地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年12月中央の動き


中央の動き


◎地方創生総合戦略の改訂へ重点検討事項 ― 内閣府
 内閣府のまち・ひと・しごと創生会議は11月1日、年末に改訂する総合戦略の重点検討事項を決めた。人口減少・東京一極集中に歯止めがかからないため、ローカルアベノミクスの地域展開に向け空き店舗など地域の資産活用や地域の魅力ブランド化、地域の技の国際化などを進めるとした。また、内閣府は11月25日、第2回対象事業として地方創生推進交付金455事業・53億円、企業版ふるさと納税55事業・総事業費356億円を決めた。主な事業は、地方創生推進交付金が狩猟的価値発見による林業六次産業化(北海道占冠村)、古民家改修による観光誘客・移住(山梨県小菅村)など、企業版ふるさと納税では全天候型サッカー場整備(福島県)、LRT導入による鉄道のないまち躍動プロジェクト(栃木県宇都宮市・芳賀町)など。併せて、生涯活躍のまち形成事業に徳島県三好市、北九州市の2地域の追加を決めた。これで同事業は12件となる。
 一方、全国知事会は11月11日、東京一極集中是正のための緊急決議を決めた。東京一極集中が加速しているとし、①大学の東京への一極集中是正②企業の東京一極集中是正と地方の担い手育成・確保③整備新幹線など「地方創生回廊」の早期完備④立法措置による東京への一極集中是正の実現 ― などを要請した。


◎働き方改革実現会議でガイドライン作成指示 ― 首相
 政府は11月16日、第3回働き方改革実現会議を開き、再就職支援や人材育成などをめぐり議論。その中で安倍首相は、来年も「少なくとも今年並みの水準の賃上げを期待する」と要請。また、保育のため退職した女性などの再就職支援のため「リカレント教育・学び直し」の助成制度拡充などの考えを示した。賃上げでは、経団連の榊原会長が「産業界も賃金引き上げの勢いを継続していきたい」と応じた。また、11月29日の第4回会議では同一労働・同一賃金について議論。安倍首相が、同一労働・同一賃金のガイドラインを年内にまとめるよう関係大臣に指示した。併せて、正規・非正規の福利厚生・教育・研修などの処遇検討の必要性も強調した。来年、関連法案を提出する方針。
 一方、総務省は11月1日、国家公務員のテレワーク等の実態調査を発表した。今年9月現在、22府省庁のうち13府省庁が本格導入済みだが、全ての職員をテレワークの対象としているのは内閣府、金融庁、消費者庁、厚労省、環境省の5府省庁だけだった。なお、テレワーク推進の課題として、テレワーク用端末台数の拡充や機密情報に対するセキュリティ強化、テレワークに対する職場の理解・意識の向上、テレワーク実施職員の勤怠管理などが挙げられた。
◎2016年地方提案の対応方針案まとめる ― 内閣府
 内閣府の地方分権改革有識者会議は11月17日、2016年の地方からの提案等の対応方針案をまとめた。地方分権改革に関する地方からの提案199件について関係府省と調整、うち119件は提案どおり、その他現行規定で対応可能34件を含め合計153件(77%)について対応する。さらに調整の上、年末に閣議決定する。具体的には、空き家を活用した農林漁業体験民宿業の規制緩和(提案、兵庫県、滋賀県等)、奨学金を活用した大学等の地方定住促進(香川県)、認定こども園の認定権限の都道府県から政令市への移譲(指定市市長会)、病児保育の職員配置要件の特例(鳥取県、堺市等)、保育士処遇改善の加算認定権限の都道府県から政令市・中核市への移譲(宇都宮市)、指定障害児通所支援事業者の指定等権限の都道府県から中核市への移譲(大分市)などが盛り込まれた。
 一方、全国知事会は11月2日、地方分権研究会を発足させた。第1次・第2次地方分権改革で成果はあったものの、東京一極集中や少子高齢化の加速など社会経済情勢が大きく変わったため、改めて地方分権改革のあり方を検討することにしたもの。今後、住民自治、地方税財源、憲法などのテーマごとに検討、来年夏の全国知事会議に報告書を提案する。
◎水道事業の基盤強化で報告書 ― 厚労省
 厚労省の生活環境部会は11月22日、「国民生活を支える水道事業の基盤強化に向けて講ずべき施策」をまとめた。人口減少と水道施設の老朽化などから将来、水道事業の維持が困難になる懸念がある。このため、新たに水道施設の基礎的事項を記載した台帳整備を水道事業者等に義務付けるほか、老朽化による事故防止のため点検を含む維持・修繕、更新需要・財政収支の見通し試算と計画的な水道施設の更新の努力義務を水道法に位置付ける。さらに、給水人口5万人未満の小規模事業者には都道府県が水道事業基盤強化計画を策定するなど広域連携を推進すべきだとした。併せて、コンセッション方式(施設所有権を残し運営を民間事業者が実施)など多様な官民連携の活用も求めた。
 一方、国交省は11月28日、「インフラメンテナンス国民会議」を発足させた。産学官民が持つ技術や智恵を総動員する場として設立、①異業種の企業間連携による新たな技術でメンテナンス推進②地方自治体の支援 ― などを行う。企業177社や自治体76団体などが参加、その下に「革新的技術」「自治体支援」「技術者育成」「海外市場展開」などのフォーラムを設ける。自治体支援フォーラムでは、自治体が抱えるメンテナンスの課題について他の自治体や民間企業が課題解決に向けた智恵やアイデアなどを紹介する。
◎来年度予算編成で基本方針 ― 経済財政諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は11月25日、2017年度予算編成の基本方針を決めた。引き続き「経済再生なくして財政健全化なし」を基本に、子育て・介護や研究開発の予算化などメリハリの効いた予算編成を目指すとした。また、高市総務相はトップランナー方式を新たに青少年教育施設管理と公立大学運営に導入する方針を示した。また、まち・ひと・しごと創生事業費(1兆円)の地方交付税算定で人口減少等特別対策事業費に「取組の成果」を拡充。数値の悪い団体の割り増しを1,000億円削減し成果を挙げている団体の割り増しを1,000億円増額する。なお、安倍首相は地方行財政について「先進事例の横展開など、地方自らの頑張りを最大限引き出す改革を進めてほしい」と指示した。
 一方、財務省の財政制度等審議会は11月17日、2017年度予算の編成に関する建議を決めた。一般歳出の伸びを5,300億円、社会保障関係費の伸びを5,000億円に抑制すべきだと強調。地方財政では地方財政計画の決算乖離を踏まえ財源保障の適正規模を精査すべきだと指摘。併せて、トップランナー方式の効果反映で地方財政計画の適正化、地方税収等の上振れ分を地方財政計画上清算する仕組み導入、歳出特別枠の廃止を提言した。なお、地方六団体は10月27日の国と地方の協議の場で、地方の一般財源総額の確保とトップランナー方式の慎重な対応などを国側に要請している。
◎政府主催全国知事会議を開催 ― 政府
 政府は11月28日、政府主催全国知事会議を開催した。冒頭、安倍首相は「地方の活力無くして日本の活力無し」と述べ、地方の努力を応援する考えを強調。これを受け、山田全国知事会長は「アベノミクスの好循環継続・働き方改革の正否は地方が握っている。地方を勇気づける予算編成をお願いしたい」と要請した。このほか、各知事から「若者の東京一極集中に歯止めが必要。地方大学振興の特別支援措置、東京23区の大学・学部の新増設抑制を」(古田岐阜県知事)、「高規格道路のミッシングリンク解消など地域間競争の競争条件を整えることが大事だ」(広瀬大分県知事)、「国保制度改革は、来年度以降3,400億円の財政支援を前提に国と地方3団体が合意。財源が確保されなければ2018年度からの都道府県単位化は困難だ」(福田栃木県知事)、「(地方財政に)余裕があるはずがない。来年度の一般財源も15年度を下回らないようお願いする」(石井富山県知事)などの意見が出た。
 また、同日開催の知事会議では、2017年度税財政に関する要望のほか、「(知事)自らも仕事と生活の充実に取り組む『イクボス』となり、先頭に立って推進する」との「イクボス宣言」を採択した。また、地方3団体は11月24日、国民健康保険の2017年度財政支援3,400億円の減額の動きを「合意を反故にするもので断じて受け入れられない」との緊急要請を決めた。
◎全農改革など農業改革プランを決定 ― 政府
 政府の農林水産業・地域の活力創造本部は11月29日、農業競争力強化プログラムを決定した。農業者が自由に経営できる環境整備に向け、全国農業協同組合連合会に生産資材価格の引下げや流通・加工の構造改革など「全農改革」の年次計画作成などを求めた。このほか、各県に「農業経営塾」整備、原料原産地表示の導入、収入保険制度の導入、土地改良制度の見直し、農村に工業のほかサービス業導入の推進、生乳改革などを盛り込んだ。政府は来年、関連法案を提出する。
 一方、農水省は11月4日、「食と農の景勝地」に北海道十勝地域(新得町など9町村)、岩手県一関・平泉町、山形県鶴岡市、岐阜県馬瀬地域(下呂市)、徳島県にし阿波地域(美馬市など4市町)の5地域を認定した。食・農林水産業・景観などの地域資源を活用して外国人観光客を農山漁村にも呼び込み地域活性化を狙う。また、鳥獣被害防止特措法改正法案が11月25日成立した。捕獲した鹿や猪など鳥獣を食品として利用推進するのが柱。被害防止計画に定める事項に追加、食品利用促進のため施設整備や需要開拓を支援する。
◎2015年度の自治体決算など発表 ― 総務省
 総務省は11月30日、2015年度の地方団体の普通会計決算を発表した。都道府県・市町村(計3,071団体)の歳入総額は101兆9,175億円(前年度比0.2%減)、歳出総額は98兆4,052億円(同0.1%減)で、実質収支は1兆9,624億円の黒字だった。うち通常収支分は、歳入97兆5,110億円(同0.0%増)で、一般財源が58兆5,518億円(同3.3%増)、地方債は臨時財源対策債の減少等で10兆4,010億円、同7.4%減少した。歳出は94兆5,708億円(同0.1%増)で、人件費が0.2%増の22兆5,283億円、扶助費は子ども・子育て支援等で13兆3,292億円、同3.3%増となったが、普通建設事業費は同5.5%減の12兆5,655億円に、公債費も同3.4%減の12兆8,805億円となった。
 経常収支比率は同0.4ポイント低下の91.7%、実質公債費比率も0.5ポイント低下の9.9%となった。また、地方債現在高など実質的な地方の借金総額は137兆6,022億円(同0.7%減)となった。積立金現在高は同3.2%増の23兆3,353億円にのぼる。なお、都道府県の経常収支比率は93.4%(同0.4ポイント上昇)、実質公債費比率は12.7%(同0.4ポイント低下)、市町村の経常収支比率は90.0%(同1.3ポイント低下)、実質公債費比率は7.4%(同0.6ポイント低下)。財政再生基準超団体は北海道夕張市の1団体だけだった。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)