地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年10月中央の動き


中央の動き


◎提案募集で各府省に再検討要請 ― 地方分権改革会議
 内閣府の地方分権改革有識者会議は9月5日、今年の提案募集方式の重点事項に対する関係府省からの第1次回答と同回答に対する地方3団体からのヒアリングを踏まえ、関係府省に再検討を要請した。今年の提案募集では地方から319件の提案があったが、関係府省の第1次回答では「対応困難」「検討中」などが多かった。このため、全国知事会は「義務付け・枠付けの見直しや地域公共交通関係の提案」で迅速な対応を要請した。また、政府は9月19日、農地転用許可権限等の指定市町村に宇都宮市、伊那市、見附市、福井市、桑名市の5団体を指定した。第5次地方分権一括法で農水大臣が指定する市町村が都道府県に代わり農地転用許可ができる。既に49市町村が指定されている。
 一方、内閣府は9月4日、地域魅力創造有識者会議の初会合を開いた。東京一極集中が継続しているため、企業や人が集まる拠点づくりに向けて①中枢中核都市の魅力向上策②若者のUIJターン推進に向けたわくわく地方生活実現政策パッケージの推進③小規模市町村等の魅力向上策 ― を検討。年内に報告をまとめる。


◎全国ため池緊急点検の結果発表 ― 農水省
 農水省は9月6日、全国ため池緊急点検の結果を発表した。今年7月の豪雨で32か所のため池が決壊。このため、全国8万8,133か所のため池を緊急点検した結果、応急措置が必要なため池が1,540か所確認された。農水省では、災害復旧事業などで整備を進める。
 一方、国交省も大規模広域豪雨の頻発化が今後も予想されるため、9月28日に社会資本整備審議会に水災害対策検討小委員会を設置。浸水被害・土砂災害を踏まえた水防災意識社会の再構築に向けた取組の検討を開始。また、9月27日に都市浸水対策検討会も発足させた。7月豪雨で甚大な内水被害が19道府県88都市で発生したことから、都市浸水の課題と対策などを探る。さらに、同日、異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能検討会を発足させた。7月豪雨では全国558ダムのうち213ダムで洪水調節を実施、うち8ダムでは流入量と同程度を放流する異常洪水時防災操作を実施、下流域地域の災害との関連が議論にのぼった。このため、異常豪雨の際の効果的なダム操作や情報提供のあり方などを検討する。
◎訪日外国人旅行者の受入で調査 ― 総務省
 総務省は9月7日、訪日外国人旅行者の受入の調査結果を発表した。政府は、2020年の外国人旅行者を4,000万人、地方部での宿泊7,000万人泊との目標を掲げているが、その担い手となる日本版DMOの取組の実態と課題を調べた。DMOの91%は「目指すべき地域の将来像」を設定しているが、行政機関からの権限・責任付与が不十分なため18%で支障を来したと回答。また、25%が法人間での役割分担が明確でないとした。このほか、地域住民の理解を得るための取組を42%で実施していた。これを踏まえ、地域の将来像だけでなく組織として達成すべき目標・成果も具体化するほか、明確な権限・責任の付与推進と同権限に伴う責任を果たせる体制確立が必要だとした。また、他団体と連絡調整会議を活用して合意形成を図ること、住民の目に見える活動や住民と観光客をつなぐ活動に取り組むなど日本版DMOの認知度向上も必要だとした。
 一方、観光庁は9月19日、魅力ある観光地づくりや訪日外国人旅行者の誘致に貢献した団体の観光庁長官表彰の対象を熱海市、伊江島観光協会、北九州産業観光センター、田辺市瀧野ツーリズムビューロー、㈱ぐるなびの5団体に決めた。10月1日に表彰する。
◎保育所の定員・待機児童数など発表 ― 厚労省
 厚労省は9月7日、保育所等の定員や待機児童の状況を発表した。今年4月1日現在の保育所等は3万4,763か所で、前年より1,970か所(6.0%)増加。定員は280万579人で同9万7,224人(3.6%)増え、利用児童数も261万4,405人、同6万7,736人(2.7%)増えた。このため、待機児童は1万9,895人で前年より6,186人減った。しかし、待機児童のいる市町村は435団体で前年より15団体増えた。首都圏と近畿圏の7都府県と政令市・中核市で全体の7割を占める。なお、利用児童数の増加が100人を超えた市町村は181団体あり、うち横浜市2,738人、さいたま市2,057人で多い。
 また、厚労省と文科省は9月14日、新・放課後子ども総合プランを策定した。今後も共働き家庭の児童数増加が見込まれるため「小1の壁」打破に向けた放課後児童クラブ、放課後子ども教室を追加整備する。具体的には、19~23年末までに約30万人分の受け皿を整備し利用児童を約122万人から約152万人に増やす。また、全ての小学校区で両事業の一体型を1万か所以上で実施、新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施するなどとした。
◎遊休農地の措置状況を発表 ― 農水省
 農水省は9月7日、2017年の遊休農地の措置状況を発表した。各市町村が毎年農地の利用状況を調査し遊休農地を確認しているが、耕作されていない1号遊休農地は9万2,454㌶、利用が劣っている2号遊休農地は6,064㌶で、合計9万8,519㌶だった。なお、農地中間管理権の取得協議勧告の継続農地が74㌶あり、市町村は固定資産税の課税を強化する遊休農地に決定する。また、同省は9月7日、2017年の木質バイオマスエネルギー利用動向を発表した。全体の木材チップ量は873万トンで前年より13%増加。うち間伐材・林地残材等は264万トン、製材等残材が150万トン、建設資材廃棄物が413万トンだった。なお、間伐材・林地残材等の利用は、北海道35万トン、宮崎県27万トン、鹿児島県20万トン、大分県19万トンなどで多い。
 一方、環境省は9月18日、都道府県の鳥獣行政部局内の鳥獣保護・管理専門職員の配置状況(2018年4月)を発表した。鳥獣行政担当職員は4,361人いるが、うち専門職員は37都道府県で148人だった。1都道府県当たり3.1人で、団体別では長野県15人、兵庫県14人、北海道・島根県各13人などで多い。
◎ふるさと納税の見直しへ制度改正の方針 ― 総務省
 総務省は9月11日、ふるさと納税の返礼品見直し状況を発表した。昨年と今年の2回にわたり高額・地場産品以外の返礼品の見直しを要請していた。しかし、9月1日現在、返礼割合3割超の返礼品送付団体が246団体あり、うち72団体は近く見直すが、174団体は未定・見直し意向無しだった。また、235団体が地場産品以外を送付、うち190団体は見直ししていない。
 これを受けて、野田総務相は同日の記者会見で、「これまでと同様に見直し要請だけでは自発的見直しが期待できない。一方で見直し団体から『正直者が馬鹿をみないように』との声もある」と指摘。「過度な返礼品を送付している団体は、ふるさと納税の対象外とすることもできるよう制度の見直しを検討することにした」と述べた。年内にも見直し案をまとめ来年度税制改正に盛り込む方針も示した。
 また、梶山地方創生担当相は9月14日、企業版ふるさと納税の優良事例に対する大臣表彰制度を創設したと発表した。自治体と企業の2部門で5件を来年1月に表彰する。企業版ふるさと納税では全国494事業に対し総額1,262億円の寄附が集まっている。
◎農村価値創生と観光・交流で報告書 ― 全国町村会
 全国町村会は9月15日、「これからの地域づくりと農村価値創生 ― 観光・交流を手がかりに」と題する報告書をまとめた。田園回帰や農泊など農山漁村と結びつく関係人口を「農山漁村の新たな価値発見者」と位置づけ、「外からの視点」「内からの視点」とが出会う「関わりの場」が農山漁村の価値を発見する入り口になると指摘。観光・交流からの農村価値創生に向けて、①農村価値創生政策の構築と国・自治体の政策連携②関係人口の見取り図作成と関係人口ネットワークづくり③関わりの場づくりへ「地域みがき士」サポーター制度創設④インバウンド受入れの仕組づくり⑤農泊プラットフォームの構築 ― などを提言した。
 併せて、全国町村会は同日、田園回帰・インバウンドと農山村 ― 新しい価値発見者と地域づくりをテーマに「都市・農村共生社会創生シンポジウム」を開催した。㈱美ら地球の山田拓氏が、飛騨古川で里山や民家を外国人にサイクリングで紹介する事業を紹介。合同会社とびしまの松本友哉氏は、山形県の離島・飛島で民宿やカフェ、島内観光など若者10人の取組事例を報告した。また有限会社咲楽の内田咲子氏は島根で家業の和菓子屋と地域起こしの取組事例を紹介した。
◎統計からみた我が国の高齢者を発表 ― 総務省
 総務省は9月16日、統計からみた我が国の高齢者(2018年9月15日現在)を発表した。総人口が前年より27万人減少する中、高齢者は44万人増加。また、高齢者の割合も28.1%と過去最高を更新、さらに70歳以上高齢者の割合が初めて20%を超えた。このほか、高齢者の都道府県間の人口移動(2017年)は11万3,552人で、都道府県別では東京都が6,370人の転出超過、逆に、埼玉では2,738人の転入超過となっている。
 一方、厚労省は9月14日、社会保障を支える世代の意識調査を発表した。親の「手助け・見守り」は、50~64歳では33%が行っているが、見守りで「ストレスや精神的負担が大きい」は男性33%、女性45%と男女差が出た。仕事との両立では「仕事が忙しく十分な手助け・見守りができない」が男性53%、女性33%だった。また、社会保障制度の将来不安では、「公的年金が老後生活に十分か」が81%、「医療や介護の負担が増加する」が54%あった。給付と負担では「社会保障の給付水準は維持し少子高齢化による負担増はやむを得ない」が25%、「社会保障の給付水準を引き下げつつ、負担増はやむを得ない」18%が続いた。
◎自治体業務の標準化・AI化などで研究会 ― 総務省
 総務省は9月21日、地方自治体における業務プロセス・システムの標準化とAI・ロボティクス活用研究会を発足させた。同省の自治体戦略2040構想研究会第2次報告が、今後の労働力制約の中で自治体は行政の標準化・共通化とAI・ロボティクスを使いこなす「スマート自治体」への転換を提言。これを受けて、①業務プロセス・システムの標準化②AI・ロボティクスの活用 ― などを検討、来年春に報告をまとめる。
 また、総務省は9月25日、地方自治体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン等を公表した。2011年に同ガイドラインを策定したが、その後の新たな対策技術の動向・政府の情報セキュリティ政策の改定などを踏まえ、地方自治体における「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」「情報セキュリティ監査に関するガイドライン」を改定。マイナンバー利用事務系・インターネット接続系などで情報システム全体の強靱化などを盛り込んだ。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)