関する建議をまとめた。消費税率10%への引上げは財政健全化への「長い道のりの一里塚」でしかないと強調。地方財政では臨時財政対策債や交付税特別会計借入金の縮減をはじめ、税務事務などの行政コスト縮減を提言。下水道事業の基準外繰出金の廃止も求めた。社会保障関係では、都道府県内の国保の保険料水準の統一や保険者の適正化インセンティブ強化などを提言した。また、経済財政諮問会議は11月13日、地方行財政について民間議員が改革案を提示。ライフラインの事業運営のデジタル化や、「デジタル版頑張る地方応援プログラム」の創設などを盛り込んだ。
 一方、総務省の地方財政審議会は11月19日、来年度地方税制改正に関する意見をまとめた。地方法人課税の収入金額課税、ゴルフ場利用税の現行制度堅持を求めた。また、所有者不明土地の固定資産税課税で「利用者」を「所有者」とみなし課税できる措置も提言した。なお、11道県で構成する知事連盟は11月6日、新たな地方法人課税の偏在是正措置で生じる財源を地方財政計画に全額計上するよう総務省に要請した。
◎これからの農業・農村政策で提言 ― 全国町村会
 全国町村会は11月27日、「これからの農業・農村政策のあり方の提言」を発表した。農水省が来年春に作成する「食料・農業・農村基本計画」改訂に向け、既存補助金の統合も含めた農村価値創生交付金(仮称)創設と日本型直接支払制度の拡充、スマート農業の支援、TPP11等への万全対策などを提言。併せて「農政に関する国と自治体との協議の場」設置も求めた。
 一方、農水省は11月20~23日、全国版スマート農業サミットを開催した。同省は今年度からICTやロボット、AIなど先端技術の農業現場への実装加速化に向けて農業者や企業、研究機関、行政などが連携するスマート農業実証プロジェクトを全国69地区で展開している。サミットでは同地区の参加者がセミナーでそれぞれの取組状況を紹介。また、ドローン、リモコン式草刈機、アシストスーツ、気象観測装置なども展示された。なお、同省は来年度概算要求でも同プロジェクト継続で50億円を計上している。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)