地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』

2018年7月中央の動き


中央の動き


◎所有者不明土地対策で基本方針 ― 関係閣僚会議
 政府は6月1日、所有者不明土地等対策の関係閣僚会議を開催、今後の対策推進に向けた基本方針を決めた。土地の管理・利用について所有者が負うべき責務や地籍調査の迅速化・情報利活用の促進策などを来年2月にまとめ、2020年に民事基本法制と土地基本法、国土調査法等を見直す。さらに、相続が生じた場合の相続登記の義務化や長期間放置された土地の所有権みなし放棄の制度化も早期に検討し、土地基本法の見直しと併せて民事基本法制を見直すなどとした。
 一方、国交省は6月12日、「事業認定申請の手引き」を発表した。6月6日に成立した所有者不明土地の利用円滑化特別措置法で、都道府県知事が不明地に最長10年間の利用権を設定し地域福利増進事業に利用できるほか土地収用手続きが簡素化されることを踏まえ、収容活用の参考事例や現場の声を踏まえたQ&A、収容認定申請の際にそのまま活用できる申請書類20事例を提示した。また、同省は6月13日、空き家法に基づく空き家等対策計画の策定市町村が45%(17年度末)あり、18年度末には6割を超えると発表した。


◎郵便局の利便性向上策を答申 ― 総務省審議会
 総務省の情報通信審議会は6月4日、人口減少社会における郵便局の利便性向上策を答申した。人口減少で独居高齢者や買物難民が増加する一方、郵便局も郵便物数の減少や人手不足など環境が厳しくなる。このため、全国に約2万4,000ある郵便局の配達ネットワークなどの強みを活かし、自治体窓口事務の受託拡大や自動入力システムの活用など受託方法を高度化。また、テレビ電話等を活用したオンライン行政手続きをサポート。さらに、郵便車両や郵便ポストへのカメラ・センサー設置で児童・高齢者の見守りや道路危険情報・空き家情報などの収集や提供も行う。郵便局のスペースを活用して保育所や地域金融機関のATM設置、農産物の集荷と拠点配送、市販薬の販売、地域イベント・講座・教室などの実施支援なども提案した。
 また、日本郵便とJR東日本は6月12日、郵便局と駅の連携協定を締結した。郵便局を駅舎に移転し郵便局と駅の業務を一体運営する。また、郵便局の輸送ネットと新幹線を活用し仙台地域の農産物を収穫当日に東京駅や仙台駅で販売するとしている。
◎国土強靱化アクションプラン2018を決定 ― 政府
 政府は6月5日、国土強靱化アクションプラン2018を決定した。昨年7月の九州北部豪雨の災害を受け、流木対策や再度の氾濫防止対策、低コストの危機管理型水位計設置の推進などを新たに盛り込んだ。また、豪雪による道路渋滞に対し道路管理者がとるべき行動などを時系列に整理したタイムラインの策定や地域実情に応じたスポット対策、リスク箇所の事前把握による予防的交通規制・集中除雪を実施するとした。
 一方、土木学会は6月7日、巨大災害の被害推計を発表した。過去の大災害を踏まえ20年間(水害は14カ月)の経済被害を推計したもの。南海トラフ地震では経済被害1,240兆円、資産被害170兆円、財政的被害131兆円、首都直下地震では同731兆円、47兆円、77兆円と推計した。同学会は「国難」と呼びうる致命的事態を回避するため公共インフラ対策を実施することで南海トラフ地震では509兆円(41%)、首都直下地震では247兆円(34%)の災害減が可能だとした。なお、国交省は6月15日、学校での水害避難訓練を解説したガイドブックを作成した。水害発生時の避難の手順やタイミング、訓練実施の際のポイントを掲載した。
◎女性活躍加速の重点方針2018を決定 ― 政府
 政府は6月12日、女性活躍加速のための重点方針2018を決定した。女性活躍の場の拡大が多様性を生み、生産性向上・経済成長の原動力にもなるとし、女性が働きがいを持てる就業環境の整備による「フェアネスの高い社会」構築を基本方針に掲げた。そのため、①女性の健康支援やひとり親家庭等の支援②ワンストップ支援センターの性暴力対策の推進③女性の復職・再就職促進に向けた学び直し支援、女性役員登用の拡大や女性の起業支援強化④子育て・介護基盤の整備や教育の負担軽減、男性の育児休業の取得促進 ― などを進める。なお、厚労省調査によると17年度の育児休業取得は女性83%、男性5%だった。
 また、政府は同日、国のセクシュアル・ハラスメント対策の強化も決めた。新任職・新任監督者に行っていた研修を課長級など幹部職にも義務化する。併せて、地方自治体にも国を参考に必要な措置を講ずるよう要請するとした。野田総務相は、同日の記者会見で「新たな法律整備を排除しているわけでもない」としながら、「まず(予防と被害救済)の徹底と実効性を高める措置が重要だ」との考えを強調した。
◎人生100年時代へ基本構想まとめる ― 政府
 政府の人生100年時代構想会議は6月13日、基本構想をまとめた。高等教育で住民税非課税世帯の学生授業料を免除するほか、幼児教育も3~5歳児は全世帯、0~2歳児は住民税非課税世帯を対象に無償化する。また、大学改革では実務経験のある教員の増加、学生が身につけた能力・付加価値の「見える化」、大学の連携・統合に向け大学・産業界・自治体による「地域連携プラットフォーム」の構築などを行うとした。さらに、65歳以上の継続雇用年齢の引上げに向けた環境整備や公務員の定年65歳も盛り込んだ。
 一方、人事院は6月15日に発表した2017年度年次報告で、次世代の中核を担う30代職員の育成・活性化を特集した。30代の意識調査の結果、「業務多忙で両立が困難」(49%)など長時間労働が特に育児等を行う30代職員で満足度低下の要因となっていた。さらに、人事当局との相談が少ないほど今後のキャリア形成に不安、上司の高圧的態度や厳しい指導に強い不満があることなども分かった。このため、若手の意見を取り入れた業務合理化、柔軟な働き方促進、人事当局への相談等の機会拡充などを課題に挙げた。
◎骨太の方針2018を閣議決定 ― 政府
 政府は6月15日、経済財政運営と改革の基本方針2018を閣議決定した。財政健全化目標では、国・地方の基礎的財政収支の黒字化を20年度から25年度に延長した。併せて、19~21年度を「基盤強化期間」とし、社会保障関係費の伸びを高齢化に伴う増加分に抑制する。なお、地方財政の一般財源総額実質同水準ルールについては「18年度の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」と明記された。また、19年10月の消費税率10%への引上げで幼児教育の無償化を目指すとともに、需要変動の平準化を進めるとした。このほか、現行の合併特例法の期限(19年度末)後への対応検討も盛り込まれた。また、働き方改革を進めるとともに、人手不足に対応するため一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる新たな在留資格の創設を盛り込んだ。
 なお、総務省は5月30日、骨太の方針2017の指摘を受けて「地方単独事業(ソフト)の『見える化』検討会」の初会合を開いた。地方単独事業の歳出区分や調査票の策定などを踏まえた「見える化」のあり方を検討、19年3月にも報告をまとめる。
◎地方創生の基本方針2018を閣議決定 ― 政府
 政府は6月15日、まち・ひと・しごと創生基本方針2018を閣議決定した。東京一極集中是正が実現していないため、次期「総合戦略」策定に向け今後6年間の新たな目標を掲げた。移住者の経済負担軽減などでUIJターンによる起業・就業者を6万人、女性・高齢者の支援で新規就業者の掘り起こし24万人を掲げたほか、外国人材と自治体ニーズをマッチングさせる仕組み構築・「包括的な資格外活動許可」で地方における外国人材を活用する。また、地域おこし協力隊も6年後に8,000人とする。さらに、子どもの農山漁村体験の4泊5日など長期化にも取り組むとした。
 一方、総務省は6月6日、地域おこし協力隊の拡充方策を発表した。シニア層や在住外国人・ふるさとワーキングホリデーなど応募者の裾野を拡大し24年度に8,000人とする新たな目標を掲げた。また、任期満了後の定住・定着を推進するため、隊員の起業に向けた金融面での支援も検討する。このほか、隊員OB・OGのネットワーク化で隊員の受入・サポート体制の充実、「おためし地域おこし協力隊」(仮称)も創設する。総務省は、年内にも具体的取組方針をまとめる。
◎行政手続コスト削減など規制改革実施計画 ― 政府
 政府は6月15日、規制改革実施計画を閣議決定した。行政手続コスト削減、農林・水産、保育・雇用、医療・介護などの分野で120項目の改革を盛り込んだ。2020年までに事業者の行政手続コスト20%以上削減を進めるほか、行政手続の簡素化・オンライン化に取り組む自治体を応援する。また、植物工場の立地規制見直しや農業でのドローン利用の促進、水産資源管理の法制化、外国人留学生の国内就業向上のため在留資格変更手続きの改善などを盛り込んだ。
 また、政府は同日、世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の変更を決めた。デジタル技術を徹底活用した行政サービス改革の断行に向け、①行政サービス100%デジタル化②行政保有データ100%オープン化 ― を掲げるとともに、その具体化のため「デジタルファースト法案」(仮称)を速やかに国会に提出するとした。IT戦略の成果を地方展開するため「地方デジタル化総合パッケージ」も進める。また、総務省は自治体のデータ利活用ガイドブックを策定した。子育て・介護・環境・防災・都市計画など様々な分野を対象にデータの活用手順などを示した。
◎循環型社会形成推進基本計画を決定 ― 政府
 政府は6月19日、第4次循環型社会形成推進基本計画を閣議決定した。持続可能な社会づくりに向け、ライフサイクル全体での資源循環の徹底、災害廃棄物処理体制の構築、循環分野における基盤整備など7つの方向性を示した。その上で、東日本大震災や南海トラフ巨大地震などが懸念されるため、災害廃棄物処理計画の策定率(2025年度)を都道府県は100%、市町村は60%との数値目標を掲げた。また、海洋ごみ対策などに向けプラスチック資源循環戦略を策定する。
 同日、廃棄物処理施設整備計画も閣議決定した。18~22年度の計画期間にハード・ソフト両面で3R(リデュース、リユース、リサイクル)などを推進。その重点目標に、一般廃棄物最終処分場の残余年数は2017年度の水準を維持、ごみのリサイクル率は21%から27%、期間中に整備された焼却施設の発電効率の平均値は19%から21%、廃棄物エネルギーを外部に供給している施設割合は40%から46%、浄化槽整備区域中の浄化槽人口普及率は53%から70%、合併処理浄化槽の基数割合は62%から70%に引き上げるとした。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)