地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年7月中央の動き


中央の動き


◎マイナンバーカードの普及促進で方針 ― 政府
 政府のデジタル・ガバメント閣僚会議は6月4日、マイナンバーカードの普及・利活用の促進方針を決めた。今通常国会で成立した改正健康保険法で2021年3月から同カードの健康保険証利用が本格運用するため22年度中に全ての医療機関での導入を目指しシステム等の早期整備を支援する。また、各市町村がマイナンバーカード交付円滑化計画を策定。併せて、国家公務員・地方公務員の今年度中の同カード取得推進も明記した。このほか、①住民票作成時の同カード申請手続の整備②平日・夜間の臨時窓口設置など取得申請事務の簡素化などにも取り組むとした。
 また、政府は6月14日、世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の改定を閣議決定した。デジタル技術の恩恵を誰もが享受できるデジタル社会に向けた重点計画をまとめるほか、全自治体がマイナポータルに手続きの登録ができるよう、今年度は引っ越し(転入・転出、転居)分野のガイドラインを作成。また、システム等の共同利用で運用コストを23年度に3割削減(15年度比)を目指すとした。


◎スマート農業へ新技術実装推進プログラム ― 政府
 政府は6月7日、農林水産業・地域の活力創造本部を開き、スマート農業に向けた農業新技術の現場実装プログラムを了承した。ICTやロボット技術など農業新技術を6分類に整理しそれぞれ普及に向けたロードマップを示すとともに、新技術を農業現場に実装するための取組を示した。併せて、新技術導入による効果(2025年)として水田作(平場)では労働時間が約50%、露地栽培では約30%の削減が可能だとした。
 また、政府は6月18日、ジビエ利用拡大の関係省庁連絡会議を開き、今後の対応方向を決めた。野生鳥獣による農作物被害が164億円(2017年度)に達するため政府は「国産ジビエ認証制度」を創設、ジビエ利用量の倍増目標(2019年度約2,600トン)もたてたが、捕獲頭数に対するジビエ利用率は8%に留まっている。このため、①利用可能な捕獲鳥獣の全てが処理加工施設に搬入できるよう同施設整備の促進②遠距離から良質な鳥獣を運べるジビエカー導入の支援と適切な衛生処理ができるジビエハンターの育成③ペットフード向け処理加工設備の追加整備の支援 ― などを進める。
◎国土強靱化年次計画2019を決定 ― 政府
 政府は6月11日、国土強靱化推進本部を開き2019年度の国土強靱化計画を決定した。最近の多発する災害を踏まえて新たに策定した。同年度に取り組む主要施策に①堤防やダム、排水施設の整備・機能強化の事前予防対策②主要施設や避難地・避難路保全のための土砂災害対策③住宅、学校、道路橋梁、水道施設等の耐震化 ― を掲げるとともに、新たに都道府県の医療ハザードマップを作成する。さらに、市町村に国土強靱化地域計画の策定を要請。また、①避難勧告発令に必要な情報提供②避難指示発令の判断からLアラートへの情報発信までのシステム構築 ― などを進めるとした。
 一方、農水省は6月11日、防災重点ため池の再認定を発表した。昨年7月豪雨で多くのため池が決壊したため新たな選定基準を設定。その結果、ため池総数は16万6,638箇所(今年5月末時点)で、うち6万3,722箇所が再選定(従前基準の約5倍)された。同省は今後、市町村がため池マップを作成・公表し避難判断に必要な情報を地域住民に提供。また、施設の補強対策を優先順位をつけて実施するとしている。
◎所有者不明土地対策で基本方針 ― 政府
 政府の所有者不明土地対策関係閣僚会議は6月14日、対策推進基本方針を決めた。不明土地の発生予防のため①相続登記申請を土地所有者に義務付け②遺産分割の期間制限③土地所有権放棄を可能とする方策 ― などを検討。また、登記簿と戸籍等の連携で関係行政機関が土地所有者情報を把握できる仕組み構築と、国内外を問わず土地所有者の所在地を把握できる仕組みも検討する。このほか、不明土地の円滑利活用に向け地域福祉増進事業の拡大・財産管理制度も見直す。
 一方、国交省の国土審議会・国土調査検討小委員会は6月20日、報告書をまとめた。所有者不明土地対策の基礎データとなる地籍調査の円滑・迅速化・利活用に向け、都市部では街区を形成する道路等と民地を先行的に調査し国土調査法上の認証をした上で公表。山間部ではリモートセンシングデータを活用し現地での立会い測量作業の効率化を提案。また、未着手・休止市町村の解消に向け地籍アドバイザーの選任と重点派遣を進める。このほか、災害リスク情報に活用できる土地履歴調査のカバー範囲を拡大する。
◎外国人材の受入・共生で新たな対応策 ― 政府
 政府は6月18日、外国人材の受入・共生関係閣僚会議を開き、総合対応策を決めた。4月からスタートした特定技能の大都市圏への集中防止策として①建設分野では特定技能試験実施法人が求人求職を斡旋②介護分野ではマッチングする自治体に財政支援③家賃補助する自治体に地方財政措置 ― などを行う。また、外国人の雇用促進支援のため入管庁やハローワークなどを集約した「外国人共生センター」を設置する。なお、全国知事会は6月6日、「外国人材の受入れ・共生に向けた提言」を政府に要請した。外国人材の受入は地域社会に大きなインパクトを与えるとし、①特定技能の分野は地域の意向を踏まえ柔軟に追加②外国人の日本社会適応の施策方針策定と財政措置③医療・保険・福祉サービスの環境整備 ― などを求めた。
 また、文科省は6月17日、外国人受入・共生のための教育推進チーム報告書を発表した。小・中・高校で外国人の児童・生徒が増加しているため、①多言語化への対応や指導者派遣の仕組み構築②外国人の子どもの就学状況の把握と就学促進③夜間中学校の設置促進や日本語指導を含む教育活動の充実 ― などを提言した。
◎地財審と財政審が意見を提出 ― 総務省・財務省
 総務省の地方財政審議会は6月10日、「時代を超えて多様な地域を支えるための地方財政改革」と題する意見を総務相に提出した。地方一般財源総額確保のため社会保障制度改革や人づくり革命、児童虐待防止対策、会計年度任用職員制度等に伴う歳出を地方財政計画に計上すべきだと指摘。併せて、臨時財政対策債の発行額を縮小し残高の圧縮にも取り組むよう求めた。また、スマート自治体の推進や公営企業の経営改革、公共施設の適正管理も本格的に推進すべきだとした。
 一方、財務省の財政制度等審議会は6月19日、「令和時代の財政の在り方に関する建議」を財務相に提出した。令和時代は「受益と負担の乖離と将来世代へのツケ回しに歯止めを掛ける時代」にすべきだと強調。社会保障では「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」の原則を徹底し年齢でなく能力に応じた負担への転換を提言。地方財政では、一般財源総額同水準ルールで歳出の伸びを抑制、地方交付税や地方税収の増加分は臨時財政対策債の縮減に充てるべきだと指摘。10月からの幼児教育無償化で不要となる地方単独事業は将来世代へのツケ回し軽減に活用すべきだとした。
◎骨太の方針2019を閣議決定 ― 政府
 政府は6月21日、経済財政運営と改革の基本方針2019を閣議決定した。「令和新時代・ソサエティ5.0への挑戦」として、高齢者雇用など成長戦略実行計画の強化や就職氷河期世代の支援プログラムなどを盛り込んだ。また、新経済・財政再生計画ではデジタル・ガバメント等による行政改革を進める。一方、社会保障では一人当たり医療費・介護費の地域差縮小に向けインセンティブ評価指標の強化、国民健康保険の法定外繰入解消を明記したが、「給付と負担のあり方」は来年の骨太方針2020に先送りした。地方行財政改革では、臨時財政対策債の発行圧縮で財政健全化につなげるほか、行政コストの効率化に向け全ての行政分野で多様な広域連携を推進するとした。
 一方、6月6日に骨太方針の策定をめぐり「国と地方の協議の場」が開催された。席上、地方六団体は①国保の普通調整交付金の配分方法見直しは容認できない②介護保険の保険者機能強化推進交付金に調整交付金活用は断じて行わない③トップランナー方式で生み出された財源は必ず地方に還元④幼児教育・保育無償化に伴う保育需要増などの影響への支援策は国の責任で講じる ― などを要請した。
◎まち・ひと・しごと創生基本方針2019を決定 ― 政府
 政府は6月21日、第2期「まち・ひと・しごと総合戦略」(2020-24年度)策定に向けた基本方針を閣議決定した。第1期戦略(15年度~)で掲げた4つの基本目標のうち「東京圏への転出入均衡」は「達成が厳しい」と断念。新たな視点に「将来的な地方移住につながる『関係人口』の創出・拡大」を目指すとした。併せて、高校卒業段階で県内に留まる者が少ないため高校改革も掲げた。このほか、①企業版ふるさと納税の手続の簡素化・迅速化と地方への企業の本社機能移転②地域企業への地域人材支援戦略パッケージ推進③ソサエティ5.0実現に向けた「ふるさと応援人材派遣制度」創設 ― などを盛り込んだ。
 一方、厚労省は6月7日、2018年の人口動態統計を発表した。出生数が91万8,397人で過去最少を記録する一方、死亡数は136万2,482人で戦後最多。自然減数が44万4,085人で過去最大の減少となった。また、合計特殊出生率は1.42で、前年より0.01ポイント低下した。都道府県別では、沖縄の1.89をトップに島根1.74、宮崎1.72、鹿児島1.70、熊本1.69で高い。逆に、東京1.20を筆頭に、北海道1.27、京都1.29、宮城1.30、秋田1.33、神奈川1.33で低い。
◎地域公共交通計画の策定支援など提言 ― 国交省
 国交省の地域交通フォローアップ・イノベーション検討会は6月25日、提言をまとめた。公共交通サービスの縮小などの現状を踏まえ、国・自治体や事業者、さらに技術革新の観点から持続可能な交通ネットワークの維持・確保策を提言した。具体的には、地域公共交通に関する広域的法定計画の策定やその実現のための補助制度などを提言。さらに、MaaSやAI活用オンデマンド交通など新たな技術の社会実装の環境整備も提言した。なお、国交省が同日公表した2019年版の交通政策白書では、「モビリティ革命~移動が変わる、変革元年」と題して技術革新による社会やサービスの変化を整理した上で、MaaSについて現在・将来に的確に対応が可能となるよう早期検討が必要だとした。
 また、国交省は6月21日、地方鉄道の誘客促進事例集を発表した。由利高原鉄道(「おもちゃ列車」の運行等)、しなの鉄道(クラウドファンディングを活用した資金調達によるラッピング列車の実現)、高松琴平電気鉄道(沿線の温泉施設や映画館と連携した企画乗車券の販売)など28事例を紹介している。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)