地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年4月中央の動き


中央の動き


◎地域経済システム確立へ検討会設置 ― 内閣府
 内閣府は3月5日、地域経済社会システム・働き方検討会を発足させた。第2期「総合戦略」の策定を視野に、人口減少・高齢化が進む地方の維持・発展に向けて、①強靱な地域経済システムの確立②新しい産業の創出③産業人材の流動化④それらの実現に向けた各主体の取組 ― などを検討する。具体的には、事業者の収益力強化と労働者の所得水準向上、シェアリングエコノミーなど新たな仕組み、地域での雇用機会創出と都市部大企業の人材等の地域での活躍などを検討する。
 一方、厚労省・経産省主催の「スマホで見つける地方の仕事シンポジウム ― 大都市圏の早期退職者と地方の中堅・中小企業のマッチング促進」が3月18日、開催された。厚労省が、地方の中小企業の求人情報を民間求人サイトに掲載される枠組み構築などの取組を紹介。次いで、パネル討論では、参加市長から「地方ではがんばらなくても良い生活ができる」(小林眞八戸市長)、「地方でも仕事で世界に羽ばたける」(國定勇人三条市長)、「東京に出た人が戻れる環境が必要」(今井竜五岡谷市長)など、地方のメリットと地方回帰の仕組みづくりの必要性などが強調された。


◎第2期「総合戦略」策定へ検討会発足 ― 内閣府
 内閣府は3月11日、第2期「まち・ひと・しごと総合戦略」策定有識者会議を発足させた。現在の総合戦略が2019年度で最終年を迎えるため、第2期「総合戦略」(20~24年度)を検討する。第1期総合戦略で掲げた地方に仕事・地方への新しい人の流れをつくるなどの基本目標(KPI)や地方創生推進交付金などの支援策を検証。その上で、新たに①地域の担い手の掘り起こしや育成・活用など人材育成・関係人口②人材ノウハウの地方への還流③未来技術④少子化対策・全世代活躍まちづくり ― などを検討。今年5月に中間報告、12月にも第2期「総合戦略」をまとめる。
 一方、総務省は3月22日、2018年度の地域おこし協力隊の活動状況を発表した。隊員数は5,359人で前年より529人増加。受入自治体は1,061団体で、同64団体増えた。なお、隊員の38%は女性隊員で、任期終了後も約6割が同じ地域に定着している。石田総務相は、同日の会見で「地域おこし協力隊は持続可能な地域社会の構築に不可欠な人材と強く実感。引き続き6年後に8,000人に向けて取り組みたい」と述べた。
◎議員報酬の在り方で最終報告 ― 全国町村議会議長会
 全国町村議会議長会は3月12日、議員報酬の在り方の最終報告を発表した。町村議会では、議員定数や議員報酬の削減が続いているが、定数・報酬の削減は議会活動への関心低下や「議員のなり手不足」にもつながると指摘。議会力アップのため、議員報酬とともに政務活動費、期末手当、費用弁償は必要だと訴えた。また、議員定数では1常任委員会に少なくとも7~8人を提案した。なお、町村議会実態調査(2018年7月1日現在)によると、議員定数は1万1,138人で1町村当たり12.0人、女性議員は1,100人(10%)。議員報酬は21万4,533円で、前年より807円アップした。
 一方、自民党は3月18日、地方議会の課題プロジェクトチームを発足させた。課題に議員定数の削減、無投票当選の増加・投票率低下、廃止された地方議員年金などを挙げた。7月にも意見を取りまとめる。また、石田総務相は3月1日の会見で、全国都道府県議会議長会など議会3団体に「議員のなり手不足に対する検討を要請した」ことを明らかにした。また、全国市議会議長会はこのほど、政務活動費Q&Aをまとめた。関連条例や運用ルール見直しなどの活用を想定して過去の住民訴訟の判例なども盛り込んだ。
◎2019年版の地方財政白書を発表 ― 総務省
 総務省は3月15日、2019年版地方財政白書を発表した。歳入総額は101兆3,233億円、前年度比0.1%減、歳出総額は97兆9,984億円、同0.1%減で、実質収支は2兆379億円の黒字だった。また、経常収支比率は93.5%で、同0.1ポイント上昇。普通会計が負担すべき借入金残高は195兆6,383億円、同0.9%減少。積立金残高は21兆9,778億円で、同4,273億円増加した。なお、実質赤字比率と連結実質赤字比率で早期健全化基準超はゼロだが、実質赤字が3市町村、連結実質赤字が1市町村あった。財政再生基準超は夕張市だけ。
 また、総務省は3月22日、2018年度の特別交付税交付額を発表した。総額は1兆305億円(前年度比5.2%増)で、災害関連に1,141億円交付した。なお、ふるさと納税収入が多額の泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町はゼロだった。石田総務相は同日の会見で、不交付団体を上回る財政力があるためで「過度な返礼品等のペナルティではない」と強調。一方、総務省は3月28日の担当者会議で6月の新制度に向けた新基準を説明。5月に対象自治体の指定するが、その際、過去の寄付募集の実態等も考慮する。
◎児童虐待防止対策強化へ関連法案を閣議決定 ― 政府
 政府は3月19日、児童虐待防止対策強化の児童福祉法等改正案を閣議決定した。児童の「しつけ」で親権者の体罰禁止を明記。児童相談所の体制強化のため①一時保護等の介入対応職員と保護支援職員を分ける②弁護士や医師・看護士を配置する。さらに、施行後5年を目途に中核市・特別区での設置も検討。また、関係職員は知り得た秘密を漏らさない、DV対策との連携強化も盛り込んだ。併せて、検討事項に民法の懲戒権の関係、一時保護の手続き、児童の意見表明権の保障の仕組み、児童福祉の資格の在り方なども挙げた。
 一方、政府の未来投資会議は3月20日、全世帯型社会保障における疾病・介護の予防・健康インセンティブを提示した。予防・健康づくりは社会保障制度の持続可能性につながるが、予防事業は市町村国保・介護保険ともに1%で低いと指摘。このため、70歳までの就業機会の確保と併せて、保険者努力支援制度(国保)や介護インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)の強化を提案。安倍首相は「今年夏にまとめる成長戦略の実行計画に向け、保険者インセンティブ強化の具体化」の検討を関係閣僚に指示した。
◎障害者雇用促進法改正案を閣議決定 ― 政府
 政府は3月19日、障害者雇用促進法改正案を閣議決定した。国・地方自治体に障害者雇用の努力義務を明記。その上で、国・地方自治体は障害者活躍推進計画を作成するほか、雇用促進業務を担当する障害者雇用推進者と障害者職業生活相談員を選任する。また、障害者雇用率の算定を明確化するとともに、障害者確認の書類保存と厚労相の報告徴収・勧告権も制度化する。障害者雇用をめぐっては昨年、国・地方自治体で不適正算定が表面化。実雇用率(2017年6月時点)が地方自治体は2.40%が2.16%に、国は2.50%が1.17%に低下、不足数もそれぞれ4,734人、3,814人に増えた。
 一方、厚労省と農水省は3月20日、障害者の農業分野での就業拡大へ農福連携推進フォーラムを開催した。農林水産政策研究所の吉田行郷氏は、障害者も農作業の切分で対応できるとし、人手不足の農業と就業希望の障害者福祉施設のマッチングの必要性を強調。眞保智子法政大学教授は地方自治体に「農家や農作業者と共通言語で意思疎通できる人材の育成」を求めた。このほか、各地の農福連携の実践事例が紹介された。
◎新規就農の促進対策で行政評価・勧告 ― 総務省
 総務省は3月22日、新規就農促進対策の行政評価と勧告を発表した。新規就農参入者に対する研修受入農家の研修実施状況で就農率に差(84%、75%)があったほか、都道府県の普及指導活動の新規参入者への重点化で離農率に差(3.5%、4.8%)がみられた。さらに、離農理由の把握を詳細にしている都道府県農業会議の方が離農率が低いことも分かった。このため、①農業研修では農業機械の取扱・農業経営も含め研修内容を充実②新規参入者に重点的に指導・助言③離農理由の適格な把握、などを農水省に勧告した。
 一方、農水省は3月18日、農業用ドローンの普及・拡大に向けた官民協議会を設置した。ドローンを使った農薬や肥料の散布、種まき、生育状況の分析などに活用を図る。また、農水省・国交省は3月14日、2017年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)を発表した。全体では13.4%で前年より1.7ポイント上昇した。うち、国は1.9%(前年度1.9%)、都道府県3.7%(同3.0%)、市町村9.1%(同8.7%)。秋田県が50.5%(同36.8%)で最も高かった。
◎地方公務員の給与・定員の実態など発表 ― 総務省
 総務省は3月26日、地方公務員の給与実態・定員管理調査結果(2018年4月1現在)を発表した。ラスパイレス指数は99.2で前年と同じだった。うち都道府県100.1、指定都市100.3、市99.1、町村96.4で、前年に比べ都道府県が0.1ポイント低下、指定都市は0.4ポイント上昇した。団体区分別最高値は、神奈川県102.5、静岡市103.0、熱海市・三島市各103.6。最低値は鳥取県95.3、大阪市96.9、大分県姫島村79.6。なお、「わたり」は4団体が是正、6市・2町村でなお残る。
 一方、総職員数は273万6,860人で、前年より5,736人減少。ピークの1994年に比べ約55万人の減となる。一般行政部門は91万9,097人、前年比3,370人増加。防災や地方創生、子育て支援対応などが要因。教育部門は101万2,910人で同6,150人減少。警察部門は28万9,616人、消防部門は16万1,611人で、それぞれ同1,269人、967人増加した。なお、17年度の競争試験の受験者は49万8,529人で同2万2,141人減少。過去10年間では11年の約62万人をピークに一貫して低下。採用は6万2,268人(女性45%)で同722人増加した。
◎外国人材の受入で万全の対応を指示 ― 安倍首相
 政府は3月29日、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議を開き、4月からの外国人労働者の受入拡大に向け、特定技能制度や総合的対応策の進捗状況を確認。安倍首相は「新たな制度は深刻な人手不足に対応するため即戦力となる外国人材を受け入れるもの。新制度の円滑実施へ関係省庁が連携して対応する」よう指示した。なお、法務省が3月22日発表した2018年末の在留外国人は273万1,093人で前年より16万9,245人(6.6%)増加。今年1月1日現在の不法残留外国人は7万4,167人で同7,669人(11.5%)増えている。
 一方、総務省は3月22日、多文化共生推進に関する研究会報告を発表した。在留外国人の増加に先進的に取り組む自治体担当者を総務省が「多文化共生アドバイザー」に登録し、これから取り組む自治体に助言・ノウハウを提供する仕組みを創設。また、都道府県単位に「多文化共生地域会議」を開催し国の施策・全国の取組状況の紹介などを行うよう提案した。また、文科省は3月18日、日本に住む外国人の子どもの就学促進を各自治体に通知した。保護者への就学案内の徹底や学年入学で柔軟な対応を求めている。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)