地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2017年10月中央の動き


中央の動き


◎小さな拠点形成で実態調査を発表 ― 内閣府
 内閣府は9月1日、2017年度の小さな拠点形成の実態調査結果を発表した。今年5月末現在、424市町村(24%)で小さな拠点が形成されており、うち258市町村では市町村版総合戦略に位置付け、その拠点は908カ所になる。同拠点の対象範囲は小学校区、旧小学校区(各約30%)が多く、83%の拠点で地域運営組織が形成されていた。また、小さな拠点の集落数は全国で合計1万3,941あり、1拠点当たりの集落数は平均15.4、人口は平均2,620人だった。
 一方、内閣府の地方大学振興・若者雇用有識者会議は9月19日、「論点」を議論した。地方大学振興では、国が産業振興と人材育成に関する基本方針を示すべきだとし、その具体内容に産官学連携の推進体制、首長のリーダーシップ、特色化のための大学改革など、また東京圏と地方の大学生の対流のため単位の互換などを挙げている。なお、全国知事会は9月5日、文科省が改正する東京23区内の大学等の定員増抑制に向けた許可基準改正案について、①駆け込み申請が認められないよう例外許可申請には厳格に審査②2020年度以降も東京23区内の大学の定員増抑制のため早期に立法措置を講ずる ― との緊急声明を発表した。


◎憲法の地方自治のあり方で検討会 ― 全国知事会
 全国知事会は9月5日、参議院「合区問題」の抜本的解決と憲法92条の「地方自治の本旨」の具体化を検討するよう衆参両院議長等に要請した。7月の全国知事会議で決めた決議を申し入れたものだが、8月30日には「憲法における地方自治のあり方検討ワーキングチーム」の初会合を開いた。飯泉徳島県知事を座長に10府県知事で構成。9月25日の第2回会合では、地方自治規定の充実による目指すべき地方像として公共的事務の機能保障、国・地方の協働などを議論した。
 一方、自民党の憲法改正推進本部は9月12日、内閣改造後初の全体会合を開き、議論を再開した。安倍首相が提案した4項目(9条への自衛隊明記、緊急事態条項の創設、参院選挙区の合区解消、教育の無償化)について順次検討する。しかし、衆議院解散を踏まえ、20日の会合では衆院選の公約に憲法改正をどう盛り込むかなどを中心に議論した。選挙後も与党が3分の2を確保できるのか、また一部野党も改憲の方針を打ち出すとみられるが、与野党間で調整が進むのかなど、選挙後の改憲議論の行方はなお不透明だ。
◎人生100年時代構想会議が初会合 ― 政府
 政府は9月11日、人生100年時代構想会議の初会合を開いた。安倍内閣の目玉政策「人づくり革命」の具体策を検討するため関係大臣と有識者で構成。超長寿社会に向け、①教育の負担軽減・無償化とリカレント教育②企業の人材採用の多元化と多様な高齢者雇用③高齢者向け社会保障制度の全世代型社会保障への改革 ― などを検討する。
 なお、厚労省発表によると、100歳以上高齢者(9月1日現在)は6万7,824人で、前年より2,132人増えた。うち女性が88%。また、人口10万人当たり100歳以上高齢者数は島根県97.5人が最も多く、鳥取県、高知県、鹿児島県でも90人台と多い。逆に、埼玉県32.1人、愛知県35.0人、千葉県37.8人などで少ない。なお、政府は敬老の日に百歳高齢者表彰を行っているが、今年は3万2,097人(前年比350人増)が対象となった。
◎規制改革で重点事項など決定 ― 規制改革推進会議
 政府の規制改革推進会議は9月11日、当面の重要事項を決めた。年内を目途に解決策を示す事項に①子育て安心プラン実現に向けた保育制度見直し②林業の成長産業化と森林資源の適切管理実現③新需要に向けた電波割当制度の改革 ― を挙げた。今後1年で改革を進める事項には、①行政手続コストの削減目標達成の計画遂行②農業・水産業の成長産業化の改革③若手外国人材の雇用環境整備 ― などを挙げた。また、行政手続部会は9月15日、第2回部会を開き、行政手続簡素化の基本計画に沿って日経連、経済同友会などからヒアリングした。基本計画では、行政手続簡素化3原則に沿って行政手続コストを3年間で20%以上削減するとしている。このため、対象分野である営業の許認可、社会保険、国税・地方税、補助金、調査・統計などについて2つの検討チームで点検を進める。
 一方、政府の地方分権改革有識者会議は9月8日、2017年の提案募集方式で地方から提案のあった重点事項に対する関係府省の第1次回答について全国知事会など地方3団体から意見聴取した。内閣府は、これらを踏まえ9月11日、関係府省に再検討を要請。今後の第2次回答の審議等を経て年末に「対応方針」を閣議決定する。なお、今年の提案総数は311件で、特に市町村提案が前年の96団体から130団体に増えた。
◎地域力強化検討会が最終報告 ― 厚労省
 厚労省の地域力強化検討会は9月12日、地域共生社会の実現のあり方で最終報告を発表した。改正社会福祉法(106条)で、包括的な支援体制の整備が市町村の新たな努力義務とされたことを受けて、①福祉・医療・教育・環境・農林水産・観光などの各分野がつながり協働を進める②障害・認知症など学び考える福祉教育の機会提供③地域ケア会議など既存の場の拡充 ― などを求めた。これを受けて、厚労省では指針策定や地域福祉計画ガイドライン改定を進める。
 一方、厚労省は9月19日、ホームレス実態の全国調査を発表した。平均年齢は61.5歳で前回調査(2012年)より2.2歳上昇。うち65~69歳が23%、70歳以上が20%で前回より6ポイント高齢化が進んだ。路上生活の期間は10年以上が35%で前回より9ポイント上昇するなど長期化している。また、56%が仕事をしているが、廃品回収が71%で最も多い。調査は昨年10月に面接形式で実施、1,435人から回答があった。
◎働き方改革推進関連法案を答申 ― 労働政策審議会
 厚労省の労働政策審議会は9月15日、働き方改革推進関連法案を答申した。政府は、臨時国会にも同法案を提出する予定だったが、衆議院解散のため閣議決定も見送った。答申された関連法案は労働基準法など8法を一括改正する。時間外労働の上限を原則月45時間・年360時間、繁忙期も月100時間未満・年720時間とし違反には罰則も。また、正規社員の基本給などで短時間労働者・派遣労働者との不合理な格差を禁止する。併せて高収入専門職を規制から除外する高度プロフェッショナル制度も創設する。
 一方、「都市問題公開講座」(後藤・安田記念東京都市研究所主催)が「自治体の人手不足をどう乗り越えるか」をテーマに都内で開催された。西尾隆国際基督教大学教授が基調講演で「ミニマム行政」の視点から人手不足を検討すべきだと強調。また、パネル討論では、平野公三岩手県大槌町長が津波被害で生き残った職員も多くが「心が崩れ」るなど深刻な状況を説明した上で、今も職員採用に応募が少ない現状を報告。また、「公務員削減の背景には公務員バッシングがある」(渡辺寛人POSSE事務局長)、「外注で専門職の劣化が心配」(山本悟京都府建設交通部長)、「硬直的な人事制度が配置不足と人手不足を招く。ジョブ型公務員制度に転換すべき」(上林陽治地方自治総合研究所研究員)などの発言があり、司会の西村美香成蹊大学教授は「柔軟な定員管理が必要。定数管理はなくてもいい」と結んだ。
◎地域おこし協力隊の定住で調査結果 ― 総務省
 総務省は9月22日、地域おこし協力隊の定住状況調査結果を発表した。今年3月末で任期終了した546市町村2,230人のうち、同一市町村に1,075人(48%)、近隣市町村を含めると1,396人(63%)が定住。そのうち510人(47%)は就業、314人(29%)は起業、152人(14%)は就農していた。起業が前回調査(17%)から約倍増した。就業では観光関係64人、地域づくり支援関係55人、農林漁業関係43人など。起業では古民家カフェなど飲食サービス業49人、パン屋など小売業30人、農家民宿など宿泊業28人などが多い。都道府県別では、北海道285人(定住率79%)、長野県119人(68%)、山梨県91人(67%)で多かった。
 また、野田総務相は9月21日、ふるさと納税を子育て支援に特化し若者定住を実現した北海道上士幌町の視察後、返礼品3割に抑制との高市前総務相の通知見直し発言をめぐり、「若干取り違えられている地方団体もあるという。通知自体を反故にするという話ではない」と強調。その上で、9月26日付けで①ふるさと納税の使い途を明確化する②納税者と継続的なつながりを持つ ― よう求める大臣書簡を全首長に送付した。
◎マイキープラットフォームの運用開始 ― 総務省
 総務省は9月25日からマイナンバーカード1枚で図書館など各種公共施設の利用、クレジットカードなどのポイントやマイレージを好きな自治体ポイントに転換し地域の物産を購入できるマイキープラットフォームの運用を開始したと発表した。マイナンバーカード(今年7月の交付1,188万枚)の普及などが狙いで、総務省は2018年度予算概算要求でマイキープラットフォーム構想の推進として10億円を要求している。
 一方、総務省は9月20日、公文書管理の行政評価結果を発表した。いくつかの府省で、法律の制定・改廃文書で保存文書30年が10年とされているものや、文字情報で破損・読めなくなっている事例などがあった。このため、ガイドラインに即した保存期間の設定や保存期間60年超文書は国立公文書館に移管、組織の新設改廃の際の引継手続きの整備などを関係府省に勧告した。また、政府は同日、公文書管理委員会に公文書管理見直し案を示した。「森友学園」の文書廃棄問題などを踏まえ「保存期間1年未満」の明確化などを盛り込んだ。年末にもガイドラインを見直す。
◎消費増税分の使途変更で衆院解散 ― 安倍首相
 安倍首相は9月25日の記者会見で、衆議院の9月28日解散を表明した。急速な少子高齢化の不安対処のため「人づくり革命」「生産性革命」に取り組むとし、その具体策に①低所得家庭の高等教育無償化②全ての幼稚園・保育園の無償化、低所得者の2歳児までの無償化③介護人材の処遇改善 ― など2兆円規模で社会保障制度を全世代型に大きく転換。このため、2019年10月の消費税率10%アップ分の「使い道を変えたい」とした。同時に、20年度の黒字化目標の達成は困難となるが、財政再建は確実に実施するとも述べた。
 また、同日開催された経済財政諮問会議でも安倍首相は「ひとづくり革命・生産性革命の2本の施策を具体化するため、年内に新しい政策パッケージを策定する」よう関係閣僚に指示した。同会議で、野田総務相は「全世帯型社会保障のために消費税増収分を充てるというが、地方の理解を得ながら制度設計を進めてほしい」と注文をつけた。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)