地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年9月中央の動き


中央の動き


◎児童相談所での虐待相談の対応状況を発表 ― 厚労省
 厚労省は8月1日、2018年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数を発表した。総件数は前年度比19.5%増の15万9,850件で過去最高を更新した。内容は心的虐待が55%で最も多く、身体的虐待25%、ネグレクト18%が続く。また、同日発表した虐待死亡事例の検証結果(第15次報告)では、03年度からの779人のうち0歳児童が48%、加害者は実母が55%で最も多かった。このため、同報告は、死亡事例防止の留意ポイントに①妊娠届がなく母子健康手帳も未発行②施設等への入退所を繰り返す ― などを挙げるとともに、自治体に対し①子育て世代包括支援センター等の設置促進②要保護児童対策地域協議会等で共有した情報の活用③転居情報を把握できる仕組づくり ― などを提言した。
 また、厚労省は8月2日、同省と自治体代表で構成する児童虐待防止体制強化の協議の場を設置した。改正児童福祉法を受けて、中核市・特別区での児童相談所設置に向けた国の施設整備・人材確保等の支援や、児相設置に関する参酌基準のあり方などを検討する。


◎ふるさと納税の現況調査結果を発表 ― 総務省
 総務省は8月2日、2018年度のふるさと納税の現況調査を発表した。受入総額は前年度比1.4倍の5,127億円、受入件数は同1.3倍の2,322万件で、過去最多を更新した。受入額上位は、今年6月からの新制度で対象から除外された泉佐野市496億円、静岡県小山町251億円、和歌山県高野町196億円、佐賀県みやけ町168億円が突出。この4団体だけで全受入額の2割を超えた。一方、19年度課税の寄付金課税控除額は約3,265億円、控除適用者は約395万人。横浜市137億円をトップに、名古屋市81億円、大阪市74億円、川崎市56億円など大都市で多い。なお、ふるさと納税の募集経費は、返礼品調達費1,814億円(全体の35%)など合計2,820億円(同55%)だった。
 また、同省は8月1日、対象指定期間を今年9月末までに限定していた43市町村の全てが指定継続を申請したと発表した。なお、国地方係争処理委員会は9月2日、制度除外は違法との泉佐野市の訴えを認め、総務省に決定再検討を勧告することを決めた。

◎「空飛ぶクルマ」構想を自治体が発表 ― 国交省等
 国交省・経産省は8月2日、都内で地方団体による空の移動革命に向けた構想発表会を開催した。各分野の関係者が「空飛ぶクルマ」を離島・山間部や災害時などの新たな移動手段として研究、昨年12月には官民協議会が「空の移動革命に向けたロードマップ」も作成しているが、今後は官による民間の取組支援・ルールづくりが必要だとして、同構想発表会を開催した。
 発表会では、東京都が「搭乗型移動支援ロボット活用」を国家戦略特区に提案していると報告。大阪府は「実証事業都市・大阪」推進スキームで2030年代に空飛ぶクルマの実証支援の環境整備を宣言。愛知県は次世代自動車・航空宇宙・ロボットの製造技術を集約し自動運転・ドローン実証実験への支援を紹介した。また、三重県は活用テーマを①離島・過疎地域での生活支援②観光資源・移動手段③防災対策・産業の効率化の3本柱で検討を進め、福島県は廃炉研究・ロボット・エネルギーなど福島イノベーション・コースト構想を紹介した。併せて、同日、福島県・三重県が主催する空飛ぶクルマと空の移動革命の実現に関する福島県と三重県による協力協定締結式を行った。

◎月給・ボーナスともに引上げを勧告 ― 人事院
 人事院は8月7日、2019年度の国家公務員の初任給と若年層の俸給月額を0.09%、期末・勤勉手当を0.05月分引き上げるよう国会と内閣に勧告した。具体的には、初任給を大卒は1,500円、高卒は2,000円引き上げる。期末・勤勉手当は現行4.45月を4.50月に改定、引上げ分は勤務手当に配分する。このほか、住居手当について家賃額の下限を1万2,000円から1万6,000円に、住居手当額の上限を2万7,000円から2万8,000円にそれぞれ引き上げる。この結果、勧告後の平均給与は月額41万1,510円(387円増)、年間給与は680万円(2万7,000円増)となる。このほか、報告で①非常勤職員に夏期休暇を新設②セクシュアル・ハラスメント対策の充実・強化と、定年延長の早期実施を要請した。
 一方、厚労省は8月8日、副業・兼業の労働時間管理研究会の報告書を公表した。労働者の自己申告を前提に①健康確保のため超過勤務が1月当たり80時間超の場合は副業・兼業先との相談等を義務付け②月単位などで副業・兼業の上限時間を設定③所定労働時間のみ通算し割増賃金を義務付け ― などの選択肢を示した。

◎今後の子どもの貧困対策のあり方で提言 ― 内閣府
 内閣府の子供の貧困対策有識者会議は8月7日、次期「子供の貧困対策大綱」に向けた提言を発表した。盛り込むべき視点に①親の妊娠・出産期から子供の社会的自立までの切れ目ない支援②自治体の取組充実③支援が届かない子供・家族への支援 ― を掲げた。その上で、スクールソーシャルワーカーを中心に地域福祉等と連携、妊婦検診を通じた女性の困難・悩みの早期把握、家計安定のため就労支援など様々な支援を組み合わせるなどを提言した。また、市町村子ども貧困対策計画の策定団体が札幌市、栃木市、堺市、松江市、高松市、田川市など145団体あると発表した。
 一方、厚労省は8月7日、乳幼児等医療費援助の実施状況(2018年4月1日現在)を発表した。全自治体が実施しているが、うち都道府県では就学前対象が通院25団体、入院20団体と最も多いが、18歳未満もそれぞれ2団体あった。所得制限無しも通院17団体、入院18団体で実施。市区町村では、15歳未満対象が通院1,007団体、入院1,082団体で最も多く、18歳未満も通院541団体、入院586団体あった。所得制限無しは通院1,494団体、入院1,495団体だった。

◎スマートシティ官民連携で471団体が結束 ― 政府
 政府は8月8日、スマートシティ官民連携プラットフォームを設置した。今年6月に閣議決定された統合イノベーション戦略2019で、各省庁が進める「データ利用型スマートシティ推進事業」(総務省)、「新モビリティサービス推進事業」(国交省)などスマートシティ関連事業を官民連携で進めることが明記されたことを受け、企業等304団体、大学等43団体、自治体112団体など合計471団体が参加。今後、各事業を実施する団体に各府省が資金・ノウハウ面で支援するほか、自治体と民間企業のマッチング支援などを行う。
 一方、国交省の都市計画基本問題小委員会はこのほど、コンパクトシティ等で中間取りまとめを発表した。コンパクトシティの意義を「生活サービスの維持」「域内投資・消費の持続的確保」「財政健全化」などと整理した上で、居住誘導区域では日常生活に必要な病院等の立地を促進するとともに、市町村単位を超えた広域連携の促進と小規模市町村に対する都市圏全体の協力働きかけなどを提案した。同省は、居住誘導地域の生活利便施設の誘導・ハザードエリアへの住宅立地抑制などを来年の通常国会で制度化する。

◎被災宅地の危険度判定で支援マニュアル ― 国交省
 国交省は8月22日、大規模地震時の円滑な被災宅地の危険度判定に向け「広域支援マニュアル」「情報共有マニュアル」を策定した。大地震では多くの自治体も被災するため国等が判定実施の調整を行うほか、地震発生後、直ちに被災宅地数を推計するとともに必要な判定士数を算出。さらに判定活動をどのエリアから着手すべきかの判定方法も提示する。
 一方、文科省は8月9日、公立学校施設の耐震改修状況のフォローアップ調査結果を発表した。公立学校の耐震化は2015年度完了を目指しており、2019年4月の耐震化率は99%だが、なお未耐震化が小中学校894棟、幼稚園190棟、高校391棟など合計1,501棟あった。また屋内運動場等の吊り天井等の落下防止対策でも小中学校368棟、高校423棟など合計799棟あった。さらに、47市町村では未耐震化施設であることを公表していなかった。また、同省は8月7日発表した学校施設のブロック塀の安全対策状況(19年4月現在)によるとブロック塀が無い・撤去済が3万5,305校(69%)、安全確認済が6,343校(12%)、2020年3月までに完了予定が3,915校(8%)だった。

◎中間報告受け圏域行政等の審議再開 ― 地制調小委
 第32次地方制度調査会の専門小委員会は8月29日、先にまとめた中間報告を受けて来年夏の答申に向けた審議を再開した。今後、①地域の枠を超えた圏域の広域連携②組織の枠を超えた公・共・私のベストミックス③技術を生かした対応 ― に向けた地方行政体制のあり方のほか、地域イノベーションを生み出す職員育成や地方議会への多様な人材の参画促進策などを審議。また、来年3月末で期限を迎える現行の合併特例法の対応も審議する。同日の小委では、連携中枢都市圏などの連携をめぐり意見交換したが、市川会長が「今困っていることだけでなく、2040年からの問題解決のための連携の議論も必要だ」と述べ、そのため「地域の未来予測」(地域カルテ)の必要性も指摘した。
 一方、消費者庁は8月19日、政府関係機関の地方移転の一環として徳島県に試行的に設置している「消費者行政新未来創造オフィス」を2020年度から「消費者庁・新未来創造戦略本部」として恒久的拠点とすることを決めた。なお、国会対応・危機管理・司令塔機能などは東京に残す。政府は16年に政府関係機関の地方移転の方針を決めたが、全面的移転は21年度中に京都に移転する文化庁だけにとどまる。

◎2020年度予算概算要求を発表 ― 総務省
 総務省は8月30日、2020年度予算概算要求を発表した。重点課題に人づくり革命、地方一般財源総額の確保、スマート自治体の推進などを掲げ、総額17兆1,928億円(前年度比3.4%増)を要求。うち地方交付税は同4.0%増の16兆8,207億円と交付税率引上げを事項要求した。新規事業では、東京一極集中是正へ豊かなライフスタイル提示による地方への人の流れ創出0.4億円、地域の基幹産業中心の地域経済活性化0.7億円、都市部企業と連携したIT人材育成1.2億円、公民連携の遊休公共施設活用1億円などを計上。また、ソサエティ5.0時代に向け地域課題解決の5G活用70.1億円、自治体の情報システム標準化6.3億円などを計上。併せて、マイナンバーカードの普及・利活用で1,736億円(今年度214億円)と大幅増額計上した。
 一方、地方六団体は8月28日の自民党総務部会で来年度予算について要望した。地方交付税など一般財源総額の確保、教育無償化の必要財源は「一般財源総額の同額ルール」の枠外で全額措置、予防から復旧・復興を見据えた施設整備交付金の創設などを求めるとともに、国民健康保険・介護保険の調整交付金などの配分方法見直しに反対を訴えた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)