地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2014年10月中央の動き


中央の動き


◎地方創生2法案を閣議決定 ― 政府
 政府は9月29日、「まち・ひと・しごと創生法案」と「地域再生法改正案」を決めた。安倍晋三首相は所信表明演説で、同日開幕した臨時国会を「地方創生国会」と位置付け、地方創生実現へ意欲を示した。
 まち・ひと・しごと創生法案は、「目的」に人口減少の歯止めと東京圏への人口集中の是正などを掲げた。「基本理念」には、①結婚・出産・育児に希望を持てる環境整備②仕事と生活の調和が図れる環境整備③魅力ある就業機会の創出④市町村相互間の広域的連携協力体制の構築 ― など7項目を挙げた。また、国が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を作成、これを受けて、各自治体が「都道府県総合戦略」「市町村総合戦略」をそれぞれ策定する。地域再生法改正案は、国の各種地域支援策の窓口を一元化するなど活性化に取り組む自治体を支援することなどが柱。


◎地方創生で石破担当相らと意見交換 ― 地方六団体
 地方六団体は9月24日、地方創生について石破茂地方創生担当相との意見交換を行うとともに、菅義偉官房長官や高市早苗総務相に対し、地方創生の推進等について要請した。
 石破担当相との意見交換で、六団体側は「国と地方の連携・協力なくして人口減少社会の諸問題の克服は実現できない」と強調し、国の長期ビジョン作成では地方側の意見を反映させるとともに、農地転用許可など法令・制度見直しも行うよう要請。併せて、「まち・ひと・しごと創生推進交付金」(仮称)の創設では、①各省補助金の寄せ集めでなく地域実情に応じて活用できる包括的な交付金を大胆な規模で設ける②少子化や農林水産業振興、中小企業支援など幅広いソフト事業にも活用できるようにする ― などを要請した。
◎提案募集で各府省に再検討を要請 ― 内閣府
 政府の地方分権改革有識者会議は9月18日、提案募集検討専門部会との合同会議を開き、自治体からの提案に対する各府省の第1次回答などについて審議。さらなる提案事項の実現に向け、内閣府は9月26日、各府省に対し提案事項の再検討を要請した。
 提案募集検討専門部会ではこれまで、提案募集で自治体側から提案された953件(126自治体)について、提案自治体や関係府省からヒアリングを続けていたが、各府省からの第1次回答では8割が「対応不可」だった。このため、9月16日の同専門部会で地方三団体は、農地転用や「空飛ぶ補助金」見直しなど280件の権限移譲や義務付け・枠付け293件の見直しなどを再要請。併せて、全国知事会では市町村への権限移譲115件の提案を受け入れるなどを報告していた。
 内閣府は、今後、10月中旬にも各府省から第2次回答を受け、さらに個別協議を進め、年末には「対応方針」を政府の地方分権改革推進本部で決定する方針。
◎国土形成計画改訂へ計画部会 ― 国土交通省
 国土交通省の国土審議会は9月18日、国土形成計画の改訂に向け計画部会を設置することを決めた。同部会は10月2日に初会合を開き、来年夏にも最終とりまとめを行う。
 国土形成計画は、国土の利用・整備・保全を推進するための総合的・基本的な計画で、全国計画とブロック単位で定める広域地方計画があり、全国計画は2008年に初めて閣議決定された。しかし、その後の急激な人口減少・少子化や高齢化の進展、都市間競争の激化、巨大災害の切迫などの環境変化を踏まえ、現行計画を改訂することにした。審議会では、委員から「地方が疲弊しないためネットワーク道路整備を強調すべき」「知恵を地方に委ねるだけではだめだ」「地方創生との連携・役割分担も必要」などの意見が出た。
◎地方創生対応へ有識者懇や本部 ― 町村会・知事会
 全国町村会は9月16日、人口減少対策に関する有識者懇談会を発足させた。政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が発足、町村が現在直面している人口流出や地域経済の疲弊問題などに関連する政策展開が予想されるため、今後の国の政策への意見反映を図る。有識者懇は、大森彌東京大名誉教授を座長に6名の有識者で構成。11月にも当面の報告をまとめる予定。
 また、全国知事会は9月22日、知事会内に「地方創生対策本部」を設置した。今後、国の創生本部の動きに対応し適宜提言などを行う。古田肇岐阜県知事を本部長に、地方創生に関連する委員会の委員長やPTリーダー11県知事で構成。
◎我が国の高齢者・人口動態を発表 ― 総務省・厚労省
 総務省は9月15日、「統計からみた我が国の高齢者」(2014年9月15日現在推計)を発表した。65歳以上の高齢者人口は3,296万人で、総人口の25.9%と過去最高を更新。また、高齢者の就業者が636万人に増加、全就業者数の10.1%と過去最高になった。このほか、高齢者のいる世帯も2,086万を超え、高齢単身世帯は552万世帯に増加した。
 また、厚生労働省が9月11日公表した2013年の人口動態統計によると、出生数は102万9,816人で、前年より7,415人減少したが、合計特殊出生率は1.43で前年の1.41を上回った。一方、死亡数は126万8,436人で、前年より1万2,077人増加。この結果、自然増減数は23万8,620人の減、自然増減率(人口千対)も1.9の減で、前年の1.7減を上回るなど、数・率とも7年連続してマイナスとなった。両統計で、我が国の少子高齢化の実態が改めて浮き彫りとなった。
◎地方創生本部が初会合 ― 政府
 政府のまち・ひと・しごと創生本部は9月12日、初会合を開き、「基本方針」や「まち・ひと・ひごと創生会議」の設置などを決めた。同本部は、安倍晋三首相を本部長に全閣僚で構成。
 安倍首相は、挨拶で、豊かで明るく元気な地方創生に向け「地方の意見を伺いながら従来とは異次元の大胆な政策をまとめる。その際、各府省の縦割りやバラマキ型は断固排除する」と述べた。また、「基本方針」は、「50年後に1億人程度の人口維持」のため、「人口減少克服・地方創生」に取り組むとし、その具体策に①若い世代の就労・結婚・子育ての希望実現②「東京一極集中」の歯止め③地域の特性に即した地域課題の解決 ― を挙げた。さらに、国・地方が取り組む指針となる「長期ビジョン」「総合戦略」を年内にも決定するとした。このほか、「まち・ひと・しごと創生会議」構成員に、増田寛也東京大公共政策大学院客員教授、伊東香織岡山県倉敷市長ら12人も決めた。
◎農業・農村政策のあり方で初の提言 ― 全国町村会
 全国町村会は9月10日、「都市・農村共生社会の創造 ― 田園回帰の時代を迎えて」と題した農業・農村政策のあり方についての提言をまとめた。
 提言は、農村の価値を再評価する最近の新たな動きを「田園回帰の時代」と捉えた上で、農村の新たな可能性に「少子化に抗する砦」「災害時のバックアップ」「新たなビジネスモデルの場」などを挙げ、「都市と農村が共生関係を築く時代」だとした。その上で、「農村のあるべき姿を実現する農業・農村政策」には、多面的機能の発揮・農村の振興・農業の発展のバランス均衡が不可欠だと強調。このため、①農政に関する「国と自治体の協議の場」を設けて政策内容や財源のあり方を決める②現行補助を移行した「農村価値創生交付金制度」(仮称)を創設する ― などを提言した。
◎地方法人課税と自動車関係税で検討会 ― 総務省
 総務省は9月9日に「地方法人課税のあり方に関する検討会」、12日に「自動車関係税制のあり方に関する検討会」をそれぞれ開き、年末の来年度税制改正に向けた議論に着手した。いずれも巨額な「減税」への税源補てん策が焦点となる。
 法人税をめぐっては、6月に閣議決定された骨太の方針2014で、「数年で法人実効税率を20%台まで引下げを目指す。来年度から実施する」ことが明記された。その減収補てん策は今後、政府内で詰めるが、地方法人課税では資本金1億円超企業に導入されている外形標準課税の対象拡大が焦点になるとみられる。ただ、日本経団連は9月19日の同検討会で、法人実効税率を来年度は2%以上引下げ、3年を目途に20%台とするよう要請。地方法人課税では、「外形標準課税は安易に拡大すべきではない」と牽制した。また、自動車関係税制では、昨年暮れに与党が決めた2014年度与党税制改正大綱で、消費税率10%への引上げ時に自動車取得税を廃止する一方、環境性能課税を導入するなどの方針が決まっている。9月26日の検討会では、自動車関係団体から意見聴取した。
◎第2次改造内閣が発足、分権は創生相に ― 政府
 第2次安倍改造内閣が9月3日発足した。新設した地方創生担当相に石破茂氏、女性活用担当相に有村治子氏を起用、総務相には高市早苗氏が就任した。
 就任後の会見で、安倍晋三首相は「改造内閣の最大課題の一つが元気で豊かな地方の創生。女性が輝く社会実現も大きなチャレンジだ」と述べた。また、「地域活性化や地方分権、道州制改革などあらゆる地方政策に関わる権限を集中して新たに地方創生担当大臣を創設した」と述べ、これまで総務相が所管していた地方分権も地方創生相に移管した。高市総務相は、初閣議後の会見で、「日本列島の津々浦々まで、活力が、また景気回復の恩恵が行き渡って、ご家庭で景気回復を実感していただける形を作りたい」と述べ、ローカルアベノミクスへの取り組みの意欲を示した。
◎道州制と町村議会研究会が会合 ― 全国町村議長会
 全国町村議会議長会の「道州制と町村議会に関する研究会」は9月2日、第17回会合を開いた。同研究会では、今後も国等の動向をみながら研究会を開催する。
 同研究会は今年3月に「道州制の導入には反対 ― 道州制の問題点」と題する報告をまとめた。しかし、9月3日に発足した第2次安倍改造内閣では、安倍晋三首相が石破茂地域創生担当相に「道州制の導入を目指した検討」を指示。これを受けて、石破担当相も記者会見(9月5日)で「(道州制に向けた)この議論をさらに加速したい」との意向を表明している。また、自民党でも内閣改造に合わせて、道州制推進本部長に新たに佐田玄一郎氏が就任した。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集員・委嘱研究員、元自治日報編集長)