地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2023年12月中央の動き

◎花粉症対策で初期集中対応パッケージ ― 政府

政府は10月11日、花粉症に関する関係閣僚会議を開き、「花粉症対策・初期集中対応パッケージ」をまとめた。今年5月に発表した「花粉症対策の全体像」を受けて発生源対策、飛散対策、発症・曝露対策について示した。具体的には、スギ人工林の伐採・植替の加速化に併せて花粉の少ない苗木の生産を拡大する。また、スギ花粉飛散量の予測では花芽調査情報の詳細化や花粉飛散量の標準的な表示ランクの設定、飛散防止剤の実証試験・環境影響調査などを実施する。併せて、花粉症治療では診療ガイドラインを改訂するほか、免疫療法治療薬を2025年度から倍増、さらに花粉対策に資する商品の認証制度を実施する。

一方、政府は10月13日、新たな「全国森林計画」(2024~39年度)を閣議決定した。都道府県知事が策定する地域森林計画の指針となるもので、花粉発生源対策の加速化を盛り込んだ。このほか、盛土安全対策や木材合法性確認の取組強化、林業労働力の確保、高度な森林資源情報の整備・活用などを盛り込んだ。

◎デジタルで公共サービス・地域経済を活性化 ― 政府

政府は10月11日、デジタル行財政改革会議の初会合を開いた。急激な人口減少社会に対応するためデジタルを活用して公共サービスの維持・強化と地域経済の活性化を図る方策を検討する。会議で岸田首相(議長)は、デジタル行財政改革の3本柱に①デジタルによる質の高い公共サービスの提供②デジタル活用を阻害している規制・制度の徹底した改革③EBPM(証拠に基づく政策立案)を活用した予算の見える化による事業・基金の見直し ― を挙げた。その上で、各担当相に「国・地方のデジタル基盤の統一化・共通化」(総務相等)、「地域交通の担い手不足対策」(国交相)、「介護事業者向けのDX支援」(厚労相)、「避難所等でのマイナンバーカード活用」(防災担当相)などを指示した。

また、全国知事会と全国市長会は10月5、6日、それぞれ自治体情報システム標準化で緊急提言を発表した。各自治体は2025年度末までの標準準拠システムへの移行を進めているが、デジタル基盤改革支援補助金で超過負担が見込まれるとして予算の大幅拡充と適切な移行期限を設定するなどの柔軟な対応を求めた。

◎認知症対策で「幸齢社会」実現会議 ― 政府

政府は10月12日、第2回認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議を開き、「認知症基本法の施行準備に向けた都道府県・市町村の取組支援」を提示した。国の認知症施策推進基本計画を受けて都道府県と市町村が各計画を策定(努力義務)する。このため、計画策定準備のための財政支援のほか、基本法の解説冊子の作成と自治体からの相談窓口を設置。さらに、身寄のない高齢者の住まい支援や高齢者の消費者被害防止への対応、認知症治療の早期発見・早期介入、検査・医療提供体制の整備などに取り組むとした。

一方、内閣府は10月20日、がん対策に関する世論調査を発表した。がん検診(2年以内)は43%が受けたが、56%は受けていなかった。健診を受診した理由では「身近な人ががんに」(29%)、「健康診断ですすめられた」(28%)が多く、受診しない理由では「いつでも受診できる」(24%)、「経済的に負担」(23%)が多かった。また、がん治療(2週間に1度通院)があっても働き続けられるかについて、「そう思わない」が54%と過半数を超えた。その理由では、「両立が体力的に困難」(28%)、「代わりに仕事をする人がいない」(22%)が多かった。

◎自治体のグリーンインフラで実践ガイド ― 国交省

国交省は10月16日、自治体等のための「グリーンインフラ実践ガイド」を公表した。「グリーンインフラ推進戦略2023」で示したネイチャーポジティブやカーボンニュートラル、ネットゼロなどを実装するため、多様な地域主体で必要とされる背景や実践時の基本的考え方を解説。併せて、自治体による行政計画への位置付け、官民連携・分野横断による事業の実施手法などのプロセスを示した。具体的には、①都市部では緑や水辺の創出・活用を通じて気候変動への適応、居心地よく歩きたくなるまちなかづくり②郊外部では緑や水辺の保全・管理・再生を通じて流域治水、生態系ネットワークの構築、交流・コミュニティ形成③農山漁村部では自然環境の保全・管理を災害に強い地域づくりと産業の振興につなげる ― などを示した。

また、国交省は10月19日、移住・二地域居住等促進専門委員会を発足させた。今年7月に閣議決定された新たな国土形成計画で地方への人の流れの創出・拡大が掲げられた。これを受けて専門委では、移住・二地域居住を促進するための施策を検討する。

◎いじめ防止へ自治体の指導・助言を強化 ― 文科省

文科省は10月17日、不登校・いじめ緊急対策パッケージを発表した。不登校児童数が小・中学校で約30万人、学校内外で相談・指導を受けていない小・中学生は約11万人と過去最多、いじめ重大事態も923件(2022年度)と過去最多を更新した。このため、いじめの重大事態化を防ぐための早期発見・早期支援と個別自治体の指導・助言などを強化する。また、アプリ等による「心の健康観察」の推進と子どものSOS相談窓口の周知、課題を抱える重点配置校へのスクールカウンセラー・ソーシャルワーカーを配置・充実する。さらに、重大事態の未然防止に向けた国の個別サポートチーム派遣、首長部局からのアプローチによるいじめ解消の仕組づくりなどを盛り込んだ。

また、岸田首相は10月16日の不登校対策推進本部等合同会議に出席。こどもの安全・安心対策として、①教育・保育業界の性被害防止の取組促進のため先進事例周知や業界のガイドライン作成支援②同性被害防止の法制度が実効的な仕組となるよう早急に検討③子供一人一人のICT端末を活用し早期発見と支援を行う心の健康観察の推進 ― などを関係大臣に指示した。

◎処遇やデジタル化などで公務員制度検討会 ― 総務省

総務省は10月17日、社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方検討会を発足させた。地方公務員制度の理念やその実現のための手法のあり方を検討する。具体的には、①人材確保に向けた処遇改善策②デジタル化を踏まえた働き方改革 ― などを議論。2025年度末をめどに取りまとめる。

また、総務省は9月29日、ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方研究会の報告書を公表した。少子高齢化・デジタル社会の進展を踏まえ現行の「人材育成基本方針」の全面改正を示した。具体的には、①リスキリング・スキルアップで必要となる人材を計画的・体系的に育成するための育成プログラムの整備②新卒者に限らず多様な経験、スキル、専門性を持った人材を確保するための経験者採用の実施③全ての職員がワーク・ライフ・バランスを保ちながら能力を最大限発揮できる職場環境の整備 ― などを挙げた。併せて、デジタル人材の育成・確保に関する留意点として①求められるデジタル人材像の明確化②育成・確保すべき目標の設定③デジタル人材の基本方針実施体制の構築④人材確保が困難な市町村の支援 ― などを示した。

◎新たな循環型社会形成計画策定で意見具申 ― 環境省

環境省の中央環境審議会は10月17日、新たな循環型社会形成推進基本計画策定のための指針を環境相に意見具申した。循環経済への移行推進に向け脱炭素型資源循環の施策を政策パッケージとして示したもので、①資源確保・生産・流通・使用・廃棄の各段階で資源循環を実施②地域の再生可能資源を継続的に地域で活用③ライフサイクル全体で資源循環・廃棄物管理基盤の強靭化と適正処理・環境再生 ― などを提言した。

また、中央環境審議会の部会は10月3日、第6次環境基本計画(2024~30年)策定に向けた中間とりまとめを公表した。持続可能な循環共生型の社会実現のための「重点戦略」に①「新たな成長」を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築②自然資本を軸とした国土のストックとしての価値の向上③環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の地域づくり④「Well-being」を実感できる安全・安心、健康で心豊かな暮らしの実現⑤「新たな成長」を支える科学技術・イノベーション ― などを掲げた。

◎価格高騰支援金の確保など要請 ― 国・地方協議の場

国と地方の協議の場(今年度第2回)が10月19日、首相官邸で開かれた。協議の場では、①デジタル行財政改革②こども・子育て政策③マイナンバー総点検 ― をテーマに議論が行われた。

冒頭、岸田首相が「物価高から国民生活を守るとともにコストカット型経済から持続的賃上など新たなステージへの転換を確実に進めたい」と述べた。また、鈴木総務相は「来年度の地方一般財源総額をしっかり確保する。こども・子育政策の強化は国と地方が車の両輪となって取り組むべきで関係省庁と連携し地方財源を確保する」と述べた。これを受けて村井全国知事会長は、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の総額確保と最低賃金のさらなる引上げ、来年度の地方一般財源総額の今年度同額水準の確保・充実を要請した。このほか、六団体側から「こども・子育て政策実施では地域間格差が生じないよう地方財源も含めて確実に財源措置する」(全国市長会)、「東京一極集中是正と地方分散型の国づくり実現のためデジタル人材の育成・確保を国が加速化する」(全国町村会)、「主権者教育の推進と議会のデジタル化」(全国都道府県議会議長会)などの意見が出た。

◎地方公務員にも「在宅勤務等手当」 ― 総務省

総務省は10月20日、政府の人事院勧告完全実施の決定を受けて地方公務員の給与改定の取扱いを通知した。各自治体に対し、人事委員会の給与勧告を踏まえ地域の民間給与等を勘案し対処するとともに、不適正な諸手当などの適正化も要請。また、会計年度任用職員の給与改定は常勤職員の給与改定に準じて対処するとともに、2024年度から在宅勤務等手当を新設するとした。このほか、①在宅勤務等手当の新設は地方自治法改正を踏まえ対処②フレックスタイム制の柔軟化は国の取組を考慮し判断する ― よう求めた。

一方、全都道府県と政令市の人事委員会給与勧告が10月19日、出そろった。全団体が月給とボーナスの引上げを勧告した。改定率は、都道府県では大阪の1.21%が最も高く、新潟の0.74%が最も低い。政令市では、名古屋市の1.06%が最も高く、新潟市の0.6%が最も低かった。ボーナスは43都道府県と全政令市が0.10か月とした。人事院が初任給など若年層に重点を置いたのを受けて大半が準じたが、「選択的週休3日」については対応が割れた。新設される在宅勤務等手当は約半数の団体が創設に向けた検討などに言及した。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)