地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2017年7月中央の動き


中央の動き


◎骨太の方針2017を閣議決定 ― 政府
 政府は6月9日、経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針)を閣議決定した。「働き方改革による成長と分配の好循環の実現」「人材への投資を通じた生産性の向上」を柱に据えた上で、財政健全化目標では基礎的財政収支の2020年度黒字化に加え、「600兆円経済の実現」など歳出削減だけでなく経済成長すれば改善する「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」との新たな健全化目標を追加した。
 主要分野ごとの改革では、うち地方行財政では①団体の積立金の増加の背景・要因を把握・分析②地方単独事業の実態把握と見える化③行政サービスの効率化に向け類似団体間のコスト差の要因分析④インセンティブ強化に資する補助金・交付金の配分促進⑤まち・ひと・しごと創生事業費(地方交付税)の取組成果に応じた算定へのシフト⑥トップランナー方式の影響額の地方財政計画上の取扱明確化 ― などを進めるとした。社会保障関係では、医療費の地域差の半減など医療費適正化のほか、都道府県のガバナンス強化と国民健康保険のインセンティブ強化、介護保険の保険者機能強化に向けた財政的インセンティブのあり方検討など、社会資本整備では官民連携による空き家・空き地の流通・利活用推進など、文教関係では少子化を踏まえた予算効率化などを盛り込んだ。


◎地方創生の基本方針2017を閣議決定 ― 政府
 政府は6月9日、まち・ひと・しごと創生基本方針2017を閣議決定した。地方創生総合戦略の中間年に当たるため新たな施策で地方創生の新展開を図るとし、ローカルアベノミクスの一層の推進、東京一極集中の是正などを柱に掲げた。具体的には、空き店舗活用による商店街活性化のため固定資産税の特例解除などの仕組みについて年内に結論をまとめる。農泊やサテライトオフィスなど遊休農地活用で農村地域の雇用を創出。古民家を活用した観光まちづくりも進める。また、地域経済牽引事業への投資を促進し今後3年で2千社程度を集中的に支援する。このほか、東京での大学の新増設抑制・地方移転で東京一極集中の是正に取り組むほか、総務省や厚労省など六府省でサテライトオフィス設置を試行することなどを盛り込んだ。
 一方、内閣府は6月15日、自治体SDGs推進有識者検討会の初会合を開いた。国連が15年に採択したSDGs(持続的開発目標)を受けて政府は16年に「SDGs実施指針」を決定したが、同指針を踏まえ自治体SDGs推進の意義や政府として取り組むべき事項などを検討する。また、内閣府は6月1日、小さな拠点・地域運営組織形成に関する都道府県担当者説明会を開催した。小さな拠点・地域運営組織形成に向けた関係省庁の支援策をはじめ、山形県・大分県での取組事例などが報告された。
◎子育て安心プランで3閣僚の連携を確認 ― 厚労相
 塩崎厚労相は6月9日、加藤少子化対策担当相、松野文科相と大臣会合を開き、「子育て安心プラン」実現に向け連携することを確認した。子育て安心プランでは、待機児童解消の受け皿整備に向け2019年度までの2年間で約22万人分の予算を確保、20年度までに待機児童を解消するとした。なお、厚労省がまとめた調査(4月1日現在・暫定値)では、待機児童は全国で約2万3,700人おり、うち東京都の約8,900人をトップに、埼玉、千葉、兵庫、岡山、福岡の各県でも1,000人台と多い。なお、厚労省は待機児童の実態を来年度から小学校区単位など細分化して把握する予定。また、厚労省は6月7日、介護人材確保地域戦略会議を開いた。同省はその中で、2025年には約38万人の介護人材の不足が見込まれるため、介護離職ゼロ実現に向け地域医療介護総合確保基金などを活用して約25万人の確保に向けあらゆる施策を総動員すると述べた。
 一方、厚労省は6月21日の社会保障審議会介護保険部会に介護保険事業の基本指針案を提示した。都道府県・市町村が定める第7期介護保険事業支援計画(18~20年度)のガイドラインとなるもの。指針案では、改正介護保険法を踏まえ自立支援や重度化防止の取組内容と認定率低下などの目標を掲載するほか、介護保険と障害者福祉両制度の「地域共生社会」推進、高齢者虐待の防止体制整備などを盛り込むとした。
◎同一労働同一賃金の法整備で建議 ― 厚労省審議会
 厚労省の労働政策審議会は6月16日、同一労働同一賃金の法整備について建議をまとめた。政府が昨年末に提示した「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」の実効性担保のため、労働者が司法判断による救済を求める際の根拠規定の整備や労働者に対する待遇の説明義務化などについて具体策を示した。一方、政府は国家公務員の非常勤職員に期末手当とともに勤勉手当も支給することを決めた。5月24日の人事管理運営協議会幹事会で申し合わせた。自治体の非常勤職員に期末手当を支給できるとした改正地方自治法等が先の国会で成立している。また、政府は6月28日、国家公務員の定年延長に関する検討会議を発足させた。定年の65歳までの段階的延長に向けた課題などを検討する。
 一方、厚労省は6月20日、労働組合活動の実態調査(組合員30人以上の約5千組合対象)を発表した。組合員数は3年前に比べ「増加」したのは34%で、42%が「減少した」と回答。その原因では「定年退職」が68%と最も多い。しかし、組織拡大への取組では「取り組んでいる」のは32%だけだった。
◎農業外国人の就労解禁など改正特区法が成立 ― 国会
 改正国家戦略特区法が6月16日に成立した。技能等を有する農業分野の専門外国人の就労を可能とするほか、観光などサービス分野で技能を持つ外国人が国内で就業できるよう入管法に特例を設ける。また、農業競争力強化関連8法が成立した。農業競争力強化プログラムを受けたもので、成立したのは土地改良法改正(農地中間管理機構が土地改良事業実施)、農村地域工業導入促進法改正(導入促進産業の業種拡大)、農業災害補償法改正(農業経営収入保険事業の創設)、農業競争力強化支援法(低廉な農業資材の供給)など。また、同省は6月16日にウェブサイト「まるみえアグリ」を開設した。農業者が資材の購入先や農産物の出荷先を比較し選択できる。
 一方、農水省は6月23日、農地転用許可権限等を移譲する指定市町村に大垣市、海南市の2団体を指定した。都道府県と同様の4㌶超の農地転用許可・農振法開発許可が移譲される。これで、同指定市町村は43市町村となった。また、全国知事会は6月21日、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉で農水省に緊急要請した。チーズや豚肉などの重要品目に対する国境措置などを求めた。
◎国民保護で国と自治体の共同訓練実施 ― 消防庁
 総務省消防庁は6月20日、国民保護で国と自治体の共同訓練を実施すると発表した。事案発生時に国や自治体、警察、消防、自衛隊などの活動領域の確認・連携強化や、国民理解を目的に実施するもの。千葉、神奈川、静岡、長崎、大分の5県で実働訓練、青森、栃木、長野、愛知、大阪、徳島、福岡など24都府県で図上訓練を実施する。また、自民党は6月2日、朝鮮半島有事を想定した邦人保護の提言をまとめたほか、内閣府は4月から国民保護ポータルサイトで「弾道ミサイル落下時の行動とQ&A」を公開している。
 一方、政府の国土強靱化推進本部は6月6日、国土強靱化アクションプラン2017を決定した。計画では、南海トラフ地震などが想定される地域の堤防整備率を河川は15年の42%から20年に75%へ、海岸は同40%から69%へ、異常気象による市街地浸水防止のため河川整備率を同71%から76%へそれぞれ引き上げる。津波・高潮のハザードマップを作成し住民と訓練を実施した市町村の割合を15年の50%から20年には100%とする目標も掲げた。また、国交省は6月20日、水防災意識社会の再構築に向けて水害タイムラインの作成・要配慮者利用施設での避難確保計画の作成など5年間で実施すべき緊急行動計画をまとめた。

◎中教審に学校の働き方改革など諮問 ― 文科省
 文科省は6月22日、中央教育審議会に学校の働き方改革を諮問した。同省は答申を受けて年内にも働き方改革の緊急対策をまとめる。同省調査で教員の長時間労働が看過できない深刻な状況にあることが分かったため、中教審では部活動も含めた学校・教職員・専門スタッフが担うべき業務のあり方や学校の組織運営体制・勤務のあり方などを検討する。また、文科省は同日、学校現場の業務改善の取組徹底を各都道府県等教育長に通知した。①業務改善方針・計画等の策定②勤務時間の適正把握③労働安全衛生管理体制の整備④部活動の適正な運営 ― を要請した。中教審は、また「我が国の高等教育の将来構想」について部会を設置し検討に着手した。今後の若年層人口の大幅減少を踏まえ、大学間の連携や統合のあり方などを検討する。なお、全国知事会の文教環境常任委員会は6月26日、地方大学の振興を求める提言案を了承した。7月下旬の全国知事会議で決定する。提言案は、①東京の大学新増設抑制と法制化②特色ある地方大学の支援③大学の財政支援など運営基盤強化 ― などを求めている。
 一方、自民党の安心して学べる教育の場確保PTは6月15日、教員免許の国家資格化を求める緊急提言をまとめた。わいせつ行為等で処分を受けた教員が教壇に立つことを防止するため、都道府県教育委員会で管理している教員の処分履歴などの免許情報を国で一元管理する仕組み導入などを盛り込んだ。
◎2016年国民生活基礎調査を発表 ― 厚労省
 厚労省は6月27日、2016年の国民生活基礎調査を発表した。高齢世帯は1,327万1千世帯で、全世帯の27%を占め、世帯数・割合とも過去最高を更新。また、介護者と要介護者は同居が59%と最も多いが、両者の年齢をみると65歳以上が55%、75歳以上も30%と、老老介護が増加。介護が必要となった原因では、認知症が25%で脳卒中の18%を上回り過去最高となった。このほか、1世帯当たり平均所得は545万8,000円で、前回調査(12年)より0.7%上昇。低所得者の割合である相対的貧困率は15.6%で同0.5ポイント低下、子どもの貧困率も13.9%で同2.4ポイント低下した。ただ、この貧困率は先進国の平均を上回っている。
 また、厚労省は6月14日、2015年都道府県別の年齢調整死亡率(人口10万人当たり死亡数)を発表した。全国平均は男486、女255で、前回10年と比べ男は58ポイント、女は20ポイントそれぞれ改善。これを都道府県別にみると、最低は男女とも長野(男434、女227)で、逆に青森(同585、288)が男女ともに最も高かった。次いで男は滋賀、奈良で低く、秋田と岩手が高い。女では島根と岡山で低く、福島と茨城が高い。疾病別では、がんは男は長野、女は岡山が最も低く、最高は男女とも青森だった。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)