地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』

2019年5月中央の動き


中央の動き


◎新たな過疎対策で中間的整理を公表 ― 総務省
 総務省の過疎問題懇談会は4月5日、新たな過疎対策の中間的整理を公表した。現行過疎法が2021年3月に期限を迎えることを踏まえ、今後の過疎対策の方向性等を整理した。来年夏までに新たな過疎対策の理念や対象地域・支援制度などをまとめる。現在、過疎地域は817団体が指定されているが、今後は全国で人口減少が進むため「過疎対策の意義」を新たに捉え直す必要性を指摘。一方、今後も過疎対策事業債を中心とする現行法の支援策継続を基本とすべきだとした。
 また、全国町村会は4月8日、自民党の「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業推進法案」と超党派の「青少年自然体験活動推進法案」の早期成立を各党に要請した。いずれも議員立法。地域人口急減対処法案は、人口急減地域の農林漁業・製造業・サービス産業などが設立する特定地域づくり事業協同組合を都道府県知事が認定し、各事業に従事する機会の提供や人材育成など特定地域づくり事業を展開する。国や地方自治体は、同組合への情報提供・指導等の援助や財政措置することなども盛り込んでいる。


◎女性首長と無投票当選が増加 ― 統一地方選挙
 統一地方選挙が4月7日と21日、11道府県知事・142市区町村長、41道府県議会・602市区町村議会で実施された。統一率が27%に低下したが、投票率も11道府県知事選が47.72%、6政令市長選50.86%、11特別区長選44.21%、59市長選47.50%、66町村長選64.98%で、特別区長選を除きいずれも過去最低。41道府県議選も44.08%、17政令市議選43.28%、20区議選42.63%、283市議選45.57%、282町村議選59.65%といずれも過去最低を更新した。これを反映してか、無投票当選も増加。津市や高松市など27市長と、55町村長、さらに104市町村議会でも無投票当選した。
 そんな中、目立ったのが女性の躍進。市長選で6人(加茂市、諏訪市、木津川市、鈴鹿市、芦屋市、周南市)が当選。また、41道府県議選では女性当選者が過去最多の237人となり、その割合も10.4%に上昇。294市議選でも女性1,239人が当選。過去最多となった。
◎バリアフリー基本構想でガイドライン ― 国交省
 国交省は4月12日、バリアフリー基本構想等作成のガイドラインを発表した。昨年施行された改正バリアフリー法で、移動等円滑化促進方針(マスタープラン)制度が創設されたことを受けて、既存のマスタープランのガイドラインとマニュアルを1つに統合。市町村がマスタープランを作成する場合の作成手順や各段階のポイント、マスタープランの評価・見直しのポイント、さらに都道府県の関与強化が規定されたことを踏まえ、関与を行う際の参考となる市町村の意見や事例なども紹介した。また、同省は4月10日、パーキング・パーミット制度事例集を作成した。障害者駐車区画を利用できる利用証制度の未導入自治体が導入する際に参考となる内容などを紹介した。
 また、政府の未来投資会議は4月3日、地銀・乗合バスの経営統合・共同経営を提案した。高齢化で乗合バス維持の必要性が高まっているが、特に地方での事業収支が悪化。このため、中心市街地を運行するバス事業者の運行間隔等での共同経営を認め、その収入をプールすることで低需要の山間部等の路線を維持するよう提案。共同経営の認可要件なども示した。
◎スーパーシティ構想法案を了承 ― 特区諮問会議
 政府の国家戦略特別区域諮問会議は4月17日、スーパーシティ構想を盛り込んだ特区法等改正案を了承した。同諮問会議が新たな規制の特例措置を首相に求め、首相が各大臣に同特例措置の検討を要請する。特例措置の具体例にはキャッシュレス化や行政手続ワンスオンリー化、遠隔教育・医療などを挙げた。なお、当初原案で検討された、いわゆる「条例による法令の上書き」は削除された。諮問会議から首相への要請の際も「住民合意を証する書面や条例による規制改革の案等を添付」が追加された。安倍首相は、会合で「スーパーシティ構想を推し進めることで、特区制度による岩盤規制改革を更にパワーアップしたい」と述べ、関係府省への協力を要請した。
 一方、総務省は4月15日、2019年度の新たな広域連携促進事業の委託事業の提案募集を開始した。まち・ひと・しごと創生総合戦略の連携中枢都市圏の形成に向けて調査する。募集する事業は①連携中枢都市圏の形成②都道府県と市町村との連携③三大都市圏での水平的・相互補完的、双務的な役割分担 ― の3分野。
◎地域活性化・社会資本整備など審議 ― 諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は4月19日、地域活性化と社会資本整備について議論。地方の景気好循環を人口流失に歯止めをかけるチャンスにすべきだとし、地域開発への民間投資を呼び込む自治体を後押しするとともに、副業やテレワーク、二地域居住など地方移住の環境を整備するなど地域への経営・プロ人材の移動促進策の検討を提案した。併せて、訪日観光・農林水産業・対日直接投資の3分野に取り組む自治体の支援も強化すべきだとした。また、水道、電力・ガス、郵便などのユニバーサル・サービスを過疎化・人口減少下でも維持できるようネットワークと財源の在り方を検討するよう求めた。
 また、政府は4月16日、地域への対日直接投資・集中強化・促進プログラムを決定した。「2020年までに対日直接投資残高を35兆円に倍増」の目標達成に向け、地方自治体への支援を重点化し、「3つの不足」(知名度不足、人材不足、連携不足)解消のため、①トップセールスや外国企業招へいの事業強化②重点自治体の職員研修など誘致体制の強化③地方創生推進交付金の活用など誘致施策の強化 ― などに取り組むとした。
◎2040年の世帯数将来推計を発表 ― 人口問題研究所
 国立社会保障・人口問題研究所は19日、都道府県別の世帯数の将来推計(2015年~2040年)を発表した。全国の世帯数は15年の5,333万世帯が40年には5,075万世帯に減少(4.8%)。世帯人員も2.33人が2.08人に減る。全都道府県で減少し、東京、北海道、高知では2人を割る。一方、単独世帯は1,841万世帯が1,994万世帯に増加(8.3%)、全世帯に占める割合も34.5%から39.3%に上昇。東京(48.1%)など8都道府県では4割台となる。さらに、世帯主65歳以上の世帯が1,917万世帯から2,242万世帯に増加(16.9%)。その割合も36.0%から44.2%に上昇する。秋田(57.1%)はじめ青森、岩手、山形、福島、山梨、奈良、和歌山、高知、鹿児島の各県で過半数を超える。
 一方、総務省は4月12日、2018年の人口推計(10月1日現在)を発表した。総人口は1億2,644万人で、前年より26万人(0.21%)減少。8年連続の減少となる。うち15歳未満は1,541万人で同17万人減少、割合は12.2%で過去最低に。15~64歳も7,545万人で同51万人減少、割合は59.7%で過去最低となった。逆に、65歳以上は3,557万人で、同42万人増加。割合は28.1%と過去最高となる。都道府県別では、7都県で増加、40道府県で減少した。
◎ワークライフバランスでアンケート調査 ― 政府
 政府は4月19日、国家公務員の2019年度ワークライフバランス推進強化月間と「ゆう活」の実施方針を決めた。強化月間の7~8月中に全府省が「ゆう活」と超過勤務縮減、フレックスタイム制の活用、テレワークの積極的実施(7月22日~8月2日に集中実施)などに取り組む。併せて、初めて実施したワークライフバランスの職員アンケート結果(各府省6万4千人対象)を公表した。「働き方改革」について43%が「進んだ実感あり」と回答。「育児・介護等と両立して働ける」も59%が「実感あり」と回答し、「男の産休が取得しやすい雰囲気」も55%がイエスと答えた。
 一方、総務省はこのほど、会計年度任用職員制度の準備状況調査結果をまとめた。改正地方公務員法等施行が1年余となったことから、改めて①会計年度任用職員制度の移行②同職員の給与・期末手当③募集・任用等④再度任用時の空白期間の設定⑤休暇等 ― について実態を調査。同結果を踏まえ、施行後にパートタイム勤務・フルタイム勤務とも減少する見込みだが、単に財政上の制約を理由に移行を抑制することは改正法の趣旨に沿わないなどの留意点を通知した。
◎外国人材の日本語教育で提言 ― 規制改革推進会議
 政府の規制改革推進会議は4月22日、外国人材への就労のための日本語教育の枠組み整備で意見をまとめた。現在の日本語学校は留学生を目的としているため、国は「就労に役立つ日本語教育」のガイドラインを地方自治体や企業に示すべきだと指摘。併せて、地方自治体設立の「多文化共生総合相談ワンストップセンター」に日本語教育機能を設けて企業や日本語教育関係者・自治体等と外国人労働者が交流できるよう提言した。また、内閣府は4月11日、外国人材による地方創生支援制度を発表した。日本の地方自治体への就労を希望する外国人材と、外国人材の雇用を希望する自治体のマッチングを支援する。対象地域や業務内容、報酬(日本人と同等)などは受入自治体が決定する。
 また、規制改革推進会議は同日、各種国家資格の旧姓使用の範囲拡大を議論。厚労省は現在、旧姓を使用できない保育士・介護福祉士なども使用できるよう見直す方針を示した。なお、4月17日公布された改正住民基本台帳法施行令で、住民票やマイナンバーカードへの旧姓の併記が可能となった。
◎全国都道府県財政課長等会議を開催 ― 総務省
 総務省は4月25日、全国都道府県財政課長等会議を開き、当面する地方行財政の課題等を説明した。10月の消費税率引上げに向け、軽減税率や公共料金への対応、需要の平準化対策の取組などを要請。また、①緊急自然災害防止対策事業への積極的対応②人口減少で経営が厳しくなる公営企業や様々な公共施設の管理・施設整備の広域化③医療介護提供体制の改革 ― などに取り組むよう求めた。さらに、ソサエティ5.0時代に向けAI化など行政の効率化、システムの標準化、行政手続のオンライン化への対応も要請。その上で、近く議論が本格化する「骨太の方針」には自治体のこれらの取組が反映されると指摘した。
 一方、同省は4月19日、人口減少社会の持続可能な公営企業制度の在り方研究会を発足させた。人口減少や老朽化施設の更新などの厳しい環境に向け、1961年以来大きな改正をしていない地方公営企業法の改正も視野に今後の地方公営企業制度の在り方を検討する。また、同省の地方単独事業(ソフト)の見える化検討会は報告書を発表した。各自治体が実施する地方単独事業の趣旨や目的が共通する経費を一つの区分とするなど新たな区分を示した。各自治体には20年度に作業を終えるよう、その作業日程も示した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)