地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年10月中央の動き


中央の動き


◎政府機関の地方移転で取組方針 ― 政府
 政府は9月1日、政府関係機関の地方移転の取組方針を決めた。京都に全面移転する文化庁については2017年度から「地域文化創生本部(仮称)」を設置し一部を先行的に移転する。また、総務省統計局は和歌山県に「統計データ利活用センター(仮称)」を設置し18年度から一部業務を開始するが、消費者庁は17年度に「消費者行政新未来創造オフィス(仮称)」を徳島県に設置し3年後に判断する。さらに、特許庁や中小企業庁、観光庁、気象庁は地方出先機関の強化にとどめた。また、政府は2日の閣議で合計708件の地域再生計画を認定。うち、生涯活躍のまち形成事業では函館市や弘前市など10地域を初めて認定した。
 一方、政府の地方分権改革有識者会議は9月6日、116自治体から提案のあった権限移譲・規制緩和など303件に対する関係府省からの第1次回答を審議、改めて関係府省に再検討を要請した。なお、第1次回答に対し全国知事会は「空飛ぶ補助金」など16件の見直し、全国市長会は都市公園の設置可能施設の規制緩和など42件の見直し、全国町村会は地方創生推進交付金事業の手続き簡素化などを要請している。政府は年末に対応方針を閣議決定する。


◎初めて潜在的待機児童など公表 ― 厚労省
 厚労省は9月2日、保育所等関連状況を発表した。保育所等定員は263万人で前年より10万3千人増加したが、待機児童は2万3,553人で前年より386人増えた。待機児童は都市部(全体の74%)で多く、年齢別では0~2歳児が87%を占める。また、待機児童を抱える自治体は12団体増えて386市区町村となった。待機児童が多い自治体は世田谷区1,198人をトップに岡山市、那覇市、市川市で500人を超えている。さらに、集計に含まれない「潜在的な待機児童」が6万7,354人(前年比8,293人増)にのぼる。なお、待機児童の把握が各自治体によりバラツキがあるとの指摘を踏まえ、厚労省は9月15日、待機児童数調査検討会を設置した。年度内にも新基準を策定する。
 また、厚労省は9月16日、市区町村支援業務のあり方検討ワーキンググループの第2回会合を開いた。今年成立した改正児童福祉法を踏まえ、児童への在宅支援による児童虐待の未然防止策を検討するもので、年度内に市区町村の支援拠点(要保護児童等支援拠点)運営指針を盛り込んだガイドラインをまとめる。
◎地方の臨職等の実態調査結果を報告 ― 総務省
 総務省は9月13日、地方公務員の臨時・非常勤職員の実態調査結果をまとめ、同省の臨時・非常勤職員・任期付職員の任用等のあり方研究会に示した。2016年4月現在の総数は64万4,725人で、前回調査(12年)に比べ4万5,748人(7.6%)増えた。団体別では、都道府県13万8,393人、政令市5万8,046人、市区35万8,672人、町村7万3,254人で、前回調査に比べ町村で14.4%増えたほか、都道府県で9.3%、市区で7.9%増えたが、政令市は5.0%の減となった。主な職種別では事務補助職員が10万907人、教員・講師が9万2,671人、保育士6万3,393人、給食調理員3万8,069人などが多い。なお、女性が48万2,438人で全体の74.8%を占めた。また、同研究会は9月26日、自治労・日教組からヒアリングした。その中で、自治労は臨時・非常勤職員が学童指導員・消費生活指導員では9割、図書館職員・学校給食調理員・保育士では6割を占めているが、昇給制度がある自治体は2割、退職一時金は9割で支給されていないなどの実態を示し、手当支給を可能とする地方自治法改正などを求めた。
 なお、高市総務相は9月20日の記者会見で、「この調査結果や民間の同一労働同一賃金の議論などを踏まえ、年末の研究会報告や民間の働き方改革議論を踏まえ、地方の臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保に取り組みたい」と述べた。
◎医療費などの地域差分析を発表 ― 厚労省
 厚労省は9月13日、2014年度の医療費・保険料の地域差分析を発表した。いわゆる「骨太方針」の医療費増加要因・地域差「見える化」の要請を受けたもの。地域差指数(年齢差等を調整)は、市町村国民健康保険では最高が佐賀県1.199、最低が茨城県0.893で、1.34倍の較差、後期高齢者医療制度では最高が福岡県1.232、最低は新潟県0.808で、1.52倍の較差があった。また、市町村国保の保険料では最高が徳島県1.284、最低が東京都0.848で1.5倍の較差があった。なお、市町村国保・後期高齢者医療制度の一人当たり実績医療費は全国平均が51万3千円だが、最高は高知県の65万8千円、最低は千葉県の43万1千円だった。同日発表した医療費動向によると、15年度の医療費は41.5兆円で、前年度より1.5兆円(3.8%)増加した。
 一方、厚労省は9月23日の社会保障審議会介護保険部会で地域差分析を踏まえた対応策として、市町村から国への介護給付費や介護認定等のデータ提出を法律上義務付ける、また要介護状態等の改善・健康な高齢者の増加などの成果指標を設定し財政面からのインセンティブ付けをして改善を指導する考えを示した。年末にまとめ18年度介護保険制度改正案に盛り込む。
◎耐震改修促進計画・補助制度で実態調査 ― 国交省
 国交省は9月16日、自治体の耐震改修促進計画の策定状況と耐震改修に対する補助制度の整備状況(2016年4月現在)を発表した。建築物耐震改修促進法に基づく耐震改修促進計画は、都道府県では全団体、市町村も47団体を除く1,694団体で策定済み。耐震診断・改修補助が受けられる市町村数は、耐震診断では住宅が1,449団体(83%)、非住宅建築物が660団体(38%)、耐震改修は住宅が1,427団体(82%)、非住宅建築物が388団体(22%)だった。また、同省は近く「地域の水害危険性の周知方策検討会」を発足させる。これまで県庁所在地や中核市などを中心に進めてきた水位周知の取組を、役場などのある地域にも早期に拡大する。年度内にも報告をまとめる。
 一方、総務省は9月23日、自主防災組織等の充実強化方策検討会の初会合を開いた。自主防災組織の活動活性化のための支援策や「自主防災組織の手引き」の改訂などを検討する。また、政府は9月9日、南海トラフ沿いの防災対応検討ワーキングチームの初会合を開いた。東海地震だけを対象にしていた大規模地震特別措置法を見直し、南海トラフ巨大地震の防災対策も検討する。制定から40年ぶりの大震法改正となる。
◎住民票等のコンビニ交付の検討を要請 ― 総務省
 総務省は9月16日、マイナンバーカードを活用した住民サービス向上に向けた検討を各自治体に求める通知を送付した。併せて、2019年7月からスタートするマイナポータルを活用した子育てワンストップサービスの積極的な検討も要請した。高市総務相は同日の記者会見で、コンビニ交付サービスは今年9月1日現在、250自治体で参加しているが、今年度末には370自治体・人口で7,150万人が対象となるとの見通しを明らかにした。また、総務省は9月8日、マイナンバーカードの交付滞留が7月末時点で94%に当たる1,641市区町村で解消したと発表した。
 一方、総務省と文科省は、保護者・教職員や児童生徒を対象にしたインターネット利用の啓発講座「e-ネットキャラバン」を実施しているが、9月2日、新たにフィルタリングの理解向上を図る「e-キャラバンPlus」を新設したと発表した。スマートフォン利用に伴う犯罪・トラブル防止にはフィルタリングが有効だが、青少年の利用率は45%と低いため保護者・教職員向け上位講座を新設した。
◎地方公営企業抜本改革の状況を発表 ― 総務省
 総務省は9月21日、地方公営企業の抜本改革の取組状況を発表した。2009~13年度の5年間の抜本改革集中期間後の2年間の取組をまとめたもの。その結果、事業廃止が109事業あったほか、民営化・民間譲渡が26事業、広域化・広域連携が23事業、PFIが13事業、指定管理者制度導入が25事業、包括的民間委託が78事業、公営企業型地方独立行政法人が2事業それぞれあった。なお、「骨太方針」を受けて今年度からこの取組状況調査を毎年度実施、個別団体ごとに公表するなど「見える化」を進める。また、総務省は9月13日、地域医療確保・公立病院改革研究会の初会合を開いた。17年度中に今後の公立病院施策のあり方をまとめる。
 一方、厚労省と環境省は9月13日、水道施設への小水力発電の導入ポテンシャル調査結果を発表した。標高差のある水道に小水力発電を導入すればコスト削減・二酸化炭素排出の削減が期待できるため導入可能性を調査した。その結果、発電出力が20キロワット以上の地点が全国で274地点あることが分かった。
◎過疎地等の集落の現況を発表 ― 国交省
 国交省と総務省は9月21日、条件不利地域の集落の現況調査(2015年4月現在)を発表した。全国に7万5,662集落あり、638万世帯・1,538万人が居住しているが、前回調査(10年)に比べ81%の5万2,058集落で人口が減少、174集落では無居住化していた。また、市町村予測では3,614集落(5%)で「無居住化の可能性がある」とした。なお、8,649集落(14%)では人口が増加。3万287集落(40%)では転入者があった。このほか、集落機能について14%の集落で「機能低下」、3,015集落では「維持困難」としていた。問題点では、「空き家の増加」(83%)、「耕作放棄地の増大」(72%)、「働き口の減少」(69%)、「商店・スーパー等の閉鎖」(64%)などが挙げられた。
 一方、関係府省で構成するコンパクトシティ形成支援チーム会議が9月14日開催。立地適正化計画制度について福祉・子育てなどの機能誘導のための支援施策をさらに充実することなどを確認した。同計画は今年7月末現在、289市町村で取り組んでいる。
◎働き方改革実現会議が初会合 ― 政府
 政府は9月27日、働き方改革実現会議の初会合を開いた。安倍首相を議長に関係閣僚と神津連合会長、榊原日経連会長らの有識者で構成。年度内に働き方改革の実行計画を策定する。会議で、安倍首相は「働き方改革は第三の矢・構造改革の柱となる改革だ」とし、今後、①同一労働同一賃金②賃金引上げと労働生産性向上③長時間労働の是正④テレワーク、副業・兼業など柔軟な働き方⑤子育て・介護と仕事の両立 ― など9つの検討を指示した。
 一方、今年3月23日に発足した政府の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」ではガイドライン作成に向け9月30日までに8回の会合を開催しているが、9月9日には新たに「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」を発足、いわゆる36(サブロク)協定などの再検討を開始。2014年10月1日に発足させた厚労省の「長時間労働削減推進本部」も今年4月1日に第3回会合を再開している。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)