地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年5月中央の動き


中央の動き


◎ふるさと納税の返礼品で自粛要請 ― 総務省
  総務省は4月1日、各都道府県知事等あてに出した改正地方税法の施行通知で、ふるさと納税の返礼品の自粛を求めた。これについて、高市総務相は4月5日の記者会見で「返礼品は、地方の自主的・自律的な取組を通じて、制度の趣旨に沿った運用を進めていただく観点から、総務大臣通達で良識ある対応を要請。今般、その記述を明確化した通知を発出した。必要な対応をとっていただけると考えている」と述べた。返礼品の金券等がインターネットのオークションなどで転売される事例などが出ているという。
  通知は、昨年までは「ふるさと納税の趣旨に反する返礼品(特産品)を送付する行為を行わないようにすること」として、その具体例に「換金性の高いプリペイドカード等」とだけ記していた。これに対し、今年は「金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)」「資産性の高いもの(電気・電子機器、貴金属、ゴルフ用品、自転車等)」と詳細に記述した。


◎「共通投票所」の積極的取組に期待 ― 高市総務相
  「共通投票所」制度の創設などを盛り込んだ改正公職選挙法が4月6日、成立した。投票しやすい環境整備のため、自治体の判断で駅やショッピングセンターなど利便性の高い場所に「共通投票所」を設置、有権者は指定投票所か共通投票所で投票できる。なお、設置する自治体には、投票所と共通投票所での二重投票の防止策も義務付けた。このほか、期日前投票の投票時間の弾力化(2時間の繰り上げ・下げ)や投票所に入ることができる子どもの範囲を拡大した。
  これを受けて、高市総務相は8日の閣議後会見で「投票環境の向上につながるので、積極的な取組を期待している」と述べ、共通投票所の設置等で各選管に意向調査を実施していることを明らかにした。同時に、二重投票防止には共通投票所と各投票所での投票済み情報の共有などオンラインシステム整備が必要となるが、「国政選挙のみで使われるオンライン環境をつくる時には全額(国費で)措置される」と述べた。
◎非正規雇用の賃金の欧州並を提言 ― 自民党PT
  自民党の「同一労働同一賃金問題検証プロジェクトチーム」は4月8日、非正規雇用の待遇改善のため「同一労働同一賃金」を求める中間報告をまとめた。正社員等とパートの賃金比は、フランス89%、ドイツ79%などと比べ日本は57%と低く、これが若い世代の不本意の非正規雇用、出生率の低下など構造的課題の源となっていると指摘。このため、「欧州諸国に遜色ない水準」を目指すべきだとした。具体的には、企業横断的ではなく同一企業内の「同一労働同一賃金」を基本に、「職務内容」賃金は正社員と非正規雇用で同一とし、それに関連しない一定の待遇は「共通」にすべきだとした。さらに、「ガイドライン」を策定し2017年春闘での行政指導の展開、包括的な法整備で非正規雇用の処遇改善を加速、2020年頃までに最低賃金1,000円の実現を提言した。
  また、自民党の「一億総活躍推進本部」「日本経済再生本部」も4月26日、それぞれ提言をまとめた。いずれも同一労働同一賃金の実現を求めるとともに、保育士や介護士の賃金改善、高齢者の雇用促進やロボット・ITなどの活用促進、TPPによる市場拡大などを提言した。なお、内閣府は4月18日の経済財政諮問会議に「一億総活躍社会実現の経済効果」を提出。2025年度に労働供給で5.8兆円、賃金総額では20.7兆円押し上げるなどと試算した。
◎「林地台帳」整備へ協議の場 ― 農水省・地方3団体
  農水省は4月14日、林地台帳の整備等森林整備に向けた協議の場の初会合を開いた。今国会に提出されている森林法改正案に、市町村への「林地台帳」の作成・公表が盛り込まれていることから、その「マニュアル」策定などに向け農水省と知事・市長・町村長による協議の場を設置した。山林の地籍調査は44%と遅れており、森林の所有者の特定困難・林地境界の不明などが森林整備の妨げとなっている。このため「林地台帳」を作成するもので、年内にも報告をまとめる。なお、今年度の総務省予算に「森林吸収源対策」として林地台帳の整備などに500億円が計上されている。
  一方、国交省等は3月15日に市町村向けの「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン」を策定するとともに、弁護士などによる相談窓口を設置した。所有者の所在不明が、公共事業用地の取得や農地の集約化、森林の適正管理、さらに災害復旧などで都道府県・市町村の事業推進を妨げているとし、ガイドラインでは、所有者の探索方法や所有者を把握できない場合に活用できる制度・解決事例などを解説している。
◎参院の地域代表制へ憲法改正など提言 ― 全国知事会
  全国知事会の総合戦略・政権評価特別委員会は4月14日、参議院を地域代表制とするよう求める「憲法と地方自治研究会」の中間報告を了承した。公職選挙法改正で参議院の選挙区に4県2区の「合区」が初めて導入された。中間報告は、この「合区」の問題点として、①都道府県ごとに集約される民意を生かす機能が後退②地方の声が届きにくくなり、合区内2県の意見が異なる場合の意見集約も困難③合区4県のみが県単位の意見を国政に届けられず、「一票の価値」と異なる不平等がある ― などと指摘。このため、参議院総定数252人を復元した上で一票の格差を是正する公職選挙法を改正するとともに、憲法改正で参議院における地方代表制を明記すべきだとした。
  また、参議院選挙での各政党の政権公約に向けた提案、「日本創生十箇条」(仮称)を大筋了承した。さらに、各政党の政権公約を「定性評価」することも決めた。「日本創生十箇条」では、「国・地方が心を一にして地方創生を成し遂げる」「人口減少問題を打開し、次世代を担うひとづくりに邁進」「無限の可能性を秘める女性の活躍を推進」「国民の懸念を払拭するTPP対策に万全を期す」「真の地方分権改革で地方自治を強化」「安心・安全の源となる持続可能な社会保障制度を確立」などを挙げている。
◎庁舎損壊で対応支障、職員派遣千人に ― 熊本地震
  4月14日・16日に発生した熊本地震では被害が拡大。政府は、非常災害対策本部を設置し消防等の支援体制を3万人に拡大、25日に激甚災害、28日には特定非常災害に指定した。総務省も普通交付税を繰り上げ交付した。また、全国知事会など地方3団体も対策本部等を設置し職員派遣などの支援を始めた。総務省調査では4月25日現在、派遣職員は1,000人にのぼる。
  一方、今回の震災では宇土市や八代市、益城町、大津町の庁舎が損壊し防災拠点を失った。総務省消防庁調査では、防災拠点となる公共施設等約19万棟で耐震基準を満たしているのは88%あるが、庁舎は75%にとどまる。また、総務省が1月に発表した自治体の業務継続計画の策定率(2015年12月)は、都道府県89%に対し、市町村は37%と低い。同計画は、災害時には行政自らも被災するため、その制約下での優先業務の特定と執行体制・手順等をあらかじめ定めておくもの。総務省は「市町村のための業務継続計画作成ガイドライン」を参考に改めて積極的な対応を求めている。
◎地方版総合戦略ほぼ全団体で策定済み ― 内閣府
  内閣府は4月19日、地方版総合戦略の策定状況(3月31日現在)を発表した。全都道府県と4市区町を除く市町村が策定。ほぼ全団体が策定のための組織を設置、うち40道府県と56%の市町村では「産官学金労言」の全てが参加していた。また、市町村の44%で高校生、20%は中学生以下からも意見を聞いた。さらに、全団体がPDCAサイクルを実施する体制を整備するとしている。なお、未策定の宮城県女川町と常総市は災害関連、中央区は東京五輪、足立区は総合計画との関連で期限内策定を見送った。
  また、内閣府は4月21日、地方創生に関する都道府県等担当課長説明会を開催。新型交付金や企業版ふるさと納税などを説明するとともに、2015年度補正予算に計上された「地方創生加速化交付金」(総額1,000億円)の第2次分(94億円)の申請受付を開始した。このほか、4月20日には地域運営組織に関する有識者会議の第3回会合を開き、同組織の法人化に向け、NPO法人・一般社団法人・認可地縁団体などの法人形態の比較などを検討した。夏に中間報告をまとめる。
◎道州制基本法の議論再開 ― 自民党道州制推進本部
  自民党の道州制推進本部は4月26日、新たな体制(原田義昭本部長)で「道州制基本法案」の党内議論を再開した。人口減少・少子高齢化などの構造的課題解決には「新たな国のかたち」の模索が必要だとして、「道州制導入の具体的方針」7項目を了承した。基本法案では、地方分権や広域連合、地方の国際化・情報化との関係などについて論点を整理するほか、国民啓発のため「道州制マップ」(区割り)や「道州制パンフレット」を作成する。また、「国土形成計画」の取組を参考とするほか、先行的道州制を選定し具体的な行動計画の策定を目指す。このため、検討組織を設け道州制の研究を深化させるとした。
  自民党は2012年に道州制基本法案(骨子案)をまとめ、国会提出の準備を始めたが、全国町村会などが猛反発、自民党議員も慎重論が大勢を占めたため、同法案の国会提出の見送りを決めた。それ以降、同本部も休眠状態にあった。なお、今年の参議院選挙の選挙公約では「道州制の推進」を明記する方針だ。
◎行財政の「見える化」推進など強調 ― 総務省
  総務省は4月27日、全国都道府県財政課長等会議を開いた。その中で、安田自治財政局長は、閣議決定された「経済・財政再生アクション・プログラム」に沿って、地方行財政改革や第三セクター改革、トップランナー方式の導入、地方財政の全面的な「見える化」を進めるとした。また、「公共施設等総合管理計画」「固定資産台帳」などの整備を要請。併せて、今年度予算の地方単独事業を含めた早期執行を求めた。
  次いで、各担当課長らが説明。地方行政サービス改革では、「見える化・比較可能な形の公表」に向けて、民間委託や窓口業務、情報システム・クラウド化、地方公会計の整備等について都道府県は6月・市町村は7月(都道府県が担当)までにヒアリング調査し、来年3月に公表するとした。また、公務員関係では、女性地方公務員の活躍促進に向け、女性の割合(市町村は課長20%、係長35%等)など成果目標値を定めた「特定事業主行動計画」の策定を求めるとともに、臨時・非常勤職員の任用では2014年の通知を紹介し、職務内容が一般職と同一と認められる職では一般職として任用すべきだなどとした。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)