地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』

2017年2月中央の動き


中央の動き


◎廃校施設の活用状況で調査結果 ― 文科省
 文科省は1月12日、全国の小・中・高校等の廃校施設の活用状況(2016年5月現在)を発表した。15年度に520校が廃校、施設が現存する廃校は5,943校となった。うち、71%の4,198校は活用されているが、1,745校(29%)は活用されていない。この未活用廃校のうち314校は用途が決まっているが、1,260校は用途も決まっていない。廃校の主な活用用途では、新たな公立学校等が1,609校で最も多く、以下、社会体育施設1,015校、社会教育・文化施設675校、福祉施設・医療施設424校、企業や創業支援施設370校、庁舎等268校など。なお、02~15年度に合計6,811校が廃校となったが、都道府県別では北海道の688校をトップに、東京285校、岩手251校、熊本249校などで多い。
 同省は、公立学校施設のうち建築後25年経過が全体の約7割(面積)となるなど老朽化が進んでいるため、「学校施設の長寿命化計画策定の手引」(15年)で各自治体に長寿化に向けた対応を要請。総務省は17年度予算で義務教育施設の大規模改造事業について補助事業を補完する地方単独事業の財政措置を拡充する。また、公立小・中学校の適正規模・適正配置の基準を満たさない学校が半数あるため、「適正規模・適正配置の手引き」(同)で適正化を進めている。


◎住民訴訟制度見直しで懇談会報告 ― 総務省
 総務省は1月16日、住民訴訟制度の見直しに関する懇談会「取りまとめ」を発表した。昨年の第31次地方制度調査会が答申した軽過失の損害賠償責任の長等への追及の在り方見直しの具体策を提言したもの。同省は、地方自治法改正案を今通常国会に提出する。
 「取りまとめ」は、軽過失の場合も損害全額を追及することは過酷だとする一方、国家賠償責任法との均衡から責任要件を故意・重過失に限定することは慎重にすべきだとした。その上で、長や職員個人が負担する損害賠償額を限定する措置が適当だと指摘。その具体策として、①負担する損害賠償額(故意・重過失を除く)は法律で定める額を上限とする②賠償責任額から条例で定める額を控除した額を免除する ― との2案を提案した。なお、条例化では参酌すべき基準・責任の下限額を法律・政令で定めることが適当だとした。また、これらの措置を講じれば、故意・重過失や軽過失での最低限負担すべき損害賠償額の請求権の放棄は慎重にすべきとした。併せて、議会が損害賠償請求権を放棄する場合は監査委員の意見聴取を義務付けることが必要だとした。なお、過去の高額賠償では汚土収集運搬作業の委託契約で福山市長に1億571万円(市長は破産)、外郭団体への補助金で神戸市長に55億3,966万円(議決で権利放棄)などの判決がある。
◎地方創生で都道府県担当課長説明会 ― 内閣府
 内閣府は1月17日、地方創生に関する都道府県等担当課長説明会を開き、2017年度の地方創生関連予算などを説明した。地方創生推進交付金(1,000億円)では、新規申請事業数を都道府県は原則7事業、市町村は原則4事業以内とし、交付限度額を都道府県は先駆が3億円、横展開が0.75億円、市町村は同2億円、0.5億円とした。また、モデル事業として先導的な地域商社事業(10事業)、組織づくりプロデューサー事業(30事業)など4事業で優遇措置する。このほか、小さな拠点・地域運営組織の形成に向け過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業(総務省・4億円)、ふるさと集落生活圏形成推進事業(国交省・1.5億円)などの活用を要請。地方創生関連交付金と併せて活用が可能な国の関連施策として、防災等に資するWi-Fi環境整備(総務省)などを紹介した。
 また、内閣府は1月10日、地方創生に対する金融機関の取組事例を発表した。空き店舗・空き家活用(大阪シティ信用金庫)、保有不動産への保育所・学童誘致・保育施設への助成等(第一生命㈱)などを紹介している。このほか、地方創生市町村長トップセミナーを福岡(10日)、大阪(12日)、東京(13日)で開催した。同セミナーで、山本幸三地方創生担当相は確かな根拠に基づく政策立案が重要だとしてRESAS(地域経済分析システム)の活用を要請した。
◎地方分権提案方式でハンドブック ― 内閣府
 内閣府は1月24日、「地方分権改革・提案募集方式ハンドブック2017年版」をまとめた。提案募集方式では、3年間に延べ180団体から1,500件超が提案され、その約7割が実現している。ハンドブックは、提案募集方式の概要や事前相談から提案までの手続き、提案実現のプロセスなどを実例をまじえて解説。提案検討のポイントとして「国の基準が厳格すぎて現場でやりたいことができない」「国の定めにより不合理な状態となったり無駄な仕事をしている」などの問題例を示し、提案方式で改善策を提案するよう求めている。
 なお、16年の提案募集では150件の対応が閣議決定された。内閣府は、うち認定こども園の認定等の都道府県から政令市への権限移譲、障害児・障害者支援事業者の権限の都道府県から中核市への権限移譲などを第7次地方分権一括法案として3月にも国会に提出する。また、自治体が「地方版ハローワーク」を自由に設置できる制度が昨年の第6次地方分権一括法で制度化されたが、総務省は同無料職業紹介に要する経費を地方交付税措置する。1月25日に示した「17年度予算編成上の留意事項」(事務連絡)に盛り込んだ。
◎都道府県財政課長等会議で地財運営説明 ― 総務省
 総務省は1月25日、全国都道府県財政課長等会議を開き、2017年度地方財政対策や予算編成上の留意点等を説明した。地方交付税算定では、国勢調査数値の置き換えで高齢者人口の伸びが各団体により違いが大きいとして過大算定しないよう留意を要請。また、17年度地財対策の目玉の1つとして創設した公共施設等適正管理推進事業費について新たに長寿命化(道路・農業水利施設)、コンパクトシティ、市町村庁舎建替えを対象に地方債充当率90%など、「補助金を補完する意味で規模の小さいところを中心に地方単独事業の財政措置を拡充した」とし、その活用を求めた。
 また、国民健康保険改革では18年度の都道府県移管に向けて保険料算定や条例改正など様々な仕事が出てくるとし、福祉保健部局だけなく財政課・市町村課も関心をもって取り組むよう要請。併せて、子ども医療費助成に対する減額調整措置が未就学児童については18年度から行わないことに決まったが「それで浮いた財源で上の年齢の医療費助成を拡大するのではなく、別の少子化対策を充実するなど見える化する」よう求めた。このほか、トップランナー方式を青少年教育施設管理では指定管理者制度導入を踏まえた算定に、公立大学運営では地方独立行政法人化を踏まえた交付税算定に変えるなどとした。
◎非常勤職の抜本見直しで法案提出へ ― 総務省
 総務省は、地方公務員の臨時・非常勤職員の採用方法・服務規律の明確化などの地方公務員法・地方自治法改正案を今国会に提出する。1月25日開催された全国都道府県財政課長等会議で明らかにした。臨時・非常勤職員は行政需要の増加に対応して64万人に増加しているが、採用方法が明確にされていないこともあり単なる事務補助職員が「特別職」に採用され、個人情報を扱っても守秘義務などの諸規制が課されず、また期末手当などが支給されないなどの課題が指摘されている。このため、昨年暮れの総務省研究会報告を受けて、「会計年度任用職員」(仮称)の規定を整備する。具体的には、地方公務員法改正で地方公務員としての服務規律を課すとともに、地方自治法改正で期末手当などの支給を可能にする。なお、特別職非常勤職員は「専門性の高い者」に、臨時的任用職員は「常勤職員の代替」にそれぞれ限定し、一般職非常勤職員への移行も進める。改正法案は19年4月1日施行を予定。
 また、同会議で総務省は、昨年成立した地方公務員育児休業法などで育児休業の対象となる子の範囲が見直されたほか、介護休業取得可能期間を3分割して取得できる、介護休業と別に介護のための労働時間短縮措置などが今年1月1日から施行されたとし、改正の趣旨を踏まえた対応を要請した。
◎地域包括ケア強化へ介護保険法改正案 ― 厚労省
 厚労省は1月27日、高齢者の自立支援・重度化防止や地域福祉計画の策定などを盛り込んだ地域包括ケアシステム強化のための介護保健法改正案をまとめた。近く閣議決定し今国会に提出する。
 自立支援・重度化防止では、全市町村が国から提供されたデータを分析の上、介護予防・重度化防止の取組内容と認定率低下などの目標を記載した介護保険事業(支援)計画を策定。同目標の達成状況を公表するとともに財政的インセンティブも付与する。併せて、都道府県による市町村への支援事業を創設する。さらに、「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入」「看取り・ターミナル」の機能と「生活施設」の機能を兼ね備えた新たな介護保険施設(介護医療院)を創設する。また、「地域共生社会」実現へ、地域福祉推進の理念に「我が事・丸ごと」を規定。地域住民の地域福祉活動の参加促進の環境を整備するほか、市町村が福祉の各分野の上位計画として「地域福祉計画」を策定(努力義務)する。高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため介護保険と障害者福祉の両制度に「共生型サービス」を位置付ける。また、市町村に地域包括支援センター事業の評価を義務付ける。このほか、介護保険制度の持続可能性確保のため2割負担のうち所得の高い層の負担割合を3割とするほか、介護納付金への総報酬割を導入する。
◎住基台帳人口の移動報告を発表 ― 総務省
 総務省は1月31日、住民基本台帳の人口移動報告を発表した。2016年の日本人の市町村間移動者は488万967人、都道府県間移動者は227万5,331人で、いずれも2年ぶりの減少となった。都道府県では、転入超過が7都府県。東京7万4,177人が最も多いが、転入超過数が5年ぶりに減少した。一方、転出超過は40道府県で、北海道6,874人、熊本6,791人、兵庫6,760人などで多い。市町村では転入超過が東京特別区や大阪市、札幌市など424団体(25%)、転出超過は北九州市や長崎市、熊本市など1,295団体(75%)だった。なお、3大都市圏全体では10万6,170人の転入超過だが、東京圏は5年ぶりに転入超過数が減少、名古屋圏・大阪圏は4年連続の転出超過となっている。
 なお、岩手・宮城・福島3県では合計で1万192人の転出超過となった。うち岩手は3,870人、宮城は483人、福島は5,839人の転出超過で、宮城は2年連続の転出超過、岩手は4年ぶりに提出超過数が前年より減少、福島は11年に転出超過が3万1,381人に達したが、それ以降、転出超過数は減少していたが、また2年連続して転出超過数が前年より増えた。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)