地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年8月中央の動き


中央の動き


◎提案募集の審議着手 ― 地方分権改革有識者会議
 内閣府の地方分権改革有識者会議は7月5日、提案募集で提案のあった303件の検討を始めた。提案は前年(334件)とほぼ同数だが、市町村の提案が39団体から71団体に増加。また、権限移譲に関する提案が81件から38件に減る一方、規制緩和等が253件から265件に増加。内容も、子ども・子育て支援関係が11件から48件に増加した。同会議では8月2日から関係府省ヒアリングを開始、年末に対応方針を閣議決定する。
 提案内容をみると、子ども関係では認定こども園設備の基準緩和(兵庫県等)や保育短時間制度の見直し(箕面市等)、病児保育事業の要件緩和(滋賀県等)、指定障害児通所支援事業者の指定権限の中核市への移譲(大分市)など。このほか、土地利用の規制緩和(指定都市市長会)、防災拠点・避難所の非常用合併処理浄化槽設置の規制緩和、他自治体で退職した職員の再任用制度の規制緩和(川口市)、マイナンバー利用事務の拡大(九州知事会等)、狩猟捕獲の特例制度創設(岐阜県)、砂利採取計画の認可事務の市町村関与の拡大(滑川市)などが提案されている。


◎2016年の住民基本台帳人口など発表 ― 総務省
 総務省は7月13日、住民基本台帳に基づく人口等(2016年1月現在)を発表した。全国人口は1億2,589万1,742人で、前年より27万1,834人(0.2%)減少。7年連続の減少で過去最大となった。また、死亡者増加で28万6,098人の自然減となったが、社会増減は1万4,264人の増加に転じた。都道府県別では、6団体で増加。東京の8万6,164人増が最も多い。一方、41団体で減少、北海道の3万2,545人減が最も多かった。市町村別では、市区部人口(1億1,470万人)の減少0.2%に対し町村部人口(1,118万人)は0.9%減少。構成比は市84%、区7%、町8%、村1%となった。前年に比べ最も人口増が大きい都市・町村は福岡市1万2,947人増、福岡県新宮町1,393人増、人口減少が大きかったのは北九州市5,617人減、埼玉県小川町591人減だった。また、人口2万人未満の市は歌志内市など20市ある一方、5万人超の町村が宮城県富谷町など3町ある。なお、外国住民は217万4,469人で、前年より11万1,562人、5.4%増加している。
 一方、厚労省が7月12日発表した国民生活基礎調査(15年6月現在)では、全国の世帯数は5,036万1千世帯で、うち「夫婦・未婚の子のみ世帯」1,482万世帯(29%)、「単独世帯」1,351万世帯(27%)、「夫婦のみ世帯」1,187万世帯(24%)で、「高齢者世帯」は1,271万世帯(25%)あった。また、65歳以上3,465万人の家族形態は「子と同居」39%、「夫婦のみ世帯」39%、「単独世帯」18%だった。
◎コンパクトシティでシンポ ― 都市問題公開講座
 「誰がためのコンパクトシティ」をテーマに「都市問題」公開講座(後藤・安田記念東京都市研究所主催)が7月23日、開催された。基調講演で、浅見泰司東京大学教授が「コンパクトシティは都市の郊外化を抑制し、市街地を狭くすることで公共サービスの効率化を目指すもの」だとし、その効果に自動車依存の削減と公共交通の維持で高齢社会に対応、中心市街地の活性化と行政費用の削減などを挙げた。その上で、「皆のためのコンパクトシティ」に向けて便益も費用も皆でシェアし合う制度環境の必要性を強調した。
 これを受けたパネルディスカッションでは、村山秀幸上越市長が14市町村の合併の経過から現在も複数の拠点都市で整備を進めている現状を紹介。砂原庸介神戸大学准教授は、既存の住宅地域を縮小し居住地域を限定すれば外れた住民は将来の整備が期待できず、地方議員も住宅地拡大を求めるため、コンパクトシティは現行制度では解決できないとした。札幌市職員として街づくりを進めてきた星卓志工学院大学教授も、郊外の非市街地化は生活環境の悪化を助長するなど非現実的だと指摘、「歩いて暮らせるまち」づくりのため人口分布のアンバランス是正が必要だとした。
◎2017年度予算全体像など決める ― 経済財政諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は7月26日、2017年度予算の全体像を決めた。内閣府が示した新たな中長期財政試算では、2020年度の国・地方の基礎的財政収支が5.5兆円の赤字だった。このため、安倍首相は「600兆円経済の実現に向けた取組と経済・財政再生計画に基づく歳出改革の加速」を指示した。また、17年度予算の全体像では、一億総活躍社会実現の予算はアベノミクスの成果を活用するほか、地方の歳出水準は国の取組と基調を合わせて取り組む、地方の裁量度の高い国庫支出金には政策目標の実現を自治体ごとに評価するパフォーマンス指標を設定するなどとした。
 一方、総務省の黒田武一郎自治財政局長は7月13日、全国市長会の委員会で講演。これまで順調だった税収が陰りをみせる中、消費税増税を延期する一方で財政再生計画の目標は堅持するため「来年度の地方財政は様変わりする可能性がある」との厳しい認識を示した。
◎2016年度の普通交付税大綱を発表 ― 総務省
 総務省は7月26日、16年度普通交付税大綱を発表した。総額は前年度比0.3%減の15兆6,983億円で、森林吸収源対策など重点課題対応分2,149億円を算定したほか、今年度から採用する15年国勢調査人口の減少団体の激減緩和のため、都道府県では32団体で275億円、市町村では1,170団体で778億円を措置。また、トップランナー方式では16業務について民間委託等を算定に反映させた。この結果、不交付団体は前年度より17団体増えて77団体となった。なお、不交付団体から交付団体になった団体はゼロだった。新たに不交付団体となったのは、つくば市、栃木県上三川町、和光市、市原市、君津市、国立市、川崎市、海老名市、神奈川県中井町、福井県高浜町、同おおい町、富士市、御前崎市、岡崎市、高浜市、田原市、四日市市。
◎臨時・非常勤職員の任用の在り方で研究会 ― 総務省
 総務省は7月26日、地方公務員の臨時・非常勤・任期付職員の任用等の在り方に関する研究会の初会合を開いた。臨時・非常勤職員は2012年4月現在、①特別職非常勤職員(相談員、研究員など)23万人②一般職非常勤職員(保育士など)13万人③臨時的任用職員(一般事務職員、教員・講師など)24万人 ― の合計60万4,000人だが、05年の45万人から年々増加。また、任期を設定する任期付職員が1万1,000人いる。
 これら臨時・非常勤職員等の任用などについては14年7月の通知で任用・勤務条件・再任用などの留意事項等を示しているが、このほど実施した実態調査なども踏まえて、改めてこれらの任用の在り方について検討することにしたもの。今後、自治体や有識者、職員団体からのヒアリングなどを経て、年内にも報告書をまとめる。なお、政府が6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、同一労働同一賃金の実現に向けた関連法案の国会提出を盛り込んでいる。
◎合区解消や地方税財源で提言 ― 全国知事会
 全国知事会は7月28・29日、福岡市で全国知事会議を開き決議・提言などを決めた。先の参議院選挙で導入された合区について、「自県を代表する議員が出せない」など弊害が顕在化しているとして早期解消を提案。さらに、「最高裁の判例を踏まえ(参院を「地域代表制」の組織と位置付ける)憲法改正についても議論すべきだ」とした。なお、同決議には大阪・愛知から慎重論が出た。また、地方税財源確保の提言では、人口減少対策の新たな税財政措置を求めるとともに、消費税増税延期でも保育受け皿50万人整備などを実施するとしているが、その費用は国が確保すべきで地方への負担転嫁はあってはならないと牽制。併せて、車体課税見直しの延期や地方創生推進交付金の施設整備事業の要件緩和(ハード事業の2分の1ルール撤廃)も求めた。「超高齢社会非常事態宣言」も採択。超高齢社会では認知症対策と介護人材確保対策は待ったなしの緊急課題であり国・地方が総力を挙げて取り組む時だと強調した。このほか、スポーツ・文化・観光振興施策の充実強化を求める緊急提言も採択した。
◎地域活性化3計画で改善勧告 ― 総務省
 総務省は7月29日、地域活性化に関する行政評価・監視結果に基づき内閣府等に改善勧告した。中心市街地活性化法や地域再生法に基づき各自治体は地域活性化3計画を作成しているが、291計画を抽出して人口移動や地域再生計画の申請手続などを調べた。その結果、中心市街地活性化基本計画では目標達成度7割未満が41%あった。また、地域再生計画(内閣府)と地域雇用創造計画(厚労省)の記載事項・内容が類似・重複していた。このため、中心市街地活性化施策の目標達成が困難な原因の分析と改善方策の検討、指標の設定・測定などのマニュアル整備・助言などの支援実施、地域住民との連携例など自治体の参考となる事例を収集・公表するよう勧告。また、計画書の書式統一化と手続の簡素合理化も勧告した。
◎ふるさとテレワークで23件を採択 ― 総務省
 総務省は7月29日、今年度予算のふるさとテレワーク推進事業の採択候補に23件を決めた。同事業は、サテライトオフィスやテレワークセンターを整備し、地方でも都市部の仕事ができる「ふるさとテレワーク」の環境を構築するもの。採択された事業は、女性や障害者に配慮した仕事を確保するテレワーク拠点創出プロジェクト(美唄市)、外国人も利用できるプロジェクト(北海道ニセコ町)、閉校中学校を活用したテレワーク(遠野市)、郡上クリエイティブテレワークセンター創設プロジェクト(郡上市)、個人レベルでテレワークできるコワーキングふるさとテレワーク(奈良県三郷町)、旧小学校をドローン関連事業の拠点とするもんてこいテレワーク(徳島県郡賀町)など。
 また、総務省は同日、テレワーク先駆者百選の募集を開始した。テレワーク勤務を就業規則に定めている企業や自治体が対象で、11月に選定・表彰する。
◎消費増税延期に伴う関連法で方針 ― 自民党税調
 自民党の税制調査会は7月29日、消費税の8%から10%への引上げ時期を2017年4月1日から19年10月1日に延期することに伴う関連法の対応方針を了承した。政府は臨時国会に関連法案を提出する。
 引上げの延期に伴い軽減税率の導入も19年10月に延期するとともに、請求書等保存方式(インボイス)の導入も21年4月1日を23年10月1日に延期する。また、車体課税では17年4月から自動車取得税(地方税)を廃止し環境性能割(同)を導入するとしていたが、実施時期を19年10月に延期。地方法人課税の偏在是正のため17年4月から法人住民税法人税割の税率引下げと地方法人税の税率引上げ、地方法人特別税・譲与税の廃止も、それぞれ19年10月に延期する。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)