地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年2月中央の動き


中央の動き


◎新型交付金など地方創生で説明会 ― 内閣府
 内閣府は1月14日、地方創生に関する都道府県等担当課長会議を開き、新型交付金や企業版ふるさと納税など2016年度予算の地方創生関連施策を説明した。新型交付金は、KPIやPDCAサイクルを組み込み、従来の「縦割り」を超えた自治体の自主的な取組事業を支援する。自治体は、地域再生計画を作成して申請する。対象事業は、①先駆性ある取組②既存事業の隘路を打開する取組③先駆的・優良事例の横展開 ― で、具体的には、地方移住・生涯活躍のまちや、観光地域づくり、地場産品など地域の魅力ブランド化、都市のコンパクト化、小さな拠点形成などを想定している。
 予算総額は1,000億円(補助率2分の1)で、複数年度の事業も認める。また、地域再生法に基づく交付金とし、予算措置から恒久的な措置とする。さらに、補助率2分の1の裏負担を総務省が地方創生1兆円とは別に地方財政措置する。ソフト事業は半分を普通交付税で措置し、それを上回る分は特別交付税で支援。特交の措置率は都道府県0.5、市町村は0.8とし、財政力の弱い団体に手厚く措置する。ハード事業は充当率を9割、交付税措置率は3割とする。


◎小さな拠点づくりフォーラムを開催 ― 内閣府
 内閣府は1月20日、都内で「小さな拠点づくりフォーラム」を開催した。速水雲南市長が、「まちづくり基本条例」で小学校区(公民館)単位に30の小規模多機能自治組織を設置するなど、地域横断型の取組を報告。次いで、「きらりよしじまネットワーク」(山形県川西町)、「上神の郷応援団」(和歌山県紀美野町)、「おばら創生プロジェクト」(安芸高田市)の取組が紹介され、小田切徳美明治大教授が小さな拠点づくりに向け「組織や人、仕組みのつなぎ直し」の必要性を強調した。また、内閣府がまとめた「小さな拠点づくりの手引き」が紹介された。
 内閣府は同日、2016年度の小さな拠点関係予算の説明会を開いた。内閣府は、同構想を新型交付金の対象とするほか、小さな拠点事業を行う地域住民による株式会社への税制特例措置などを紹介。また、総務省は地域運営組織の運営支援や高齢者等の暮らしを守る事業への地方交付税措置(500億円)のほか、過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業と国交省のふるさと集落生活圏形成推進事業等の申請手続きを一本化するとした。このほか、農山漁村振興交付金(農水省、80億円)、多機関協働による包括的支援体制構築事業(厚労省、5億円)、地域エネルギー供給拠点整備事業(経産省、30億円)などが紹介された。
◎農林水産業の輸出強化策検討へWG設置 ― 政府
 政府は1月22日、農林水産業・地域の活力創造本部を開き、「農林水産業の輸出力強化ワーキンググループ」の設置を決めた。総合的なTPP関連政策大綱の継続検討項目に盛り込まれた農林水産物・食品の輸出総額1兆円目標の具体策を検討、秋に具体策をまとめる。同日の会合で、安倍首相は「輸出促進は『農政新時代』の一丁目一番地。おいしくて、安全な日本の農産物にとって、TPPは世界に売り込む大きなチャンス。具体的な戦略を議論してほしい」と指示した。
 一方、昨年の地方分権一括法で4㌶超の農地転用許可が都道府県と指定市町村に権限移譲されるが、農水省は1月27日の全国市長会の会合で、指定市町村の申請受付を4月15日、5月13日、8月12日とし、早ければ6月1日にも指定する見通しを示した。その後も引き続き申請を受け付ける。このほか、同省は1月22日、「補助金の逆引き事典」を公表した。「誰が」「何をしたいか」からも事業情報が検索できるようにした。
◎都道府県財政課長会議で予算案等を説明 ― 総務省
 総務省は1月25日、全国都道府県財政課長等会議を開き、2016年度地方財政の見通し等の事務連絡を示すとともに、予算編成上の留意事項等を説明した。その中で、「骨太方針」に盛り込まれた民間委託など歳出効率化で他団体のモデルを地方交付税算定に反映させる「トップランナー方式」について、来年度から16業務(対象は23業務)について導入するとした。その例として、学校用務員事務では一校当たり370万円を民間委託292万円に向けて単位費用を引下げ、税徴収率は上位3分の1に向けて段階的に見直すなどとした。このほか、特別交付税の割合6%から4%への引下げについて、最近の災害多発を踏まえ改めて地方交付税法改正で6%とする方針を示した。また、地方財政の全面的な「見える化」を進めるとした。国が4月から導入するフレックスタイム制については、近く条例例を示すとし、地方公務員についても導入を求めた。
 一方、経済財政諮問会議は1月21日、今年夏の骨太方針に向けた審議に着手。今後の検討課題として、①600兆円経済の実現②消費税率再引上げの円滑実施③経済・財政再生計画の推進 ― を決めた。財政再生関係では、ワイズスペンディングの仕組み強化や改革工程表のレビュー、社会保障の給付・負担のあり方(高齢者から若年世代へ)などを検討する。
◎行政サービス改革の見える化など公表へ ― 総務省
 総務省は、昨年の骨太方針2015を受けて地方行政サービスのアウトソーシング推進や公営企業・第三セクター等の経営健全化などを比較可能な形で公表するが、各都道府県の取組状況を6月頃までにヒアリングし、年度内に公表する方針だ。1月25日の全国都道府県財政課長等会議で説明した。
 公表するのは、民間委託の実施状況をはじめ、指定管理者制度の導入状況、窓口業務の状況、総務事務センターの設置状況、クラウド化の実施状況、公共施設等総合管理計画の策定状況、地方公会計の整備など。うち、民間委託やクラウド化などの取組状況は都道府県間・政令市間の比較、各都道府県内の市町村の取組割合と全国平均の比較なども見える化し公表する。さらに、業務改革プロジェクトを実施する。人口10万~20万人都市を対象に今後3年間、毎年6団体ほど選定し、「業務プロセス再構築」手法を活用して窓口業務や庶務業務のICT化やオープン化・アウトソーシングなどの業務改革を推進する。
◎市町村主体の森林・林業施策を支援へ ― 総務省
 総務省は、国際公約した温室効果ガスの削減目標達成のため新たに市町村主体の森林・林業施策を支援する。2016年度予算案に森林吸収源対策として500億円を計上した。1月25日の全国都道府県財政課長等会議でその概要を説明した。
 昨年暮れに温室効果ガス排出削減の「パリ協定」が採択され、16年度与党税制改正大綱では市町村主体の本格的な間伐等のための財源として森林環境税(仮称)の検討も明記された。今回、その準備経費として予算計上したもの。具体的には、森林整備に必要となる基礎情報を「林地台帳」として整備するほか、森林所有者の確定や境界を明確化。施業の集約化も進める。また、林業の担い手対策として新規就業する若者等への研修や定住促進、福利厚生の充実も進める。さらに、間伐等で生産された木材を活用するため公共施設への利用や木質バイオマス化などを進める。同事業は、普通交付税と特別交付税を組み合わせて財政措置する。
◎2015年の住民基本台帳人口移動を発表 ― 総務省
 総務省は1月29日、2015年の住民基本台帳の人口移動報告を発表した。都道府県別の転入超過は、東京の8万1,696人をトップに、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡、沖縄の8都府県。東京は4年連続の転入超過。大阪と沖縄は前年の転出超過から転入超過に転じた。一方、転出超過は北海道の8,862人を最多に39道府県で、うち宮城1県が前年の転入超過から転出超過になった。3大都市圏では東京圏が11万9,357人の転入超過で、20年連続の転入超過。一方、名古屋圏は1,090人、大阪圏は9,354人の転出超過で、それぞれ3年連続の転出超過となった。政府は地方創生で20年に東京圏の転出入を均衡させる目標を掲げているが、東京圏への人口集中が加速した。総務省は、景気回復で就職など東京圏への流入が進んでいるとみている。
 市町村では、全国1,718団体のうち転入超過は407団体(24%)で、76%の1,311団体が転出超過となった。転入超過は東京都特別区の6万8,917人をトップに、大阪市(1万1,662人)、福岡市(8,880人)などで多い。転出超過は北九州市3,088人をトップに、横須賀市(1,785人)、長崎市(1,574人)などで多い。なお、15年の都道府県間での移動者は233万4,738人で、4年ぶりに増加。市町村間の移動者は504万1,483人で12年ぶりの増加となった。
◎非正規労働者の待遇改善など検討へ ― 一億国民会議
 政府の一億総活躍国民会議は1月29日、今年春にまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」に向けた議論を開始した。会議で、安倍首相は、「より構造的問題を取り上げたい」と述べ、①働き方改革②子育て・介護の環境整備③成長と分配の好循環 ― の検討を指示した。うち、働き方改革では「同一労働同一賃金」の実現など非正規雇用労働者の待遇改善、定年延長企業の奨励など高齢者雇用促進、総労働時間抑制など長時間労働是正の検討を挙げた。また、介護職・保育士の待遇改善のほか、若者・女性・障害者・難病の人の就業促進、格差を固定化させない子どもの教育問題も取り上げたいとした。加藤一億総活躍相は、同日の記者会見で「10年間の工程表を示したい」と述べた。
 一方、連合と経団連のトップ会談が1月29日開かれ、16年春闘がスタートした。労使とも「デフレ脱却には賃上げが必要」との基本的な認識では一致するが、賃上げの具体化では「月例賃金の引上げでないと賃上げの広がりがない」(神津連合会長)、「月例賃金だけが消費を喚起するわけではない」(榊原経団連会長)と、両者の溝が改めて示された。
◎鉄道沿線のまちづくりでガイドライン ― 国交省
 国交省は、鉄道を軸に都市機能が集積している構造を活かして駅周辺に都市機能を再編、コンパクトシティを形成する「鉄道沿線まちづくり」を進める。このため、このほど「鉄道沿線まちづくりガイドライン」を作成、2016年度予算案に3億700万円を計上した。
 人口減少・高齢化で都市サービス・都市経営の持続性が低下、鉄道沿線でも通勤客等の減少などが懸念されている。このため、駅周辺に福祉・子育て支援、買い物等の生活支援機能を誘導するとともに、拠点病院や大規模商業施設、文化ホールなどの高次都市機能は沿線の市町村間で分担・連携して整備する。今後、沿線市町村や関係都道府県、鉄道・バス事業者、地域住民、地元商工会、開発事業者らが参画する協議会を設置し、現状の課題などを把握した上で「鉄道沿線まちづくり方針」「鉄道沿線まちづくり計画」を作成する。来年度予算案では、同協議会の設置などをコンパクトシティ形成支援事業の対象として支援する。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)