地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2017年11月中央の動き


中央の動き


◎先進政策大賞で徳島モデルを表彰 ― 全国知事会
 全国知事会は10月16日、第10回先進政策創造会議を開き、優秀政策に29件を選定、うち徳島県の「全国初徳島モデル! 地方と都市を結ぶ『新しい学校のかたち』デュアルスクール」を先進政策大賞に決めた。知事会では、都道府県の政策立案能力向上の一助として2006年から先進的政策を蓄積・公表する「政策バンク」を設置。その中から優秀政策を表彰している。
 先進政策大賞に選定されたデュアルスクールは、サテライトオフィスで単身赴任している保護者が多いため、転入転出手続きを簡素化し児童生徒を短期間、地元の小中学校に就学する「新しい学校のかたち」を試行した。このほか、優秀政策に県内どこでも利用できる病児・病後児保育体制(山梨県)、行政イントラの県・市町村共同運用で情報連携(鳥取県)、預貯金差押えの電子化(三重県)、住民主体の土砂災害警戒避難体制の支援(群馬県)、児童養護施設退所者のアフターケア(埼玉県)、ICT活用の植物工場(愛知県)などが選定されている。


◎内部統制ガイドライン策定へ研究会 ― 総務省
 総務省は10月17日、地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会を発足させた。先の改正地方自治法で、内部統制の指針策定と監査制度の充実強化などが盛り込まれた。これを受けて、研究会では、都道府県・政令市に義務付けられた(その他の市町村は努力義務)内部統制に関する指針策定と体制整備のためのガイドラインを策定する。「長による内部統制の評価・報告」「監査委員による内部統制評価報告書の審査」などを重点的に整理する。
 また、同省は10月2日、自治体戦略2040構想研究会を発足させた。2040年代には、全国人口が1億1千万人に縮小する一方、団塊ジュニア世代の高齢化で高齢者が3,921万人に増加。その中で自治体が抱える課題とそのために取り組むべきことなどを明らかにする。具体的には、医療・介護需要の急増と介護人材不足、社会保障関係経費の増加、築50年超のインフラ・公共施設の更新、都市のスポンジ化と耕作放棄地の増加などが想定される。野田総務相は9月26日の記者会見で「問題を抽出し、それに対し何ができるか、今から備えないといけない」と述べた。
◎与党で衆院の3分の2を確保 ― 衆議院議員選挙
 第48回衆院選が10月22日行われた。定数が10議席減・465議席の中で、自民党は追加公認3人を含め公示前と同じ284議席を確保、公明党は同34議席から29議席に減らしたが、与党は合計313議席で衆院の3分の2を維持した。希望の党は50議席と同57議席を下回った一方、立憲民主党は55議席と同15議席から大幅に伸ばし野党第1党となった。共産党は12議席(公示前21議席)、日本維新も11議席(同14議席)に後退。社民党は2議席を確保した。投票率は小選挙区・比例代表とも53.7%で、戦後2番目の低水準だった。
 なお、連合の神津会長は10月23日の記者会見で、野党の流動化を踏まえ、特定の政党への支持は打ち出さない方針を示した。また、全国知事会は10月8日、総選挙を前に各党の公約評価を発表した。自民党は中央省庁の地方移転など、公明党は地方財源の確保などを評価しそれぞれ73点、72点と高かったが、希望の党は地方創生で不十分、立憲民主党は具体的施策が少ない、日本維新は消費税率凍結などで減点され、各65点、60点、60点とやや低かった。
◎党の憲法改正案を憲法審査会に提案へ ― 安倍総裁
 安倍自民党総裁は選挙後の10月23日に記者会見し、「消費税の使い道を見直し、社会保障制度を『全世代型』へと大きく改革。年内に政策パッケージを策定し実行に移す」と強調。併せて、憲法改正について「幅広い合意を形成するよう努力を重ねていく。党としての案を国会の憲法審査会に提案したい」と述べた。
 また、国と地方の協議の場が10月26日、首相官邸で開催されたが、その中で山田全国知事会長は「地方自治は憲法の中で『地方自治の本旨に基づいて法律で定める』としか書いていない」と述べ、憲法に地方自治の位置付けを明確にするよう要請。安倍首相は、地方側から憲法改正に言及があったことを「極めて重く受け止める」と述べた。なお、全国知事会のワーキングチームは10月25日の会合で、憲法の地方自治規定の充実案を提示した。①自治体が自主的・自律的に処理する固有の権能を保障②国は国家存立の役割を担い、内政は自治体が果たす③国と地方は対等協力関係の下、連携・協働 ― などを示した。今後、他の知事の意見を聞いた上で、11月の全国知事会議までにまとめる。
◎所有者不明土地の利活用対策で素案 ― 国交省
 国交省の国土審議会土地政策分科会は10月25日、所有者不明の土地の有効活用策の骨格を提示した。①道路などの公共事業では所有者に反対はいないが一部不明者がいる場合は収用手続きを簡素化②所有者が現れた場合を想定し知事裁定により5年間の利用権を設定し公共的な事業を実施できる ― などを示した。また、国交省の中長期的な地籍整備推進検討会は10月6日、山村部の地籍調査を審議。林地の地籍調査進捗率は45%にとどまり、第6次10カ年計画の半分にとどまっている。一方、農水省は10月13日、相続未登記農地の活用検討意見交換会を開いた。未登記農地は全農地の約2割93万㌶あり、農地の集積・集約の妨げになっている。さらに、法務省は10月2日、登記制度・土地所有権の在り方研究会を発足させた。
 いずれも、骨太の方針2017で所有者の特定が困難な土地対策について関係省庁が検討し次期通常国会に法案提出を目指すとされたことを受けたもの。ちなみに、全国の所有者不明土地は410万㌶あり、九州の面積を上回る。また、所有者不明土地問題研究会が10月26日、不明土地の将来推計と経済的損失を発表した。高齢化に伴う多死社会・大量相続時代を迎える中、所有者不明土地は2040年には約720万㌶に増加、その経済的損失は累計で約6兆円に達すると試算した。
◎賃金・所得拡大などで議論 ― 経済財政諮問会議
 経済財政諮問会議は10月26日、経済・財政一体改革と賃金・可処分所得の改善・拡大について議論。民間議員が、働き方改革の早期実行と継続的な賃金引上げ・社会保険料上昇の抑制で可処分所得を拡大するよう提案。これを受けて、安倍首相は「賃上げは企業に対する社会的要請だ。来春は、生産性革命を進める中で3%の賃上げ実現を期待する」と述べた。
 一方、47都道府県と20政令市の2017年度人事委員会給与勧告が10月25日までに出そろった。月給は42道府県と13市が引上げ、ボーナスは山口・鳥取両県を除く45都道府県と全20市が引上げを勧告した。なお、月給は秋田、東京、三重、山口、佐賀の5都県、横浜、相模原、京都、福岡の4市では公民較差がわずかなため改定見送りを勧告した。新潟市は引下げ(0.18%)を勧告した。この結果、平均年収は、月給・ボーナスとも改定を見送った山口県を除く46都道府県で1万8,025円~9万4,000円、市は全市で2万6,000円~8万6,000円増額される。国家公務員が今年度から扶養手当の配偶者分を減らし子ども分を増額したが、8県と9市が同様の見直しを求めた。
◎自治体の積立金現在高を公表 ― 総務省
 経済財政諮問会議が10月26日、経済・財政一体改革について議論。民間議員が「財政健全化への対応」で、プライマリーバランス(PB)が地方は黒字・国は赤字の不均衡が存在するとし、早期にPBを黒字化すべきだと指摘した。
 一方、総務省は9月29日、経済財政諮問会議の指摘を受けて2016年度の地方団体の積立金現在高を発表した。総額は21兆5,461億円で前年度より5,231億円増加した。うち、財政調整基金が7兆5,241億円、減債基金が2兆5,440億円、特定目的基金が11兆4,781億円で、前年に比べ財政調整(41億円減)、減債(974億円減)が減少する中、特定目的が6,245億円増えた。さらに、全増額のうち東京都と23特別区が4,483億円増加したのに対し、その他の全団体の増加は747億円増にとどまる。うち特定目的の増も東京都と23特別区が4,152億円増加、他の全団体の2倍も増えた。
◎地方自治法施行70周年記念セミナーが開催
 地方自治法施行70周年記念セミナー(㈱ぎょうせい主催)が10月27日、都内で開催され、西尾勝東京大学名誉教授の基調講演に続き「地方自治法のこれまでとこれから」をテーマにパネル討論が行われた。
 基調講演で西尾氏は、自らの人生との関わりから地方自治法70年を振り返った。次いで、パネル討論では、地方自治法の果たした役割、2000年地方分権改革の意義と成果、自治制度と自治体職員、地方自治制度の現在と今後の課題などについて議論。「多様な監査機能を監査委員が担うのは限界。常勤と非常勤に内部監査を分解すべき」(碓井光明東京大学名誉教授)、「地方議会改革の手段として選挙制度改革も必要。定員減少・非正規化で自治体職員が疲弊している」(大山礼子駒澤大学教授)、「一般法の地方自治法は機能しているが、現場を統制する個別法の統合・規律密度の緩和が必要」(礒崎初仁中央大学教授)、「国も官邸主導で総合行政を展開、自治体の現場力・即応力の優位性を今後も応援していきたい」(山崎重孝総務省行政局長)、「これまでの分権改革は行革の一環で進められた限界がある。もう地方公務員の定員管理も止めていい」(西尾氏)などが指摘された。
◎ふるさと納税で追加活用策を発表 ― 総務省
 総務省は10月27日、ふるさと納税の追加活用策として「ふるさと起業家支援プロジェクト」「ふるさと移住交流促進プロジェクト」を来年度から新規に実施。「優良事例集」を年内に作成すると発表した。自治体がクラウドファンディング型ふるさと納税を活用し、起業家に対する寄付を募るとともに、初期投資経費への補助に対し特別交付税措置する。寄付をきっかけに継続的なつながりを持てる取組みなど移住・定住対策事業の取組みにも特別交付税措置する。
 一方、内閣府は10月6日、まち・ひと・しごと創生総合戦略のKPI検証チームを設置した。今年度が5カ年を展望した「総合戦略」の中間年にあたることから、同戦略で設定している基本目標や各施策のKPI(重要業績評価指標)を検証・評価する。また、10月20日に小さな拠点・地域運営組織の形成促進有識者会議、10月23日に政府関係機関移転に関する有識者会議なども設置し、取組みの進捗状況を検証、今後のフォローアップにつなげる。なお、総合戦略の目標では地方に仕事をつくる・新しい人の流れをつくるなどを掲げているが、実態は雇用も人の移動も東京一極集中が加速している。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)