地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』2024年6月コラム

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金、いわゆるコロナ交付金

コロナが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した2023年5月から1年が経過した。先日の新聞報道でも、コロナ交付金がコロナと無関係の事業に使われたという批判が行われている。なぜ、このようなことが生じたのか、原因と対策を考えてみたい。

厚生労働省のデータによれば、2020年5月9日から2023年5月9日までの3年間のコロナによる死亡者数は、74,096人にのぼっている。感染者数は、2020年1月16日から2023年5月8日までの期間で、33,738,398人であった。こうした数字から考えると、コロナはガザ地区での死亡者を超えており、建物の破壊はなかったものの、戦争に匹敵する災害であった。2020年1月に武漢から帰国した男性が最初の感染者と言われているが、2月に大型クルーズ船の乗客の感染やマスクが店頭から消えたり、トイレットペーパーが品薄になったりして、第一次オイルショックを思い出した。オリンピックが延期され、緊急事態宣言が発出され、コロナ感染初期のすさまじい報道に接し、当時はそれなりの緊張感を覚えた。その後、アベノマスク配布などのおかしなことが行われ、膨大な税金が使われるコロナ対策がはじまった。

2019年度~21年度の3年間でコロナ対策(関連事業数1,367)として94.5兆円が予算計上され、22年度へ13.3兆円が繰り越された(会計検査院資料)。このうち、2020年4月に設けられたコロナ交付金は2023年度まで続けられ、総額18.3兆円にのぼった。

いくつか事例を挙げよう。「無駄遣いワースト100事業一覧」というサイトまである。金額の大きいものでは、「全区民に一律12万円の給付金を支給、81億5340万円」、「全町民の2020年5月から2022年1月までの水道料金を全額補助、3億5000万円」、「六本木ヒルズなど、区内観光施設や店舗を利用した半額をポイントで還元、1億5500万円」、「入籍するカップルへのカタログギフト贈呈、花火イベント実施、ウエディング動画・キャンペーン動画を配信、1億8043万円」、「県立学校の湿式トイレの床の乾式化や便器を洋式化、18億6784万円」、「全世帯に電気料金支援給付金を支給、2億6597万円」、「100%分のプレミアムをつけた商品券2万円分を1万円で販売、24億368万円」などが挙げられている(詳しくは上記サイトを参照)。また、新聞では「キャンプ場のWiFi整備」、「レンタル用自転車の購入」、「花火や目抜き通りのイルミネーション、建物のライトアップ」なども紹介されている。

コロナ交付金は、自治体だけの判断ではない。自治体は計画を内閣総理大臣(内閣府)に提出し、そこで交付対象経費について判断され、計画内容により交付担当大臣が交付するという手続きである。すなわち、国も承認しているのである。

では、なぜ国は、コロナ対策とはほど遠い事業にまで、交付したのであろうか。そもそも2020年4月の経済対策において、「新型コロナウイルスの感染拡大を防止する」とともに、「感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活を支援し地方創生を図るため」と書かれている。したがって、国の承認を得ているのであるから、自治体だけが批判されることではない。だが、多くの批判がある。なぜなのだろうか。それは、税金の使い方が市民感覚とずれているからにほかならない。

また、自治体の財政基金が増えたことが指摘されている。本来、自治体の予算で支出するはずの事業に交付金を充当したため、基金が増えたようだ。積極的に国の補助金や交付金を活用するのは自治体として当然だが、どこか仕組みがおかしい。自治体の予算として、何に使うべきか判断できる仕組みになれば、国からのお金が来るからという無駄づかいは少なくなるかもしれない。

結論として、自治体の責任で自治体の予算の使い方の自由度を拡大することが必要であろう。地元のことは地元が一番よくわかっているはずだし、地元の説明能力・説明責任が問われ、市民(住民)の参加もしやすい。交付金・補助金も国民の税金だという意識を徹底してもらう必要もある。

とはいえ、財政が豊かになると、国も自治体も行政は無駄づかいする。これは、筆者の経験則に過ぎないが、そのような事例はたくさんある。使わないと削られるだけ、だから使ってしまおう、という慣習はいつになったらなくなるのだろうか。

むとう ひろみ 法政大学名誉教授)